第三話 5歳とピンチ
__時が経ち…。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃいルト。気をつけるのよ。初めての森は危険だからね」
「行ってらっしゃい!森の中は危険が多いから気をつけるんだぞ!それと奥には絶対に行ったらダメだからな!」
「行ってらっしゃいませルト様。どうかお気をつけて」
「「「「「行ってらっしゃいませ!」」」」」
森の中の大きな屋敷。爽やかショートの黒髪、赤い瞳、優しい表現で五歳ながら魅力的な顔つきの少年ルトは、少し朝早くから準備をしていた。右腰にショートソードを付け、いつでも行ける状態だった。そして門の前で集まっていた母と父、メイドの人や執事の人達に見送られて、ルトは笑顔で森の中に入っていった。
「行ってしまったわね」
「そうですね奥様」
「あんなに喜んで入っていったんだ!いいんじゃないか?」
「はぁ〜あなたね〜…。心配じゃないの?」
「心配はしてるさ!でも俺が毎日ルトを鍛えてるんだ!きっと大丈夫!」
「そうね…あなた毎日ルトに剣を教えてるわね。それでも心配だわ」
スレインは、右手を頬につけ、はぁ〜とため息を吐く。その後ろで、メイドの人や執事の人達も心配そうに森の方を見ていた。
「な〜に心配はないさ!あの歳で俺の稽古についてこられる程のレベルだからな!勿論手加減なしでやってる。なのについてこられるんだぞ?魔法無しでも相当強いはずだ」
「魔法…ね〜あなた?」
「うん?何だ?」
「私達何か忘れてることないかしら?ルトに言わなくちゃいけないことを」
「んん?そうか?俺は別にないと思うが?」
「そうかしらね〜…」
スレインは、う〜んと考えるが思い出せず一旦考えるのを辞めることにした。
「考えても仕方ないわね。ルトが帰って来たら直ぐお風呂に入れるように準備をしといてメアリ。ルトのお祝いの用意も頼みますね。お願いね?」
「かしこまりました奥様。直ぐに準備致します。ルト様のお祝いも直ぐにできるようメイド、執事達一同で頑張らせていただきます」
一礼すると、メイド、執事達が、屋敷の中に戻っていった。
ルトに重要なことを言おうと思っていたけど忘れてしまったわね…。
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どうも!おはようございます!俺の名前は草野…とと違った。「ルト=ラスティア」です!俺は今日五歳になり、大きくなりました!しかも俺の瞳は赤!鏡を見るまで全然気づかなかった!鏡を見た時自分がこの世界でイケメンなのかイケメンじゃないのか分からないからもうどうでもよくなりました。赤い瞳は、母さんの遺伝で、父さんの遺伝は黒髪。髪は前の世界と同じだね。でも改めて異世界だと言う事に俺は嬉しい気持ちが溢れ出たよ!だが!なんと言っても魔法がある!しかも驚いた事に俺の両親二人共この世界の英雄だった!母さんの名前は「スレイン=ラスティア」金髪ロングに、赤い瞳、ほんわかとした表情、超が付くほどの整った顔。スタイルも抜群。身長百六十七㎝、胸も大きいと、何もかもが完璧な超絶美女。英雄[癒しの魔法師]と言われている。
初めて母さんの瞳を見た時、赤かったから流石異世界!だと改めて感じたよ。
父さんが「ザスト=ラスティア」短い黒髪、黒の瞳、少しごつい顔、覇気がある表情、筋肉は程よく付いている。身長は一七七㎝。英雄[魔法剣士]と言われており、剣に魔法を宿した魔法剣、剣で戦いながら魔法を放つと、バランスが取れている。この二つをこなすのは難しいのだとか。二人共物凄い有名な人物だ。
この話はメイドの人に聞いた話だ。俺はそんな家庭に産まれて良かったのか?あ、それと今日初めての森探索になります!毎日毎日行きたいて言っていたら五歳になってからね、と言われて今日ちょうど誕生日がきたのだ!だから初森!家の方角からすると北に行く方向だね。東が大きな川、南が…何処だっけ?西が王都に行く道だって母さん達が言っていた。少し川が気になるからいつか釣りでもするか。
