悪役令嬢は襲われる
ノリと勢いで書いた作品のため、設定等、ガバガバです。
R15はセーフだと思いますが、苦手な方はご注意ください。
「……では、失礼致しますわ」
ふわりと礼をして、表情を崩すことなく、皇太子の私室から去っていくリザーフ・マグマリア伯爵令嬢。皇太子の婚約者である彼女は、完璧令嬢と噂されている。
白銀のロングの髪と変わらないその表情から、氷結令嬢とも囁かれている。
美しいその姿に反して、笑みを浮かべることのない、氷のようなリザーフと皇太子ファスター・ラ・メザシュとの間には、深い溝が存在している。
コツ、コツと、リザーフの規則正しい足音が響き、馬車の元までリザーフがたどり着いた時、
「お命頂戴する!」
突然現れた男たちによって、リザーフは太ももを刺されてしまった。
何をさせても完璧なリザーフは、男たちの突然の襲撃から、急所を避けるように動き、無事軽症で……済むはずだった。
「何をしている! 取り押さえろ!」
「リザーフ様! ご無事ですか?」
「えぇ……。うっ」
取り押さえられた男たちの刃物からは猛毒が検出され、リザーフはそのまま意識を失ったのだった。
「……リザーフは無事なのか?」
「一命は取り留めましたが、あとは本人の体力次第となります」
「……リザーフなら、何事もなく回復するだろう」
そう言い残して、マグマリア伯爵家からファスターが帰ろうとしたとき、リザーフは目を覚ました。
「っ……。あれ?」
「お嬢様! お嬢様! 目を覚まされたのですね! ここがどこかわかりますか? あ、お医者様を呼んで参ります! ファスター皇太子殿下……申し訳ないのですが、もうしばらく……」
「あぁ。もちろん、ここにいるから、早く医者を呼んでこい」
「失礼致します!」
リザーフ付きのメイドが駆け出していく中、ファスターは、リザーフに声をかける。
「リザーフのことだから、猛毒にも打ち勝つと思っていたよ」
「……」
「リザーフ……? どうした?」
「りざーふ、ってなに?」
リザーフの思いがけない言葉に、ファスターの目が丸くなった。その瞬間、メイドが医者を連れて戻ってきた。
「こちらです! お嬢様が目を覚まされました!」
「おぉ! では、診察させていただきますぞ……殿下は、部屋の外で待っていていただけますかな?」
「あ、あぁ……。外で待っているよ」
リザーフが目を覚ましたことを確認したら、すぐさま帰りそうだと思っていたファスターが、診察が終わるまで待つと言ったことに、使用人たちは一瞬違和感を覚えながらも、大切なリザーフが目覚めたことに大騒ぎだ。
「旦那様がすぐさま王宮から戻られるそうです」
「奥様は今こちらに向かっていらっしゃいます」
「坊っちゃまも、もうすぐお部屋にいらっしゃいますぞ」