神殿へいこう!
もうちょっと無邪気なハルちゃんをお楽しみください。
「おい、ハル!忘れモンはねぇか?」
「大丈夫だよ~、父さん。持っていくものなんてそもそもないでしょ?」
「ならいいんだけどよ……。あーそうだこれ、持ってけ。昼の弁当だ」
「ありがとう!!父さんのご飯美味しいから大好き!」
嬉しくなって父さんに飛びつくと、大きな体でしっかりと抱きとめてくれた。
「お前は、俺とアイツの娘だからな。何も心配してねぇよ。……行ってこい」
「父さんありがとう!行ってきまーす!!」
神殿までの道は一本道だ。ちょっと疲れるけど、てくてく歩いていけばそのうちたどり着くことができる。
一般の人が神殿に行くのは、人生で3かいだけだ。
1番最初は生まれたとき。『無事に生まれることができました』と感謝をしに。
2番目は13歳になったとき。『無事に大きくなりました』と報告と感謝をしに。
3番目は死んだとき。『無事に生き終えることができました』と感謝と、受け入れをお願いしに。
13歳は大人になるための儀式なのだ。
詳しくは「行けば分かる」と誰も教えてくれないけれど、神様にお祈りをすれば大人になれるらしい。
今日はいい天気だなぁ……。
神様も祝福してくれているのかな?
てくてくてくてく
まだ先は長い。
てくてくてくてく
あ、鳥さん。
てくてくてくてく
疲れてきたなぁ、ちょっと休憩。
空が青いなぁ。今は暑い時期だから、高い空ともこもことした雲を見ることができる。
休憩終わり!頑張って歩くぞー!
しばらく歩いていると、石に座っている人を見かけた。
「どうかしましたか?からだの調子悪いんですか?」
「いやぁ、ちょっとバテちゃってさ。今にも吐きそうで休んでいたんだ」
そうだ!昨日もらった胃薬!!
「あのっ、よく効く胃薬持っているので、1つあげます。ここにお水もあります!」
薬瓶のラベルを見せると、彼の顔色が変わった。
「そ、それは中心都市でも有名なめったに手に入らないやつだぞ!?大事にとっておけ!」
「私は体は丈夫なので大丈夫です。お薬ってね、つらい人のためにあると思うんですよ。だから遠慮なんてせず飲んでください、さぁ」
1つ取り出して水と一緒に押し付けると、観念したように飲んでくれた。
「いやぁ、ありがとう。助かった。こんなにいい薬もらったんだ。なにかお返しをしなきゃな」
ナップザックの中をガサゴソとあさり始める。
「悪い、こんなもんしかねぇわ。風邪薬と、こっちは傷薬だな。風邪薬は1日2錠で直ぐに効く!ってやつだ。自慢じゃないが俺は体が弱くてな。傷薬は塗った後清潔な布を巻いておくと治りが早くなるぜ」
「こんなにたくさん……。ありがとうございます!」
「いいってことよ。そんくらいいいもん譲ってもらったってこった。この道は神殿にしか続いてねぇと思うが、もしかして13になったのか?」
「はい、そうなんです!これからお祈りしに行くんです」
「そうか、気ぃつけていくんだぞ。心を強く持てよ」
「?は、はい。ありがとうございます。行ってきます!!」
心を強く持てなんて初めていわれたなぁ。
神殿って怖いところなのかな?
神殿ってどんなところだろう。神様って本当に会えるのかな?
今まで全く考えてこなかったことが頭の中をぐるぐると回る。
ぐうぅぅぅぅ
お腹の音で足を止める。
そういやお腹すいたなぁ……。
木陰の岩に腰かけて、父さんのお弁当を取り出す。
何の葉っぱだろう?何かの葉っぱと厚切りベーコンのサンドイッチだ。
ちょっとしっとりしたパンと、ジューシーなベーコンがとっても美味しい!
美味しい!美味しいよ、父さん!!
父さんとピクニックしたいなぁ。お仕事忙しいから無理かな。
明日からは、私は看板娘!!いっぱいいっぱい働いて、お父さんに楽させるんだ!
そうと決まれば、早く神殿に行かなくっちゃ!
勢いのまま歩き出したスピードは徐々に落ちていったけれど、大きな建物までたどり着くことができた。
白い壁。白い門。見上げきれないくらいの大きな白い建物が建っている。
「門番さん!ここが『神殿』ですか?」
「あぁ、そうだよ。ここが神殿だ。13の祈りかい?」
「えぇ~っと、そうです、多分」
「では、ここを通ることを許可いたします。どうぞ中へ」
そうして、開いた大きな扉の中に私は足を踏み入れたのだった。
持ち物
良く効く胃薬
傷薬軟膏
風邪薬
前世の記憶取り戻せませんでしたね。次回こそは、次回こそは、、、。
明日更新予定です。