「よし!今日もやるか!」
ルトは目を閉じて、集中する。すると周りに膨大な魔力が集まっていきそのまま維持をする。そして数時間が経つと今度は、一気に魔力が消えていく。
「うんうん!今日もいい感じ!」
数時間目を瞑って集中した後、近くにあった丸い木に座る。今の母さんに教えてもらった魔力制御。自分の魔力を上手くコントロールする為にやっている。これをする事によって無詠唱ができるとか。しかも魔法は自身の中にある魔力を使う為、魔力制御をすると増えると言っていた。だから俺は!三歳の頃に教えてもらってから二年間毎日忘れずに朝、昼、晩やっているのだ!勿論広い庭でだけど。毎日俺がやってたら何故か皆んな見てくるけど何だろ?しかも微笑ましい目で。でも嫌じゃない。
「二年間毎日ゲーム感覚でやると魔力制御が楽になるな〜。一番最初何て全然上手くできなかったし」
まじで最初は上手くできなかった。魔法を使う事はそう甘くはない。集中力、イメージ、自身の魔力量を把握、コントロールを考えてやらないと、全くと言うほど発動できないんだよね…。しかも魔力が無くなったら死ぬってどんだけだよ…。魔力量がギリギリの状態になると、衰弱状態になって気絶するらしいから、ヘマをしない限り死なないとは言っていた。まじ自分の苦労に感謝。サボらなくて良かった!今じゃ普通に無詠唱が打てるほどに成長したよ。本来魔法は詠唱が無いと発動できないとは言っていたけど、極めると無詠唱が打てるようになり、魔法名とかを言わなくても簡単に打てるようになるとか。これまだ両親に言ってないんだよね〜。だって母さんが言うには、無詠唱は相当苦労してやっと習得するレベルだって言うもんだから、この時点で言えなくなった。
ま〜でも詠唱作るの恥ずかしいし、言うのも恥ずかしいから毎日欠かさずやっておいて良かったよ。ゲームもそうだが人は努力をすると成長する。やらなければ何も変わらないって言うし。ま、この事は俺が成人してからでも言うか。因みにこの世界の成人は十五歳からで、春夏秋冬もあり、日本と同じ三百六十五日ある。今は夏。本当は暑いけどこの黒いローブのお陰で暑さ対策はバッチリ!何故かって?それは…また後で。はは、何一人で解説してるんだろ。この黒いローブにただ温度を調節をできるようにしただけの、こう、何て言うのかな?このローブに温度を調節できるようにしたい!と、強くイメージしたらいつの間にか付与っていうのか?されてた。
「さて!初めて森の中に入るわけだが何をしよう」
休憩をした後、ルトは森の中にどんどん入っていく。やっぱり護衛の人達が何人か俺の跡をつけてるな。心配してくれるのは嬉しいけど、これじゃー本領発揮できないからごめんけどここは撒かせてもらうよ。するとルトは一瞬にして消える。これぞ〈縮地〉!
よしこんで撒けたな。一応〈広域探索〉っと。イメージは、自信を中心とする半径六百メートルに人がいるのか。大丈夫そうだな。さて何が出るかな〜…。父さんに言われた森の奥が気になるけど約束は守らないとね…「ゴソゴソ」うん?
歩いていると草むらから音がした為、一度その場に立ち止まる。
何かいるな…猪か?それともウサギ?ヤギか?何だろうな〜俺の初獲物チャンス!
音がした方をずっと見ているとその正体が現れた。
「キュイ」
「おっ!ウサギか。早速初の獲物を狩るか「グォー!!」〜あーー!?」
ウサギの後ろから大きな熊が現れ、捕まえたウサギを捕食していた。
「おい!そのウサギ俺のだぞ!…熊!?何でこんな所にいるんだよ!母さんと父さんの情報によると奥に行かない限り、比較的安全だと言っていたけど全然安全じゃないじゃん!」
咄嗟に後ろにバックして手を構える。
おいおい!この世界に来て初めて熊見たけどこれ本当に熊かよ!何だこいつ!
