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19.レズバス家の悩み~三者会談再び~

またまたティーハウスにレズバス家の男三人が集まったのは、ソレイヤの受勲式があってすぐのことだった。三人ともになぜか箱を持っている。


「ああ、あれは例の…か」

「だろうなぁ、そんなに憂鬱そうな顔をするならばずっと箱に入れっぱなしにすればいいものを」

「何を言う、賞味期限ってものがあるだろう」


年配の暇を持て余してティーハウスで時間を潰す者たちには格好の餌食となった三人だった。下手をすると三人が入って行った個室のドアにへばりついて聞き耳を立てそうな勢いで興味津々な目で見られている。居心地の悪いことこの上ないが、この話は家でするものではない。万が一にもセリーヌの耳に入れば、誤解が生じるし、彼女も気をもむだろう。だからこうしてよそを借りているのだが、ここにも耳がたくさんあってやりずらい。


とはいえ、格式高いティーハウスなので、人払いを頼めばきちんとしてくれる…はずである。


「はぁ、俺はまだ分類してダメな奴はおいてきてるんですけどー」

ランスの持ってきたものは主に騎士からのものだ。あんなに可愛い妹ならどうして紹介してくれないんだとあの日以来クレームが後をたたない。


「私だってそうですよ、これで半分以下だ」

ロックには自分は将来有望だと売り込む魔術師の卵からの押し売りが多い。


「私のはそういうわけにはいかないような家柄ばかりだから困る」

一番困るのは、親世代からの売り込みをされるグルードだろう。それなりに家としてのつながりがあるだけに厄介だ。


三人は「せいの」で箱を開けてその中身を見せ合うと同時にため息をついた。


邸から出さずにいた時は、“レズバスの欠陥品”などととんでもない呼び名で娘、妹を馬鹿にしていた奴らが、その姿を見た途端、手のひらを返したように我が妻に、娘にと釣書を送り付けてきた。邸に直接送られてくるもの、三人に直接手渡しで頼みに来る者、全部合わせれば100はくだらない。何せ一桁の年端も行かない子供から、後妻の欲しい年寄りまで、節操ないことこの上ない。この国にこんなにも未婚の男がいたのかと思うほどにだった。


「あ、こいつはだめだな」

グルードがたまたま手に取った一つを奪い、ロックにも見えるようにテーブルに投げてランスが言った。


「ああ、鍛錬塔の落ちこぼれだろう。レズバスの塔では珍しく水を操る割にはそれ以外がからきしだめだな。魔術の根底にあるものを何も掴もうとしないで、目の前の功績ばかり気にしている。親はそこそこなのに、どうしてこうなったのかさっぱりだ、お前の指導のせいなのか?ロック」

「一人の失敗だけで私の評価が落ちるのは納得がいきませんね。で何があったんです?ランス」

「受勲式の日にシェリーに返り討ちにされていたよ」

「おお、セリーヌも成長したな」

男を見る目も、かわすすべも持っている我が娘を称賛するグルード。


「おかしいですね。あなたはその時、どこで何をしていたのでしょうか?」

ロックの言うとおりである。


「俺も未婚の男なの!」

「へえ、責任もって目を離さずいると言っておいて、女漁りですか?」

「兄貴は語弊のある表現をするな!ちょっと断れない雰囲気にされて…」

「ほう、ランスは女性の誘いを断れないほど弱いのか、セリーヌを見習うべきだな」

グルードの言うこともしかり。


「親父知らないの?女は怖いよ、笑顔と化粧の下にすごいもの隠し持ってんの。魔物みたいに魔術効かないんだからどうにもできないんだよ」

既婚者二人を相手に女性云々は無駄である。


「26にもなって随分と可愛らしいことを言うなぁ。それをいなしてこその男だろう」

「無理、ああどうしてシェリーは俺の妹なんだろう」


テーブルに伏せながら危険な発言をし始めた弟にロックが慌てた。

「ランス、禁断の恋にでも目覚めましたか?」

「シェリーは妹!それ以上でも以下でもないから困ってんだよ!」

ランスが間違った方向へと進むことはないらしい。グルードもほっとしている。


「まあ、セリーヌの前にお前に早く片付いてもらわないとなぁ。この箱はちなみにお前宛の釣書だぞ」

グルードが別の箱を開けるとそこにもたくさんの釣書が入っていた。


「え?今日はセリーヌ会議じゃないのかよ」

「なんだ?その会議?」

「私のも半分はあなた宛なんですよ」

別に紐でくくられた束をどこからともなく渡すロックに、ランスは裏切られた気分だ。


「いや、俺そんなつもりで来てないし。心の準備が…」

「釣書を見るのにどんな心の準備が必要なのだ?」

グルードの言うのももっともだ。見るだけならどこでもできるだろう。


「もしや、心に気になるご令嬢が…」

いるなら手間はない、とグルードもロックも期待したが、

「いたら苦労しない」

「だよな」「ですよね」

二人が苦笑いで答える。


「結局お前はどんなご令嬢がよいのだ。今後のためにも聞かせてくれ」

ため息交じりにグルードが尋ねると、

「シェリーみたいな女性」


この26の男が片付く日が来るのだろうか?

父親と兄のため息が重なった。

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