3.普通じゃない
「次ー、レイ・リリアンスさん!」
「はい!」
呼ばれたので、前に出る。
監督官はさっきの2人のようだ。
「じゃあ、まずは家系能力をお願いします!」
「じゃあ...【幻視】。」
その瞬間、今いる場所全てが焼き野原になり、熱い感覚がする。
ちなみに自分は感じないようにしてある。
「えっ、ちょっ、なっ...!?」
「わぁ...幻凄いなぁ...。」
「トワ先生、なんでそんなに冷静なんですか!?」
1度やられると、意外に冷静になれるみたいだ。
『レイ、終わらすぞ。』
「おけ。...はい、これで終了です。」
「あ、じゃあ次は得意な魔法を...。」
「分かりました。【不快魔法】。」
足元に大きい魔法陣が出てきて、教師生徒もろとも不快にさせる。
なうで周りの人全員唸り出したカオス状況だ。
『...おい、そろそろ止めてやれ。』
「あっ、わかった。」
クグツがそう小声で言ってきたので、魔法を止める。
「...大丈夫、次の面接行っていいよ。」
「はい、分かりました!!」
面接のところに向かう時に、色々な声が聞こえた。
「あいつ、やばくね?」
「流石リリアンス家の...。」
「てか、さっきの不快さがまだ残って...うげぇ...。」
これを聞いて思うことがある。
「あれ、やりすぎた?」
『今更かよ。』
【不快魔法】をあれより長く続けていたら、弱い奴は失神してたかもしれないらしい。
「ありがとう。それで、面接会場は?」
『そこの階段上。てか、道案内に俺を使うなって...ん?』
「どうしたの?」
『俺が空気中の魔力を利用して、【気配察知】とか色々出来るのは知ってるよな?』
「うん、知ってるよ。」
クグツは【気配察知】が使えたりして、思った以上に優秀であった。
『それで面接会場を調べてたんだが...相当荒れてるようだ。』
「それってどういう...っ!?」
面接会場だった教室が崩壊していた。
そこには倒れている3人の教師と、背が低い男の子がいた。
「...兄の事を聞くな。俺は...俺は...。」
「あのさ、大丈夫...?」
「っ、誰だ!?」
「ただの生徒。それでさ、怒ったからってこれはヤバくね?弁償どころじゃすまねぇぞ?」
「...それは。」
圧をかけてるように見えるが、これでも彼を心配している。
『不器用、だよなぁ...。』
「黙れ、クグツ。」
「お前が例の解離性同一性障害の奴か。」
「よくフルで覚えられたな。長いからって大体覚えられてないのに。」
私もクグツも、覚えるのに相当時間がかかった。
「暗記が得意なだけだ。」
「へぇ、凄いね。てか、知ってるならクグツも出ていていいね。」
『お前、名前は?』
「アベリア・オーケストだ。」
「じゃあアベリ?」
『アベリだな。』
握手をしてよろしくと伝える。
この時、大切な事を忘れていた。
『てかさぁ、この壊したのどうするんだよ。』
「あいにくだけど、【修復魔法】は苦手でね。」
『俺も無理。アベリは?』
「出来てたらとっくにやってる。」
「だよねぇ...。」
3人で黙り込んで考える。
「あ、あの...。」
『ん?誰だ?』
そこに私より少し背が高い1人の男の子が来た。
「僕、【修復魔法】、出来るけど...。」
「『「本当に!?/マジで!?/本当か!?」』」
「うん、少し待っててね...。」
彼は教室をどんどん直していく。
「すっごぉ...。」
『魔法陣が出てない...家系能力か。』
「うん。これが僕の家系の能力。なんでも治すことが出来るんだ。人の傷でも、物が壊れたとしても。」
「という事は、ユグドラシアの家系か。」
『あー、龍族だっけ?』
「し、知られてるのって、少し照れるなぁ...。」
彼は照れくさそうな反応をしながら、ささっと教室を直しきっていた。
「か、完璧...!あっ、ウチはレイ・リリアンス。悪魔だよ。で、解離性同一性障害で一緒の身体の中にいる、クグツ。」
『クグツだ。よろしくな。で、こっちがアベリ。』
「アベリア・オーケスト。種族は獣人。その中でもケットシーだ。」
『えっ、お前猫だったの?耳は?尻尾は?』
「なめられないように、隠している。」
『弱いとか言って、なめられやすいもんな。』
種族は龍族や鬼人族などが上、悪魔族などが中間、ケットシーなどは下という感じで階位が決められている。
「じゃあ、改めて...僕はユード・ユグドラシア。その、種族は龍族。よろしくね、レイ、クグツ、アベリ。」
そうして友達が出来た。
その後アベリが教師に怒られるのに巻き込まれた。
けれど、しっかり面接を受け、合格発表を待った。