その熊は爪が物凄く長くなっており、口からはみ出る牙がキラリと見える。ゆだれを垂らしており、口の周りは、ウサギの血がべったりと付いていた。そして何と言っても体の模様。ドス黒い紋様が、瘴気を出しながら熊の周りを囲っていた。
「こいつの周りに物凄い魔力が集まっているな…。何だよマジでこいつ…」
ルトが熊を見ていると、食べ終わった熊と目が合い、急にこちらに向かって襲いかかってくる。
うおっと!?あっぶな!この熊野郎いきなり襲いかかってきてぞ!しかも速…地面が爪で、抉り取られてるやん!こんなやつを放置したら何処かで被害がでるな…。よし!そっちがその気なら俺は容赦はしない!これが初戦闘!今日は熊鍋じゃー!豪勢といこうか!…こいつまず食えるのか?ま、いいや。
「おい!こっちだ!俺についてこい熊野郎!」
「グォー!!」
ルトは自身に魔力を乗せて〈身体強化〉をして、森の更に奥に走っていく。
ごめん父さん。初日から約束守れなかった。でもこいつの為と思って許してくれ!
走っていくと、ちょうど光が当たる場所にたどり着いた。そこには何かを封印していると思われる、大きな石が柵に囲まれて置いてあった。
「何だここ?この大きな石日本の神社とかにありそうなやつだな。何か封印でもされてるのか?」
「グォー!!」
「とと、そんなことよりもまずはこいつを倒さなきゃ。俺が編み出したネタ魔法を喰らえ!」
ルトが叫ぶと、空中に魔法陣が浮かび、そこから大きな鉄柵が降ってきた。降ってきた鉄柵が熊を捕獲する。
どうだ!これぞ!自然の動物園!いや〜やっぱり魔法は便利だな〜。ステータスとか食べ物とかは無理だったけどそれ以外なら基本何でも発動するから生み出した放題!ただ…生み出すのはいいけど魔力の消費が激しい。この鉄柵だけでもかなり減る。イメージは超頑丈な鉄にしたから硬度も高め。壊れることはないはず。勿論これ全部隠れてやってました。だって見つかったら大騒ぎされそうだし。
「おい熊野郎!今の気分はどうだ!」
「グゥガァウ!グゥガァウ!」
熊は鉄柵に何回もタックルするが、びくともしなかった為、諦めた…と思いきや!
「おい!なんかこいつ紋様が光ってねーか!何するきだ!」
熊の周りがどんどんと瘴気に包まれ、それが収まると同時にボーリングの球より少し大きい、黒い球体が柵の外に出現し、3発も放たれた。
すると一発は草木を消しとばし、もう一発は大きな石に直撃、最後の一発はルトの方に飛んできた。
「あっぶな!めちゃくちゃだな!そんなのあり!?てかヤバ!あのヤバそうな石壊れてしまったよ!」
後ろにあった大きな石に黒い球体が当たってしまい、割れてしまった。
えっ?何も起きないんだけど?良かった〜俺の気のせいだった…あ、気のせいじゃなかった!どうしよう!
