表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

私は……

ブックマークありがとうございます

「天井高い……」

頭上には空が広がっているのではないかと錯覚させられるくらいに高い天井。ピカピカに磨き上げられた白い壁。何人でも同時に通れそうなくらいの広い廊下には敷物がなく、ただ真っ白な道だけが続いている。

これだけ広ければ掃除も大変だろうに、全く人の気配が感じられない。


どこに行けばいいんだろう……。戻ってさっきの門番さんに聞こうかな?


「13の祈りですね」

「は、はい!そうです!!」

後ろから声が聞こえ驚いて振り返ると、上下ともに白い服を身にまとった男の人が立っていた。


「どうぞこちらへ」

それだけ言うと、彼はすたすたと私の前を歩いていく。


「どこへ向かっているんですか?」「私はこれから何をすればいいんですか?」「あっ、あの!!!」

なんで返事してくれないの?喋っちゃいけない決まりでもあるのかな?私悪いことしてない?大丈夫??どうしよう、すっごく不安になってきた。父さんには胸張って出てきたけど本当に……。


「どうかされましたか?足が止まっていますよ」


「はい!ごめんなさい!!」


「私の後についてきてください」

それだけ言うと、またさっさと歩きだしてしまった。私の言葉には何にも返事してくれないみたいだけど、ついていくしかないね。


そういえばなんとなく壁に色がついているような……。壁、黄ばんでるわけじゃないよね?歩けば歩くほど壁や廊下、天井まで全てが黄色に染まっていく。


「着きましたよ。どうぞ中へ」

その言葉とともに開かれた扉の中は、今までとは比べ物にならないくらいの真っ黄色の小部屋だった。正面には祭壇のようなものがあり、壇上には私の頭くらいありそうな透明の球がクッションの上に置いてある。

あれは、階段なのかな?

階段にしては幅の広い段が3段。


「段の3段目まで上がり、膝をついて神にご報告を」

「ご報告って何を言えばいいんですか?」

「名を名乗ればそれで問題ありません。後は神の御心のままに」


結局なにも分かんないよ。名前を言えばいいんだよね?

恐る恐る祭壇に近づき、階段を上がる。

後は膝をついて、っと。手も組んだほうがいいかな?

胸の前でぎゅっと手を組む。ついでに目も瞑ってみた。


「神様!私は今日で13歳になりました。ハルです!私も無事に13歳になることができました!ありがとうございます。これからもいい子にして過ごすので、見守っていてください!」

これでいいかな……。

目を開く。

立ち上がろうとして、足に力を籠めるが力が入らない。どうやって立つんだっけ。そうだ、手を床について立ち上がればいいんだ。

組んでいた手を外し、床に手をつく。

あれ?手をつくってこんな動作だったっけ。床はこんなに柔らかかったっけ?立てない!どうしよう、動けない!

焦りとともに周りが明るくなってくる。

そしてとうとう目がくらんだその時、ハルはトプンと床に吸い込まれてしまった。


眩しい。でも目が閉じられない。手も動かない。足も動かない。当たり前にあるはずの手足の感覚すらない。体温と同じ温度の湯に浸かっているような、とても曖昧な感じがする。


私は、私は、私は……。


「ハル。ハルや」

どこからか声がする。


「辛い人生だったのぅ。今回の人生は前回与えられなかった分の才能と、運を与えておる。幸せな人生を送るんじゃぞ。のう『小野春希』よ」


おの、はるき……。

なぜかその単語だけがぐるぐると頭の中を駆け巡る。



お母さんごめんね。ごめんなさい……。


白い便箋。青のインク。薄暗い部屋。

ごめんなさい。


「春希、アンタ何死んでんのよ!!!!」


「お母さん!」


その言葉は、どこにも、誰にも届かなかった。

最初の黄色い部屋に戻っていたのだ。


立ち上がり、階段をおりる。神官らしき人が近づいてきた。

「生まれと、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「日本生まれの小野春希です。これはどういうことですか」

異世界転生決めちゃった?なんて思う反面、さっきのお母さんの声が頭から離れない。

「数多くの世界の端にある名もなき世界です。前世がある方にとってはボーナスタイムみたいなものですよ。一週間後、また神殿へお越しください。お帰りはその扉からまっすぐ歩けば出られます」


「一週間後ですね。分かりました。ありがとうございます」


聞きたいことは山ほどある。でも私の言葉なんて誰も聞いちゃくれないから。返事だってしてくれないだろう。聞かれたことに答えるだけ。言われたとおりに行動するだけ。それが一番いい方法だと私は知っている。

言われたとおりに廊下を歩く。ひたすらに歩く。山吹色のようだった壁が黄色になり、レモン色になり、透き通り、やがては真っ白な壁になる。


そういや才能と運を上乗せしてくれたって言ってたよね。ボーナスタイムだって言ってたし、幸せに……。烏滸がましいかな。でもやっぱり少しくらいいいかな、幸せを望んでも。


『小野春希』は扉を開け、名もなき世界へと降り立った。

やっと小野春希になれました。

もっと表現したいことはあったのですが、色々と追いつきませんでした。

どんなチートなのかは、またいずれ。


次回更新予定は明日です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