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魔法と宇宙船は相性が良い  作者: 丸顔ゴリラ
幼年編
3/71

初めて魔法に触れました

どうも、ナーガプライム・マーシェル、3歳です。

そう、あれから一年掛けてやっと聞き取りに問題が無いぐらいまで言葉を覚えたんだ。

自分の名前が分かった時は思わず泣きそうになった。

え?計算が合わない?それがどうもこの世界、数え歳みたいなんだ。

数え歳というのは生まれた時が一歳で、それから新年毎に歳を取る方式だ。

そして俺が感動したあの競技、あれは年末の恒例行事だそうだ。

つまり生まれて数ヶ月の俺は、あの放送の後2歳になり、この間3歳になったらしい。

解りにくい?じゃあ今後は括弧の中に地球年齢を入れておくから参考にしてくれ。


さて、この期間の情報収集(主に絵本だが)で解った事がいくつかある。


一、俺たちがいる国は、フルムンド王国というらしい。

二、この国は軍事国家で戦争している、というよりは長い間戦争を仕掛けられ続ける為、軍事国家に成らざるを得なかったらしい。

三,この世界は宇宙開発が信じられないほど進んでいるらしい。

四,この世界での魔法は魔法陣で発動するらしい。


俺の言語力にまだ問題が有り、未だに絵本以外が一部しか読めないが、特に宇宙技術については絵本からでも解るほど進んでいるみたいだ。

俺なりに考察した所、前世で宇宙開発の障害になっていたのは主に燃料と環境だった。

もし、魔法でそれを補えるのなら十分可能性はある。

実際、魔法で生み出した植物で飢えを凌いだとか、燃料製造に魔力を注ぎ過ぎてエンジンが壊れたと言った話が話半分としても沢山あった。

非常に興味深い、どんな構造で何を燃料にして飛んでるのだろう?



「ただいま。待たせたな、マーシェ」

「マー君、やっと手に入ったわよー」


積み木で遊んでいるフリをしていると、俺の両親(確定)が軽い調子で子供部屋に入ってくる。

俺が生まれたのはナーガプライム家で父がタージェント、母がアネストと言う名で俺が第一子らしい。

とても優しい両親で、特に母は猫なで声で俺に甘えてくる。

二人の話を総合するとどうも母の方が上官で、戦場では“銀壁のアネスト”と言われて恐れられているそうなんだが。

そんな二人は俺の前に紙に包まれた何かを持って来る。

俺は期待を込めて確認する。


「まおー?」

「そうよ、これが”光の魔法陣”よ」

「おー」


俺は母が包みの中から魔法陣を取り出すのを見て手を叩いて喜ぶ。

これが魔法陣か、透明なリングの中に銀色の複雑な模様が浮いている。

実はあの競技を見ながら“僕も魔法陣が欲しい!(片言なので伝えるのに時間が掛かった)”とお強請りしていたのだ。

まさかこんなすぐに手に入るとは思っていなかったんだが。


「あいー?」


少し離れた所で父親に絵本を読んで貰っていた女の子が寄ってくる。

一緒に育てられている彼女はミカ、ハルツエル・ミカサンテでハルツエル家の次女らしい。

ハルツエル家は父オーネスタ、母パルネストで他に兄と姉が居るそうだ。


「よく手に入りましたね」

「ああパル、子守を任せちゃって御免ね。それがね、私も調べるまで知らなかったんだけど、知育教材として普通に売ってたの」

「そうなんですか?」

「最も対象年齢が高すぎて、購入時に許可が必要だったけど」

「許可はどうしたんです?」

「英才教育の為だと言ってゴリ押した!」

「アネストさん……」

「だってマー君初めてのお願いなのよ!?それに最初に話した言葉が”魔法”だった子が、魔法陣を欲しがったんだもの気になるでしょ?きっとこの子は立派な魔法士か研究者になるわ!」

「……順調に親馬鹿への道を歩んで居るみたいですね」

「任せて!」


母達が話している横で俺は父達に使い方を教えて貰っていた。


「そう、そこを持って魔力を込めるんだ。やって見ろ」

「そんな簡単にいくかよ。マーシェル君、少し力を入れるみたいにしてやってごらん。最初力が抜けるように感じるけど大丈夫だから」


俺はドキドキしながら力を入れてみる。

しかし魔法陣は全く反応しない。


――何が悪いんだ?

いやまて,力じゃなくて魔力を込めるんだったな。

取り敢えず手から熱が伝わるのをイメージしてみるか。――


俺は色々と試行錯誤してみる。

そのうち目眩がしたような感覚と共に銀色の魔法陣が白く輝きだした。

するとリングの真ん中に光の球が浮かぶ。

これが魔法……。


「おお!一発で!?凄いぞマーシェル君!」

「うむ、流石だマーシェ」

「何で貴方が偉そうなのよ。どう?マー君は凄いでしょ?」

「これは驚きました。確かに凄いです」

「あー?」


廻りが色々騒いでいるが、俺は目の前の魔法陣から目が離せなかった。

そのうち急に眠気が襲ってきた。


「そろそろ限界みたいだね。マーシェル君、魔法陣は最初程じゃないけど維持する為に魔力を使い続けるんだ。さあ、そろそろ手を離して休もうか?」


オーネスタさんに言われて魔法陣から手を離す。

全く未知の技術との出会いに俺の心は満ち足りていた。

初めて魔法陣に触れ、魔法に触れ、そしておそらく魔力にも触れた。

いつか必ず、この技術を使いこなしてみせる。

そう決意を新たにしていると、ふと目の前に魔法陣が浮かんでいることに気付いた。

おそらく残像だろう、よほど見つめていたらしい。

しかしリアルな魔法陣だ、まるでそこに在るみたいに見える。

俺はその魔法陣に手を伸ばした。

するとその魔法陣が僅かに光ったような気がした。

だが俺はそれを確認することが出来なかった。

何故ならその瞬間、俺の意識は闇に飲まれたからだ。



――――初めて魔法を発動したこの日、俺は失神した――――


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