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改名

ゆっくり投稿しています

「命の恩人、であるか・・・」


俺は今現在時代劇で見たことのある平伏を見よう見まねでやっているため、王様の表情がわからない


だいたい朱光様が王様と話しているときは誰もいなかった謁見の間だったのに、俺の話になった途端に護衛の兵らしき人たちが大勢入ってきている


正直怖くて仕方なかったが、爺さんの堂々としていろとの助言を胸にじっと我慢していた


「面をあげよ、貴殿は我が息子の恩人だそうだな。あまり畏まれては礼も言えんであろう」


目では見えない頭の向こうの方が一瞬ザワついた


今までの声とは違うから、きっと護衛の声だろう


恐る恐る顔を上げると、正面に若い男性が座っている。周りを兵士が固めているし、十中八九王様だろう


そしてその隣、護衛とは違う。そう、文官らしき服装をしている人物がものすごい表情で俺の事を睨んでいる


「このような状況で悪いな。私にも立場があるのだ」


「い、いえ、滅相もありません!」


横の男の表情がわずかに動いた気がした


きっと怪しまれている。だって朱光様を護衛していた爺さん以外も同じ表情だったから


「とりあえず名を聞こうか」


一瞬普通に会話をしていいのか迷った


「主上様が貴重な時間を割いて貴様と話しているのだ!早う返事をせんか!」


やはり隣の男が怒る。今にも腰に差してある刀の柄を掴まんばかりの勢いで、だ


「お、・・・私の名前は高柳泉と申します。事情があって山中を彷徨っていたところを、朱光様に助けて頂きました」


「賊に襲われていたところをこの者が助太刀してくださいました」


横から朱光様が援護してくれる


「そうか、これは丁重にもてなす必要がありそうだな」


そう言った王様は近くにいた護衛に何か指示を出した


「では、そのように」


頭を下げて早足に退席していく護衛A


「ところで貴殿はこの国の者では無いな」


俺からは特に何か言ったわけでは無いが、いきなり国民では無いことが見破られた


名前からのような気もしたが


「この国の者ならば、たとえ呂登(リョトウ)に怒鳴られたとしても恐れをなして名乗ろうとはせんでな」


そう言って横にいる、俺に対して警戒心マックスの男を見た


「当然です。主上様はこの国の長であられますのに警戒心が足りていないのです。だからこそ私が目を光らせておりませんと」


表情を一切変えずそう言う男、呂登さんはおそらく王様にかなり近い人物なのだろう


「たしかにお・・・私はこの国の人間ではありません」


しかし私という言葉に慣れない。なんとなく王様に向かって”俺”という言葉はまずい気がして言い換えているが、むしろ変な言葉遣いになっている気がしてならない


「それは先ほど言っていた事情とやらに関係するのか?」


「はい」


なんとなく横を見ると、どこかワクワクした様子の朱光様が見えた


何故だ?


そんな疑問の答えが出る前に


「よければ聞かせてはくれないか?もし困り事なら私も手を貸すことが出来るかもしれん。・・・そういえば名乗っていなかったな。私はこの海興国の長をしている高白麗(コウハクレイ)だ。そこにおる朱光の父でもある」


