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異世界建築士  作者: 十三岡繁
僻地にて
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僻地にて(その5)

 翌日の午前中、三人は一緒に宿を出て教えてもらった酒蔵へと歩いていた。道すがら見える建物は殆どが木造で、屋根は急勾配で軒も深く張り出していた。


「クニオさん。このあたりの建物は屋根が特徴的な形をしているけども、あなたのいた異世界でもこうだったんですか?」

 コルは建築にも興味があるらしく、なかなかいいところを突いてくる。

「そうですね。米…稲を水田耕作するにはもちろん多量の水が必要になります。なのでこれを主食とする地方は降雨量が多い地域になってきます。降雨量が多いので、そこにある建物の屋根の水勾配は急になるし、壁に雨がかからないように軒を出して大きくするのが合理的なんです」


 酒蔵は建物が集まっているところから、水田を抜けたその先にあるらしい。昨日二人と会った水田のあたりで、向こうから見覚えのある一団が歩いてくるのが見えた。グレゴリーとコウだ。遠くからコウが手を振りながら、興奮気味に大きめの声で話しかけてくる。

「クニオ、これが米ってやつだな。『三本槍』もこっちの方に行くって言うから、人数多いし早朝便で貸し切りの馬車を出してもらったよ。」

 確かに二人の後ろには、先日酒場で会ったパーティー『三本槍』のメンバー4人がついてきている。両者の距離が近づいたところで、コウはクニオと一緒にいる二人に目を止めた。


「あれ?魔王のコルビー君だよね?あ、まだ魔王じゃないか…なんでこんなところにいるのかな?しかし子供の君は相変わらずかわいいなぁ…」コウの発言が終わるか終わらないかのうちに、その場の空気が変わった。


 パーティー『三本槍』はコウとグレゴリーの前に移動すると、臨戦態勢に入って陣形を組んだ。前衛は女戦士のゼノビア。大きな盾を構えて先頭に立っている。少し下がって左右に勇者ローランと魔導士サラ、その後方に僧侶ペテロというダイヤ型の陣形だ。


「…私なんかまずい事言っちゃったかな?」

 驚くコウにローランが話しかける。

「コウさんたちは下がっていてください。私たち『三本槍』は魔王を探してこの地へやってきたんです」

 ローランの言葉を聞いて、コウは少し寂しそうな表情で言葉を返した。

「…なるほど、ローランは勇者だもんね。魔王が倒されるというのは死ぬことではなく、転生することだって知っちゃたんだね。でも彼は今は正確には魔王ではないし、まだ人に危害を加えていないかもしれないよ。生まれてから何もしてない存在を攻撃するの?」

 クニオとグレゴリーには魔王が転生することは初耳だった。


「それでもここで彼を倒せば、次に魔王が出現するまでの時間を稼げます。その分流れる血は少なくて済むはずです」

 この10歳の少年の姿を見ても、ローランの決意は揺るがなかったようだ。

「うーん…止めても無駄みたいだけど、どの道ちょっと無理なんじゃないかな…」

 そう言ってコウは『三本槍』から後方へ少し距離を取った。グレゴリーも同じだ。クニオも魔王コルビーに促されて、彼らが対峙している場所から少し距離を取る。


 緊張感の中、コルビーの横にいたティアーは、『三本槍』の正面に進み出て両者の間に立ちはだかった。

「我が名はティアマト。コルビー様には指一本触れさせませんよ」

ティアーと紹介された女性の本名は、ティアマトというらしい。クニオはどこかで聞いた名前だなと思った。

「ティアマトと言えば七大魔将軍の一人ですな」グレゴリーがそうつぶやくと「そうだね」と、コウも相槌をうった。


 ティアマトと『三本槍』はしばらくの間動かずにただにらみ合っている。お互いに相手の出方を伺っているようだ。しかし静寂はそう長くは続かなかった。先に動いたのはティアマトの方だった。 


絶対貫通ペネトレーション」そう言ってティアマトは左手を上げ、『三本槍』へ向かって攻撃魔法を放った。それは前衛のゼノビアが構える大きな盾を貫通して、後方にいたペドロに直撃した。


絶対貫通ペネトレーションはかなり高度な魔法だよ。コルビー君は優秀な部下をもってるね。最初に回復役を狙うあたりも戦い慣れしてる」

 コウは呑気に感想を述べている。ペドロは致命傷ではないにしろ、かなりのダメージを受けている様に見える。今度は逆にサラの攻撃魔法がティアマトへと向かった。


絶対防御アイソレーション

 そう唱えたティアマトの前には円形の魔法陣が浮かび上がった。サラの攻撃魔法は、魔法陣に当たると光とともに消失してしまった。しかしその間にローランとゼノビアが剣を振りかざして左右からティアマトへと切りかかっている。


「いい連携攻撃だね。だから『三本槍』なのか」

 コウが呟く。

 位置的にはゼノビアの方がティアマトには近かったが、素早さの勝るローランと攻撃は同時に行われることになる。しかしその刃はティアマトへ届くことは無かった。円形の魔法陣は更に左右にひとつずつ、先ほどの攻撃魔法を防御した魔法陣と合わせて3つが同時展開されていたのだ。


「凄いね。絶対防御アイソレーションを同時に三枚展開するとか流石は七大魔将軍だ。あれをやられると、物理攻撃も魔法攻撃もまず通らない。力で押しても勝ち目は無いだろうね」


絶対貫通ペネトレーション!」

 再びティアマトが攻撃魔法を放つ、それはゼノビアの大きな盾も重そうな鎧も構わずに、その体を貫通した。ゼノビアはその場に倒れる。圧倒的だった。あっという間に『三本槍』でまともに動けるのはローランとサラだけになってしまった。


「どっちももうそれくらいにしておきなよ」

 コウが叫ぶ。

「ティアマト、お前ももういいだろう」

 コルビーも同時に声をあげた。

「いえ、コルビー様、正体を掴まれてしまっては、彼らはここで滅しておかないといけません。残念ながら目撃者も全て」

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