計画地にて(その5)
ナーガはコルビーの元へと戻ってこう言った。
「あいつが七大魔将軍になったのはネクロマンサー(屍霊操士)としての力であって、自分自身はからっきし弱いくせに何のつもりなんでしょうね?」
「絶対的な力を見せつけられて、どうしていいか分からないんだろう。大丈夫師匠なら説得してくれるだろう。コウさんの助けが入らなくても私がアンデッドたちを焼き尽くしたら、あとは師匠に任せるつもりだった」
ビフロンスはクニオの元に辿り着くと、振り上げた鎌で襲い掛かった。しかし鎌は、クニオがアマリアの盾を使って張った結界を破ることは無かった。逆にクニオはビフロンスの足元を狙って定光を振る。
「絶対防御!」
ビフロンスは定光の軌道上に防御用魔法陣を展開した。
しかし定光は音もたてずに、魔法陣をすり抜ける、そうしてそのままビフロンスの両足を切り落とした。足を切られて地上に崩れ落ちたビフロンスが、治癒魔法を使う前にクニオは定光の血を払ってから鞘に戻すと、ビフロンスの両肩に腕を置いた。
ビフロンスに送り込んだのは今回の温泉計画のプランニングだった。通常プランニングは他者の力や素材を組み合わせて何かを作り出すスキルであるが、今回はイメージだけを伝えた。全体構成のイメージに加えて、前にアダマンタイトの洞窟でエンシェントアニマから聞いた世界の真実のイメージも付け加えた。一見関係ないようにも思えるが、今回温泉を魔族と人間の交流の場にするという考えは、アニマから聞いた世界の姿の影響を受けているので、一連の建築行為とは無関係ではない。
ビフロンスは一気に流れ込むイメージに驚きを隠せなかった。それは両足を魔法で治癒することを忘れてしまう程だった。一瞬のうちに大量のイメージを受け取ったビフロンスはしばらくは言葉も発せずに放心状態となった。そこにティアマトが現れてビフロンスの両足に治癒魔法を施す。
ビフロンスはやっと平静を取り戻すと、クニオに向かってこう言った。
「これがあなたのスキルですか……私は仲間や人間をアンデッド化することでその魂を縛り、転生を妨げていたという事なんですね……」
彼は悲しそうに下を向いている。
「しかし先ほどあなたにも敵わなかったくらい、私は武力の方はからっきしなんですよ。ネクロマンサーとしての役目を果たせなくなったら、まわりは全て自分より強者になってしまう…」
「クニオの戦力を下に見ているみたいですが、彼が装備しているのはアマリアの盾なんですよ」
ティアマトがそう言った。なぜか少し怒ったような口調である。
「魔族は自分より強いものに従うんでしたかな」
近くまで来ていたグレゴリーは何の気遣いもなくそう言ってガハハと笑う。
「その縛りがどういうものなのかは分かりませんが、単に武力では無くてスキルを使った能力でも強いと評価できるのであれば、できる事は色々あるんじゃないでしょうか?例えばあなたは意識したことが無いと思いますが、土というのは言ってしまえば植物の死骸の集まりです。そこにまで魂が在るとは思えませんので、これを自由に操ることができるなら、素材として物凄く利用価値があるんじゃないですかね?他にも木材は全て木の死体です。もっと言えば、この世界に存在する大概の元素は何かしらの死体が循環して存在しています。ネクロマンシー(屍霊操術)でどこまで制御できるのかは分かりませんが、一緒に色々とプランニングしてみませんか?」
クニオは肩を落としているビフロンスに向かってそう言った。
「相変わらずわけわかんないな」
先ほどまで大の字で寝ていたコウは、肘を枕にして横向きに寝てクニオたちの方を見ていた。
「でも面白そうだ。まずはみんなで温泉につかってアイデアを練ろうぜ」
そう言ってコウはケラケラと笑った。




