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プリンは美味しいです!

宜しくお願いします!

ヴォルフがこれほど自身の鼻を疑った事はない。


目の前の絶世の美女からリリィの匂いがするのだ。


つい数週間前まで2才にも満たなかった幼女が、数週間ぶりに見ると美女になっている。


ありえねえ!!


ヴォルフは混乱していた。


「ヴォルフさん、お久しぶりです、休眠は終わりですか?体調はどうですか?ご飯食べました?良かったらご飯食べませんか?ヴォルフさんのために一生懸命開発した料理がありますよ。きっと気に入ってもらえると思います。あ、それとも甘いものの方がいいですか?これもヴォルフさんが甘いもの好きだったらと思って一生懸命作りました!とっても甘くて美味しいですよ!それとも...」


あ、これはお嬢ちゃんだ。


一方的に話しまくり、いつのまにか近くに寄り添っている。


いつものリリィだ。


「ってちがーう!!なんでだ?なにがあった?大きくなりすぎだろう?そんなに眠ってない!ちょっと数週間空けただけだ!」


リリィは困った顔をする。


「ヴォルフさんは小さいリリィの方がお好きでしたか?困りましたね、これはすぐにでも元に戻る必要が出てきました。そうか、成長する必要なんてなかったのか。そうすると時の魔術の適性手に入れる必要がありそうね。シータさんにコツを...いや、まずは身体を戻そう。そして再アタックだ。ロイ兄、ちょっとダンジョン行ってくるからお留守番よろしくね!冷蔵庫に茶色の瓶が入ってるからその中にデザートがあるの。ご飯しっかり食べたら食べていいから!ヴォルフさんとシータさんにもあげてね!じゃ!行ってくる!」


は?いやちょっとまて。


「ちょっとまてーい!お嬢ちゃん!話しについていけん!まずは説明してくれないか?いや、それと小さなリリィは可愛らしかったが、そっちの方が好きってわけでもないから今すぐその身支度をやめろ、一旦話せ。そうだ、一回皆で飯でも食おう、な?」


リリィは満面の笑みだ。


「そうでしたか!今のリリィはどうですか?好みですか?ちょっと髪が長すぎるきらいはありますが、なかなかに大人になってませんか?一応これで身体は18歳です。成人ですよ、成人。もうヴォルフさんのお嫁さんにもいけますよ!」


確かに綺麗だ。


美しい。


間違いなく今まで見てきた女の中でも1番上等だ。


話さなければ。


話せばいつものリリィだ。


「落ち着けつってんだろ!嬢ちゃんは変わんねえな。とりあえずその、なんだ。ロイ坊にお客人もいるみてえだし飯でもつっつきながら全部説明してくれや」


全部説明してくれ


言ったのは自分だが、後悔する事になる。


このあと2時間もの間、嬢ちゃんは話し続ける。


誰も間に口を挟めない程のペースで。






ーーー何故だ。


自分がいない短い期間の間にとんでもない事態になっているのは間違いない。


ロイ坊は公爵家に目をつけられ


嬢ちゃんは急成長していて


魔術が切れれば死ぬ。


その上目の前にいる縦ロールが別の公爵で


石化の呪いでいずれ死ぬ。


そいつを解く手伝いする事になり


それが出来れば嬢ちゃんも助かる。


そのためには超級の光魔術の詠唱が必要で


ダンジョンに潜る事になりそうだってぇ話しだ。


こいつは難易度が高すぎる。


絶望的としか言えない。


なのに、だ。


嬢ちゃんの話し口調から全く悲観的な印象がないせいか


嬢ちゃんのフィルターを通して聞くと


全部うまくいく、時間の問題って気になってくる。


このみーとそーすぱすたとやらが美味いからか?


このやきそばパンとやらが美味えからか?


それとも目の前の嬢ちゃんが飛びっきりの美女になったからか?


何故だか、俺もいっちょ一肌脱ごうって気になってるのは。






縦ロールが俯いている。


そりゃそうか。


いきなり自身の秘密まで言われちまったんなら落胆しても仕方ねえ。


嬢ちゃんは普段は利口なんだが、自分で言うのもなんだが俺が絡むとポンコツだかんなぁ。


少しフォローしてやるか。


「あぁーなんだ、嬢ちゃんに悪気は「ププッ、もうダメですわ!耐えられませんの!」」


あぁ?


