悪役令嬢は待機する
「つまり、ファスター様は私が服を脱いだら耐えきれなくなった、と?」
「簡潔に申し上げると、そうなりますね」
「まぁ、この肉体美だからなぁ」
悪役令嬢らしいナイスバディな肉体。ポーズをとってリザーフは自分にボディラインを確認する。
「あ、ハッバルアにも確認の連絡を出しておいて」
「かしこまりました。お嬢様の仰せのままに」
ー数日後
ファスターの私室の前に佇む、二つの影。
「ねぇ、5分後にはファスター様がいらっしゃるのよね?」
「現在、ファスター様は入浴中のため、チャンスは今かと」
「ありがとう、ハッバルア」
ハッバルアが去って行ったのを確認して、リザーフはそっと部屋に忍び込んだ。
「ふぅ、いいお湯だった……ん?」
「おかえりなさいませ、ファスター様」
「なぜ、リザーフが私のベッドに寝ているんだ?」
「ファスター様と寝るためですわ」
「それはどっちの、じゃなくて、どうやって忍び込んだ?」
「内緒ですわ?」
「……ハッバルアか。まぁいい、そこから出て家に帰るんだ。婚前の男女が夜に私室で2人きりは、外聞が悪すぎるぞ」
「誰にもバレないように屋敷を抜け出して参りました。ここに入ったこともハッバルアしか知りません。つまり、問題ありませんわ」
「皇太子妃になる者が何をしているだ!? というか、地位を盤石とするために、私との仲が良好だと言う噂を流すことを狙ってるんではないのか!?」
そう言いながら、ファスターがベッドに近づき、リザーフの隠れる布団を捲り上げた。
「……な!? なんで服を着てないんだ!?」
「……誘惑するため?」
リザーフの美しい肉体に、ファスターの視線は釘付けだ。だが、視線と反対の言葉を紡ぐ。
「まだ、婚姻の済んでいない男女だ、服を着ろ。誰にも見つかっていないのなら、ここで寝ていいから」
「え? いいんですか?」
「私は隣の仮眠スペースを使う」
「……ファスター様のけち!」
「けち……?」
「ファスター様のいじわる!」
「どちらかというと紳士だろ!」
「襲ってやるー!」
布団と共にファスターに飛びかかったリザーフは、ファスターのバスローブを脱がせようと必死に戦った。
ファスターもファスターで必死にバスローブに身を隠す。
「ファスター、夜遅くにすまないが、明日の会議の……本当に邪魔したな、すまない。その、婚姻が済むまでいろいろ気をつけなさい」
「父上!」
「……国王陛下」
2人が半裸で絡み合っているのを見た国王陛下は。そっとUターンして部屋から出ていった。
国王陛下の参入を流石に予想できなかったリザーフもそのまま固まる。幸い、リザーフの裸体は布団に隠れていて国王陛下からは見えない。服を着ていないことは、バレただろうが。
「父上、待ってください。違うんです、それよりも、なんのお話ですか?」
国王を追って、バスローブを整えながら、慌てて部屋を出ていくファスターの後ろ姿を見つめながら、リザーフは考えた。
「国王陛下は黙認してくれそうね……本当、いい方法はないかしら」




