サダヒデの工房にて(その8)
「魔王軍の幹部といいましてもな…コウ殿はお知り合いなのか?先ほど次期魔王とツテがあるような事を言っておられたが…」
サダヒデが言った。
「ああ、そこは大丈夫ような気が私もします」
それにはクニオが答えた。
「しかしクザの人たちは何て言いますかね。温泉とクザがつながるという事は、魔族も転移してクザにこれることになりますよね」
コルビーがやや心配顔で言う。
「うむ。アダマンタイトの洞窟は一応線引きとしてはハポンだから、そことクザが繋がることは問題ないだろう。しかし領地内に魔王城と繋がるゲートができたら領主も黙ってはおれんだろう」
サダヒデは髭をなでながらそう言った。
「もちろん領主の許可なんかとらないよ。許すわけないし……。魔王城とのゲートは秘密裏に繋げて既成事実を先に作るしかないだろうな。魔王城近くの町では人間の魔王城ツアーが人気みたいだし、街道沿いのミナレットの温泉も人間と魔族の両者が入り乱れているみたいだから、意外と作ってしまえばすぐ慣れるんじゃないか?」
コウが言う。
「そうですね……しかし領主には黙っているとしても、地元の人はそうも行かないでしょう。……だからクザの温泉場のワークショップには魔族にも参加してもらったらいいんじゃないですかね?」
クニオがそう言うと
「丁度転移ゲートの魔法陣を構築するなら、ナーガに手伝ってもらわないといけないと思っていたところです」と、コルビーが言った。
「ナーガって七大魔将軍のナーガですか!?」
そこは今まで黙っていたユキヒラが口を開いた。サダヒデもいぶかし気な目でコルビーを見ている。
「もういいじゃん隠さなくて…そうだよここにいるコル君が魔王の転生体で次期魔王だよ」
遂にコウは言ってしまった。再び場が凍り付く。しかし一瞬後にグレゴリーの大きな笑い声が響き渡る。
「はっはっはっ、みなさん魔王に会われるのは初めてだから、驚くのも無理はない。でも一度でも酒を酌み交わせば、彼がどのような者なのかはおわかり頂けているでしょう…ああ、コル殿は終始しらふでしたかな」
そういってグレゴリーはまたガハハと笑った。
それを聞いて、サダヒデやユキヒラの表情が柔らかくなっていくのをクニオは感じ取った。
「コウ殿もまた変わったパーティーに入られているもんですな。これは確かに退屈しそうにない」
そう言って、サダヒデは髭に覆われた口元を緩め、優しい笑顔を浮かべた。




