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すっぽん家族

「パパこれ誰?」

「うん? どうしたんだい」


息子の一樹かずきが懐かしい物を持ってきた。

卒業アルバム、私が高校生の時のだ。


「これは……パパだな」

「えー! 全然似てないよ~」


一樹が指さした人物、それは紛れもない私自身だ。

しかし、一樹が見て似てないと言うなら、幼いからまだ分からないだけと言い訳ができるが。

私が見てもその姿は今の私とかけ離れているため、息子の言葉に残念ながら賛同せざるを得ない。


「これは、ママだよね? 本の中になんでママが居るの?」


本の中にママか、子供ならではの勘違いだな。


「これは、昔のママだよ。一樹が持っているそれはねアルバムって言って、思い出の写真を挟む物なんだよ」

「写真ってなぁに?」

「そのパパとママが写ってるものだよ」


私はアルバムから写真を取り出すと一樹に見せる。


「うわぁ! ぺっちゃんこになっちゃった!」

「ははは、写真はねぺっちゃんこなんだよ?」

「そうなの?」

「そうなの」

「二人とも、何してるの?」


すると、外で洗濯物を干していた妻の理穂が部屋に戻ってきた。


「卒業アルバムを見てたんだよ」

「懐かしい、昔を思い出すね」

「そうだな、初めて理穂と会話した時のことまだ覚えてるよ」

「そうなの? 私は覚えてないや」


私と理穂が今こうして結婚して、子を授かるなんてあの頃は思いもしなかった。



ーーー



『だるい……』


ーあの日は、体調が悪くて体育の見学をしている時だったー


『高峰君も見学なんだね』

『うん? 誰?』

『同じクラスなのに、覚えてないの?』

『いや、普通話さなければ覚えられないって』

『じゃ、今話したからちゃんと覚えてね! 私は鈴谷理穂(すずやりほ)! すーちゃんとか、すーやんとか適当なあだ名で呼んでね!』


ーいきなり話しかけてきた時は何事かと思ったけ、あの時まで、全然理穂のことは知らなかったっけ…ー


『じゃ、すっぽんで』

『なんで、すっぽんなの!? かわいいから良いけど』

『鈴谷の"す"に、理穂の"ほ"を掛けて、すっぽん。てか、かわいいか?』

『まず、すっぽんって響きがかわいいよね! なんか甲羅が柔らかいせいか貧弱っぽいし、何より情けない感じが凄いキュート!』

『うーん、全然分からない』

『なんで、分からないかな。かわいいのに』

『かわいいとかってより、その考え方が理解できない。ちなみにすっぽんは好きだよ』

『本当!?』

『美味しいし』

『食べちゃうの!!?』

『いや、冗談』

『良かった~』


ーそれで一番最初に話した内容がすっぽんだったけ、理穂の言ってる事が意味わからな過ぎて、当時の俺は頭を悩ませたものだー


『で、なんで俺に話かけてきたの?』

『話すのに理由が必要?』

『何もなければ話してこないでしょ普通』

『そうかな? ただ話してみたいと思っただけだよ?』

『何故に?』

『いつも、一人で寂しそうに本を読んでるなって思って』

『ああ、別に俺はあれでいいんだよ。本は誰にも邪魔されずに読んだ方がいい』

『うーん、確かにそうかも。私は本って苦手だから分かるよ! 文字を見るだけで頭が痛くなっちゃうから』

『いや、それで何が分かるんだ!』

『分かるよ! あんなの集中しないと読めないってくらいは』

『……すっぽんの言う通りだ』


ー今思えば、これは理穂の優しさだった。気になったら誰にでも話す変わり者で、孤立してる人には暇があれば話していたー


『なんか嫌味っぽく言ってない?』

『言ってません』

『えー! 嘘っぽい! 特に特に敬語になっている辺り特に!』

『どんだけ強調するんだよ!』

『大事な事なので二回以上言いました!』

『ごちそうさま、お腹一杯です』

『御愁傷様です!』

『なんでやねん!』

『ごめんなさい、間違えました。お粗末様です!』

『どうやったら間違えるんだよ!』

『これが私なのだよ!』

『つまり、馬鹿って事か』

『ひどーい! 馬鹿ってあんまりだ! お姉さんはお怒りだ!』

『ははは、ごめんごめん! てかお姉さんって同級生だろ! 誕生日いつだよ?』

『四月二日だよ!』

『お姉さんだ……』

『あはは、私がお姉さんである確率は百パーなのですよ』

『どうりで自信がある訳だ』


ー理穂の会話は、大分カオスな会話が多かったが何故か私はそれについていけていた、凄く気が楽だったのだろうか、それともまた違った理由か今でもこの事に関してはよく分かっていないー