王様だと言うからもっと上から目線なのかとも思っていたがそんなことは無いらしい


俺も改めて自己紹介と、そして俺が今現在抱えている事情を話すことにした


元々朱光様の親に頼るつもりだったのだから問題は無いだろう


国の王様だと聞いたときは内心ビビりはしたが、この謁見で決心が付いた


おそらくこの王様、白麗様なら手を貸してくれるのではないか。と



「改めて私の名前は高柳泉と申します。日本という国から来ました」


「・・・日本?それに先も思ったが高柳泉という名前も珍しいな。どんな字を書く?」


その言葉と同時に、用意されていたのでは無いかというスピードで俺の前に机と筆と墨が用意される


正直習字は苦手だが自分の名前くらいは授業の度に書いていたから伝わるくらいには書けるだろう


筆を取って自身の名前を書き始める


『高』次に柳、一番苦手な字だが大丈夫だろうか


そんなことを考えながら筆を紙に置こうとした瞬間、目の前に何か鋭利なものが通り抜けたような気がした


視線を下に落とすと、紙に先ほどの鋭利なものが突き刺さっていた


「うぉ!?」


あまりの出来事に、後ろにのけぞる


「貴様!侮辱するのもいい加減にしろ!ただでさえ得体の知れぬものを主上様に謁見させるのだけでも腹立たしいと言うのに、主上様やそのご家族様まで侮辱するとは!!」


次は当てると言わんばかりの眼光を飛ばされるが、意味がまったく分からない


「ぶ、侮辱なんてしてませんよ!俺は自身の名前を書いているだけなんですから」


必死の抵抗もまったく聞き入られること無く、呂登は無慈悲にも刀を振りかぶっている


「呂登、やめよ。その者は朱光の客人である。いくらおぬしでも許されることと許されんことがある」


ややため息をつきながら、呂登をたしなめる白麗様


止めてくれていなければ今頃真っ赤なお花畑が見えただろう


ちびったかと思った・・・え?


もぞもぞとバレないように確認しようとしたとき


「気にせず続けよ。今後このようなことが無いようにきつく言うておく」


「は、はい」


紙には汚いながらも高柳泉と書き切った


「なるほどな、して日本というのは?」


ここから俺は馬車で朱光様にも話したことを同じように話した


「・・・・・・・・・というわけでして、帰り方もどういう理由でこの世界に来たのかもまったく分からない状況です」


呂登が相変わらず腹立たしげに俺を見ているが、白麗様に釘を刺されている内は大丈夫だろう。大丈夫だと思いたい


「何か異世界人だという証拠を見せることは出来るか?」


「証拠ですか・・・あ、あります。証拠」


ようはこの世界の文明にないものを出せば信じてもらえる可能性が高い


早速懐に忍ばせていた”これ”を出す


「何だ、その板は?」


「これはスマートフォンという俺の世界で遠くの人に連絡を取ることが出来る物です。他にもいくつかの機能が付いていますが」


残念ながらここは圏外、というかはなから電波があるなんて思っていない


「その板でどのようにして連絡を取る。書くのか?」


「えーっと・・・連絡をとるというのはこの世界では出来そうにないので、別の機能を紹介します」


俺は1つのアプリを起動して朱光様にスマホを向けた


「はい、朱光様笑ってください」


「ん?どうした急n」


言葉が言い終わる前に『カシャ』という音が鳴る


「なんの音じゃ!?」


口調が元に戻っているのを見るとよほどビックリしたのだろう


「朱光様これを見てください」


俺はさっき撮った写真を朱光様に見せた


画面には不思議そうにこっちをみている朱光様


「ん?おぉぉぉなんじゃこれは!?」


みたこともない写真という機能に目を輝かせる朱光様


「父上!これはすごいです」


俺は朱光様にスマホを渡すと、パタパタと白麗様のもとへと駆け寄っていく


「・・・なんと面妖な物だ。たしかに貴殿が異世界からやってきたと信じるしか無くなったな」


隣にいる呂登へと言う


「・・・確かにそうですが怪しいことには変わりません。この国においておくのは危険かと」


「そうか?国外の、それこそ帝国に入られればもっと厄介かと思うが?」


俺を置いてけぼりにしてこの国の人たちで話し合いを始めてしまった


「泉、泉。おぬしはこの国に残りたくは無いか?」


朱光様はまたパタパタと走って俺の隣へと腰を下ろす


当然残りたい


少なくとも友好的に接してくれている人が出来たから、今後のことについても考えやすくなった


「俺としては残りたいと思います。もちろん迷惑なら出ますが」


「そうか・・・」


あちらでもどうやら話が付いたらしい


「泉、貴殿をしばらく私の監視の目が届く場所に置く。それでもよければこの国に残るがよい」


監視の目が付く


でもそれは俺が信用出来ないからだ。他の国に行っても同じようなことになるだろう


それならば


「お願いします。しばらくこの国に置いてください」


「わかった。王宮の中に使っていない建物がある。侍女もよこすでそこで過ごすがよい。あと名前だが、呂登の言うとおり”高”は我が一族にのに許されておる姓だ。不便ではあると思うが殺傷沙汰に巻き込まれるよりはマシであろうからしばらくは柳泉(リュウセン)と名乗るがいい。朱光案内してやれ」


「ははっ!」


横で嬉しそうに頭を下げる朱光様。忌々しそうに俺を見ている呂登。満足そうに頷いている白麗様。頭が真っ白になっている俺


まさか王宮内に住むことになるなんて


完全に予想外だ


次回更新未定です

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