粉々になった石の中心にモクモクと紫色の煙が集まっていき、その中から、灰色の髪、オッドアイの瞳、怖い顔、ごつい体をした若い男の人が出てきた。
「う〜ん…や〜と出れた。何年…何百年ぶりだ?あ〜体がな「グゥガァウ!グゥガァウ!グゥガァウ!」まってる〜…うるせーぞ!この野郎!「グゥガ…」あ〜目覚めわりーな!」
その男は右手を鉄柵の方に向けて、無詠唱で魔法を放つ。すると捕獲されていた熊を一瞬にして消しとばした。それも超頑丈とイメージした鉄柵ごと。
「……」
俺はいけない者を復活させたみたいだな…。これマジでピンチじゃね?だってネタ魔法だけど鉄柵は超頑丈とイメージして作ったのに、それを一瞬で熊ごと消しとばしたよな?勝てる気がしないんだけど…。
すると男は、ルトの方に顔を向ける。
「おいガキ!お前は誰だ?」
「オッドアイ…」
「ああ?」
この男の瞳にオッドアイだと!すげー!カラコンとかじゃなくて本物!右目は赤、左目は緑。お〜…感心してる場合じゃなかった。こいつ普通に無詠唱で放ったよな…。いやまずはこいつが何者かだな。
「お前は誰だ!」
「俺か?俺は〜そうだな〜…世間じゃ俺の事を人外人って呼ぶらしいな。俺達の中じゃモルモットだけどな!」
なっ!?こいついきなり襲いかかってきやがったぞ!警戒してて正解だったよ。だがこいつ俺を殺そうと思ってやった訳じゃないな…。今のは、俺が避けたんじゃなくて、わざとこいつが外したって言ったほうがいいな。俺にはこいつの動きが一切見えなかった。
「へぇ〜ビビらないんだな。ガキのくせに面白い。次はお前の魔法を見せてくれよ。俺を殺す気でな!でなきゃ俺はこの世界を破壊の限り壊すぞ?」
「絶対にそんなことはさせない!なら見せてやるよ。とっておきの魔法をな!」
空に右手を掲げて、集中をする。
「ならお望みどおり、殺すきでやってやるよ!」
次は何の魔法にするかをイメージする。絶対にこれなら倒せる。
すると空中には何種類もの矢が出現する。火の矢、水の矢、風の矢、土の矢、光の矢、闇の矢、雷の矢、氷の矢が空中に浮かんでいた。
次はこれを全部一つにまとめて融合!からの武器生産!〈聖なる槍〉!融合!くぅ…魔力を消費しすぎた…。これで倒せなかったら終わりだな…。
「おうおうおう!何だそりゃ!お前何種類適性持ってんだ?ただのガキじゃないとは思っていたが予想以上だな!しかも何もない所からどうやってその武器を出したのか気になる」
「俺の超火力の魔法を喰らえ!」
すると虹色に輝く槍が男目掛けて放たれる。これならあの男を倒せる!ルトはそう思っていた。だが…
「確かにお前の魔法は凄い。だがお前はもう魔力の限界、これが最後の魔法って訳だ。んで俺はどうなるのかって言うと…「シュン…」と、いうわけで残念だったな」
「嘘…だろ…」
虹色の槍が男の胸を貫こうとした瞬間…何もなかったかのように全てが消えていった。
まじかよ!あいつ槍が体に当たったのに消えたぞ!チートじゃねーか!そんなのあり!
「ちぇ、やっぱこの固有魔法は不便だな。一回使うと半年使えなくなるデメリットが発動するからな。だが一応発動することは分かった。さてガキ!」
「……」
男はルトの方に近づくと目の前でしゃがみ込む。ヤバい殺される!
男の右手がルトの方に段々と近づいてくる。クソ!また死ぬなんて嫌だよ!せっかく剣と魔法がある世界に来たって言うのに!
ルトはギュッと目を瞑る。
「ふ、ふはははは!辞めだ辞め。お前には、面白いもんを見せてもらったからな!今回は見逃してやる。だが…次会った時はガキだろうが容赦はしないぞ?これで貸し借りは終わりだ。さて、俺は神獣の場所を探すか」
男はルトの頭に右手を乗せ、ポンッとした後立ち上がり、何処かに行こうとしていた。
クソ!逃げる気か!いや…今回は俺の負けだ…。今の状態でこいつとやり合ったら確実に俺が負ける。助かったと言うべきか。
だがこいつから重要そうな情報が聞けたな。「適性」、「固有魔法」、「神獣」これはいったい何だ?
「そんじゃ、あばよガキ」
「お、おい待て!」
男はルトにそう告げると、空中に浮かび、空を飛んでいってしまった。
あいつ空飛べんのかよ!いいな!…じゃなかった。これはまずいことになったな…。家に帰って報告しないと。あ、勿論奥に行ったことはここでの秘密で!
ルトは、自分に身体強化をして家の方向に帰っていった。