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目を覚ました悪役令嬢

「お姉様! 目を覚ましたんだって! よかった!」


「る、ルシュ……?」


「お姉様! ルシュだよ、お姉様の弟のルシュだよ!」


 仲のいい兄弟の再会を、皆が感動しながら見守っている中、リザーフは頭を押さえながら何かをぶつぶつと言い始めた。



「あれ? 私、ルシュの姉? 今回、当たりの合コンでイケメンたちを落とそうと……? ん? 『白亜の王宮〜王太子との秘め事編』の悪役令嬢リザーフ? え、待って。私、前世でその合コン帰りにホームに転落して、白宮の王太子の最後のスチル集めてないのに死なないって思って……。いや、ここまで生きてきた記憶もある……これって、前世の……記憶……?」


「お、お姉様? 大丈夫ですか!?」


 リザーフの思考を整理すると、前世では肉食女子として合コンでイケメンを落としていたリザーフは、事故死した。その後、『白亜の王宮〜王太子との秘め事編』の悪役令嬢リザーフとして、この世界に生を受けたのだった。その記憶を、今回の影響で思い出したのだった。


 しかし、リザーフはひとまずその思考を放り投げ、かわいいイケメンを愛でることとしたのだった。




「とりあえず、可愛い私の弟ルシュは、二次元でも三次元でもかわいすぎる」


「お姉様……?」


「あー! かわいい!」


「うむ、1週間も目覚めなかったから心配致しましたが、リザーフ様に異常は見受けられませんな! 後遺症の類もなさそうじゃ! 次期王妃として問題なさそうで、一安心ですぞ!……もう入っていいですぞ、殿下」


「あぁ、失礼す……」


 部屋に入ってきたファスターは、リザーフがルシュを抱きしめながら、頭を撫で回す姿を見て、固まった。


 ファスターの目の前でも気にせず、ルシュに抱きつくリザーフに、使用人たちも一瞬ざわりとしたが、姉弟の仲がいいことは屋敷の中では有名な話だ。



「あー、ルシュ。かわいいかわいい」


「お姉様、髪が崩れます! 僕はもう17歳ですよ! かわいいのお年頃じゃありません!」


「ルシュ、かわいいー!」


「あぁ……お姉様が来月19歳になったときには、皇太子妃になられるんですね……」









「……これは、通常通りのリザーフなのか?」


「……リザーフ様とルシュ様は、幼い時から非常に仲がよろしいご姉弟でいらっしゃいます」


 誰よりも冷静に呟いたファスターの言葉は、正しい疑問だと、この時は誰も気づかなかったのであった。

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