『うん! それにしても、高峰君って本当は楽しく話せるんだね!』

『そうかな? まぁ、高校入ってから友達とか作ってなかったから』

『確かにそうだよね、皆は高峰君のこと変に誤解してるみたいだったから』

『誤解?』

『毎日本を読んでるとか、ぶっきらぼうとか態度悪いとか』

『う、俺の自業自得だから何も言えない』


ー私はこの時初めて反省した、理穂が居なければこのことには気づけなかっただろうー


『これからなんとかなるよ!』

『そう上手く行くかな?』

『私がなんとかする!』

『いや、凄く迷惑じゃないか?』

『何言ってんの高峰君! 私達もう友達でしょ! 友達の悩みは私の悩みだよ!』

『友達って……いやありがとう……』

『何か言いかけたでしょ? 気になる!』

『いつから友達になったのかなって』

『嫌?』

『嫌じゃない』

『良かった! 話したらそれで友達だよ! 友達になる事に理由なんかいらないでしょ?私が友達と感じたなら友達なんだよ』

『俺が友達だと思ってなかったら?』

『それは大丈夫! だって高峰君今も楽しそうだもん!』


ー私は、理穂が友達になってくれたことで高校生活は充実した。理穂のお陰で友達もできたし、何よりも理穂の人を見る目には驚かされた。相手の気持ちを察するのが得意で友達になる人、ならない人もしっかり見分けが付いていたのだ、勉強などはからっきしだったがその分人間関係の築き方が群を抜いて上手かったー


『なるほどな』

『私の目に狂いは無いのです!』

『そうだな』

『そういう訳で改めてよろしくね! 高峰君』

『こちらこそよろしく』



ーーー



「パパ、ダンマリしてる~」

「そうだね、すっぽんみたいだね」

「僕、すっぽんだいすき!」


一樹と理穂がにこにこ笑っている、この二人はまったく……

まぁ、でも和むから良いかな。


「こら、どこがすっぽんだ! 私はちゃんと聞いてるぞ」

「ごめんね! でもすっぽんは皮肉じゃないよ?」

「まぁ、わかるけど!」

「パパすっぽん嫌いなの?」


二人の顔を見合わせてみる、二人の顔はその答えを欲している顔だ。


「もちろん、パパもすっぽんは大好きだよ」

「よかったね、一樹! パパも大好きだって」

「うん!」


私達家族は皆すっぽんが大好きである。

理穂と結婚した当初の時のことだ、私はある質問をした。


『なぁなんで、俺と結婚したんだ? 理穂なら他にもいい奴いたんじゃないか?』

『好きな人と結婚するのに理由が必要?』

『いや、まぁ必要は無いと思うけど』

『すっぽん!』

『はぁ?』

『変な顔してる!! 疑ってるの!?』

『いや、まぁな……』

『私達を繋げたのはすっぽんだよ。私も好きだし、はじめ君もすっぽんを好きになってくれた』

『それだけ?』

『それだけで充分だよ! だって皆理解してくれる人居ないんだもん!』

『なるほどな』


私達にとってすっぽんは特別な存在で、家族を繋ぐ守り神だ。


だから、私のすることはこの幸せをずっと続くようにするだけである。


ほんわかな家族のお話です。


すっぽんはかわいいと思いますか?

自分はかわいいと思うんですよね、名前がキュートで(笑)


こんな家族いいなぁ~

理想な家族ですね!


殆ど、会話主体なのですが読みやすかったでしょうか?


過去の場面は思い出にふけっていると言う意味で説明文などの描写は省きました。

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