キートの城にて(その4)
「模型だよ。完成形のイメージを共有するにはこれが最高に分かりやすい。模型というのは実物をある一定の比率で縮めて作る、立体的な完成予想図だ」
クニオは得意気だ。
「これらを材料にして、物見やぐらの模型とやらを作るんですね。そんなことは今までしたことが無いので非常に興味深いです」
コルビーは呑み込みが早くて助かる。
「そう、そして模型作りは楽しいんだよ。今回大きさ的には1/100で行こう。1mは1cmになる」
そこからクニオは物見やぐらの概略の図面とパースをさっとスケッチして、それを元にコルビーと模型を作った。全く関係のない素材から模型を作り上げていくのは、前の世界もここも同じだ。
作り上げていく行為は、本物の建物を作るのと同じぐらいに充実感がある。時には作りながら、元の計画を修正もする。そうして夜明け前には模型が完成して、二人は仮眠をとってから他のメンバーと合流したというわけだ。
「模型でも分かる通り、この構造であれば地震が来たとしてもびくともしないでしょう。但しこの結界を張るにはアダマンタイトが必要になります」
クニオはそう言って領主の顔を見た。
「アダマンタイトか…。確かにこのあたりでも僅かに産出はされてはいるが、今は城にも持ち合わせが無いな…」
領主はため息交じりに話す。
「鉱山を教えて頂ければ、私たちで採掘してきます」
一応クニオたちはダンジョンには潜り慣れているし、ミスリルなどの希少鉱物の採掘もクエストでこなしたことがある。まぁ風水師というジョブ柄か、コウはダンジョンはあまり好きではないようだ。今も渋い顔をしている。領主は少しだけ考えてからこう言った。
「…しかしその鉱山が…採掘自体は坑道…というか洞窟の入り口付近にも破片がゴロゴロ落ちているので問題ないが、入り口の前にドラゴンが鎮座しているのだ。年に一度新酒のできる季節に、その年の豊穣を願ってドラゴンに酒を奉納するのだが、その日一日だけは採掘をしてもいいという取り決めになっておる」
「取り決めというのは人間がドラゴンと交わされたのですかな?」
グレゴリーが聞く。
「そういう風に聞き伝わっておる。いつの時代の話かは分からないほどに昔の事の様で、そのあたりは拙にもよく分からん。しかし現に今もその取り決めに従って、年に一度だけアダマンタイトを採掘しているのだ」
「その日以外に洞窟には入れないのか?」
コウが聞く。
「取り決めに背いて進入しようとするものは、全てドラゴンの炎で焼き尽くされるという話だ。まぁそんな事をしたものは今までに聞いたことがないので、本当かどうかは分からんが……」
領主はそう答えた。




