ハポンの酒場にて(その2)
グレゴリーの言葉を聞いて、先ほど叫んでいた男が4人のいるテーブルに近寄ってきた。そうしてコルビーをジロジロと眺める。
「なんだよいっちょ前に冒険者の認識票ぶら下げてるじゃないか。こんな子供を危ないところに連れて行くなよな。ていうか子供に酒飲ませていいのか?大体引率者のうちもう一人はもやしみたいじゃねーか。あんたも大変だな」
そう言って男はグレゴリーの肩をポンポンと叩く。グレゴリーは言い返すでもなく、今度はニヤニヤしている。
「あ、ハポンにはもやしがあるんだ」
もやしと言われたクニオは呑気な事を言っているが、男のセリフを聞いて今度はコルビーが立ち上がった。立ち上がったと言っても身長は140cmくらいしかないので、座っている時と視線の高さはさほど変わらない。彼は男に話しかけた。
「ねぇおじさん、僕と腕相撲で勝負しようよ。こう見えて結構僕は力持ちだしお金持ちなんだよ。負けた方がここの代金を持つって事でどうかな?」
コルビーの子供言葉にコウは笑いを堪えている。
隣の空きテーブルに肘をついて二人は腕相撲の構えをとった。コウは背が低い分下に木箱を置いている。踏ん張りがききそうにないし、知らない人が見ればどう見ても勝負になるとは思わないだろう。
「いいか坊主、おじさん手加減しないからな。いくらお金があっても男は腕っぷしが命だ。世の中の厳しさを教えてやる。負けても泣くんじゃないぞ」
いつの間にかテーブルのまわりには人だかりができていた。
クニオは二人の中央に立ち、組んだ拳に手をあててスタートの合図をする。
「レディー……ゴー!!」
言い終わるかいなかのタイミングで店内に轟音が響き渡る。木製のテーブルは真っ二つに割れて男の腕は床に叩きつけられていた。腕は変な方向に曲がっていて、拳はぐちゃぐちゃに潰れている。
「人を見かけで判断しない方がいいよ。ほら腕を出しな、回復魔法をかけてあげるから」
そう言って男に無詠唱で回復魔法をかけるコルビーを見て、コウとグレゴリーは大笑いをしている。この見た目は少年であるコルビーは、実は三年前に勇者に倒された魔王の転生体だ。成体になって魔王になるまでは、まだ何年かかかる。今は建築士というよく分からないジョブのクニオに弟子入りをしている。




