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悪役令嬢は押し倒されたい

「先日は、我が家にお越しいただき、ありがとうございました」


 ファスターの私室にお礼に訪れたリザーフは、完璧令嬢のお面を被って現れていた。


「あぁ、体調はもういいのか?……リザーフなら、もう問題ないだろうな」


 そんなリザーフの姿を見たファスターは、いつも通りの対応を心がけた。先日、マグマリア伯爵家で見たリザーフの姿は、彼女の弱りきった姿であり、自分が見ていいものでなかったのだと納得し、今まで通り、完璧令嬢リザーフへと接してきた態度を貫いたのだった。


「えぇ……ありがとうございます。あ、」


 少し悲しそうな表情を浮かべたリザーフは、お礼を言った直後にふらついてしまった。今までのリザーフなら絶対に見せない失態だが、ファスターの私室という非公式な場で起こした失態であり、1週間も意識を失っていた令嬢のそんな姿は、誰もが胸の内に留めておこうと決意するものだった。


「大丈夫か?」


「申し訳ございません。まだ少し体力が戻っておりませんの。不躾なお願いとなり、大変申し訳ございませんが、少しこちらで休ませていただいてもよろしいでしょうか?……できることでしたら、犯人についてもお話ししたいことがございます」


 まるで、犯人について話すことが目的といった表情で、人払いを済ませ、ファスターの私室に居座ることに成功したリザーフは、意気揚々とファスターをハントしようと作戦を開始し始めた。




「ファスター様。……よろしければ、私がお茶を用意いたしますわ」


「いや、いい。私がやろう」


 なぜか、ベッドの近くに用意されている茶器を取りに行ったリザーフを追いかけ、ファスターがリザーフに近づいた。



「あ、」


 またリザーフが倒れそうになり、それを支えようとしたファスターは、リザーフに捕まってしまった。二人が倒れ込んだ先は、ベッドの上だった。





「り、り、リザーフ。すまない、今、退くぞ」


「ねぇ、ファスター様」


 慌ててリザーフの上から退こうとするファスターの腕を掴み、リザーフは問いかける。



「私じゃ、嫌?」


「な、ななな、なにがだ!?」


「私たち、婚約者ですもの。少しくらい親密になってもいいと思いますの」


「り、リザーフ!? お前、やはり少し変ではないか?」


「死にかけて、素直になろうと思ったのですわ。私、ファスター様のその逞しい胸元。見てみたいですわ」


「り、リザーフ!?」


 人差し指でファスターの胸元を触るリザーフに、ファスターは顔を真っ赤にさせながら動揺する。


「そ、その、私たちはまだ、その、婚約者であってだな」


「まぁ。私はそんなに魅力がございませんか?」


「そういうことじゃなくて、どちらかと言うと今すぐ、じゃなくて、」


「ならば、よろしいではございませんか?」


 ファスターの頬を両手で挟み、リザーフがそっと引き寄せようとした瞬間、



「ファスター様。失礼致します! リザーフ様を襲った犯人についてお話しさせると伺い、追加の情報を……」


 ファスターの腹心の部下であるハッバルアが駆け込んできた。



「……大変申し訳ございません。失礼致しました」


「行くな! 出ていくな! 戻ってこい! ハッバルア!」


 ファスターがハッバルアを捕まえに走り、犯人についての討論会になった。


「……ハッバルアを味方につけないといけないわね」





 リザーフを襲った犯人は、実行犯は全員確保されたものの、「ヒロインのために」と、わけのわからないセリフを繰り返しているとのことだ。黒幕は不明だが、侵入経路や方法等は明らかになったため、対策はすでに取られており、王宮や伯爵邸は比較的安全に過ごすことができることとなったようだ。

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