「先程まであれだけ理知的で、とんでもない才能をお持ちのリリィさんが、1人の殿方に会ったとたん別人ですもの!これほど愉快な気持ちになったのは生まれて初めてですわ!なんですの?ワタクシを笑い死にさせたいんですの?」


あぁ、大丈夫そうだな。こりゃ。





「それで、ヴォルフさんはどれが1番お好きでしたか?どれも全力で愛情を込めて作った一品なんですが、お好きな物はこれから毎日お届けできるように毎日お作りさせて頂きますよ?あ、そうだ。プリンです、プリン甘い物はお好きですか?パスタに比べると量も少ないのであーんしていいですか?」


嬢ちゃんはいつまでポンコツなんだか...いつもか。


友人の前で位、多少は自分を作ったっていいと思うんだがな。


いや自重しろよ。


「あぁーこの、みーとそーすぱすたとやらが気に入った。美味えなこりゃ。確かに毎日でもいけらぁ。甘い物は好きだが、結構腹いっぱいだかんな、少しなら食えるが量は少なめにしてくれ。あーんは呪いが解けたらたのんまぁ」


いや余計な事いった。


すぐに気づいた。


訂正するか?いやもう手遅れだ。


「え?ほんとうですか!!?ホントに?本当ですよね?ダメだ、ダンジョンになんか潜ってられない。シータさん、今詠唱わかりますか?愛があれば適性レベルなんて関係ないと思います!いけます!いける気しかしないです!今ちゃっちゃと治しちゃって、存分にあーんさせて下さい。そしたらシータさんの曾祖父さんを治しますね!」


デリカシーがない。


これ、ちょっと間違えば首チョンパ案件なんだが。


仮にも公爵様ってぇ事ぶっ飛んでんな。


「ふふっ。構いませんが、恐らくは現状では厳しいと言わざるをえないでしょう。他に光魔術の超級術師がお二人程いれば協力詠唱で可能性はありますが。それでも確率として3割、といったところですわ。適性レベルの範囲を越えてるのを単独ではまず不可能です。失敗すれば天級です、恐らくはペナルティで即死でしょう。やりますか?」


縦ロールは大丈夫そうだ。


まともな考えと、この短い期間で嬢ちゃんの扱いをわかってる。


「そうですか...やはり地道にいくしかないですね。では早速ダンジョンに「ぷりんとやらが食いてぇな」はい!ただいま!」


ダメだ。縦ロールは爆笑してやがる。


ロイ坊は飯夢中でなんにも聞いてねぇ


いま、お前の妹が大変なんだぞ?


ってかそのなぽりたん何杯目だ?


その小さな身体にどんだけはいんだよ...






「これがぷりんか?」


黄色い、匂いからすると卵に砂糖、あとは牛の乳か?


甘い匂いがする。


「美味しいですか?ヴォルフさんのために愛情いっぱい注ぎました!美味しか「まだ食ってねぇよ!少し黙っとけ!」」


外野がうるさい。


うるさ過ぎて全然食えん。


ようやく嬢ちゃんが黙ると俺もぷりんを食う。


「おぉこりゃうめぇ「なんですの!?これは!?」」


縦ロールが立ち上がっていた。


「シータさんこれはプリンと「これ、まだありますの?ありますわよね?ね?」」


縦ロールが嬢ちゃんの肩を掴みブンブンと揺らす


俺もまだあるなら食いてぇが、言える雰囲気ではない。


「シータさん、すいません。まだ他のは作ったばかりで冷えて無くて。明日には出来るかと」


縦ロールはがっくりうなだれる。


「ならばせめて...明日の分を増やしませんこと?そうしましょう!材料は十分にございますの?何が必要ですの?ワタクシの家の者に買わせに行きますのでぜひ!勿論お代は結構ですの。1月分程度なら今すぐ買いに行かせますわ。厨房はどちらですの?」


女ってなぁ、皆あんななんだな...






明日は学院も休みってことでダンジョン体験に行くことにした。


勿論俺も同行する。


放置してもどうせ行っちまうんならついて行ってフォローする方がいい。


ロイ坊も縦ロールも行くって事で4人パーティだ。


「出来ればもう1人欲しかったですわね。」


縦ロールはわかってる。


伊達に公爵ではないと言う事か


「なんでですか?4人でも上層ならむしろ過剰戦力のように思いますが。」


嬢ちゃんはやっぱ知らんかったな。


ロイ坊も頭の上に?がついてやがる。


「ダンジョンってなぁ、5人パーティが基本なんだよ。獣魔なんかも含めて5人までしかボスフロアには入れねぇ仕組みだかんな。ボスフロアに入らないならいいけど、経験値的にはボスが1番ウメェかんな。」


ついでにいうと地下1-10階までが上層


11-20階までが中層


21階以降が深層ってな扱いでフロア毎に必ずボスフロアがある。


目安にしかならんが基本一階降りるごとに適性レベルが1上がる。


んなもんで1階なんかはロイ坊がきてもまず大丈夫だ。


中層入り出来ればcランク


深層入り出来ればBランクだ。


ついでに俺のレベルは18


攻略階層は17階だ。


1人で行っても恐らく上層なら問題ない。


そう思っていた...





ーーー今ダンジョン前に昨日の4人で集合している。


嬢ちゃんとロイ坊は夜にダンジョン用の魔術を習得したって事で気合い充分


縦ロールは今日も縦ロールだ。


朝1番に冒険者ギルドへ赴き全員の冒険者登録をすませ若干興奮気味だ。


縦ロール以外は。


「いくら初心者とはいえ、このホルダーはないですわ。もっと格好の良いものにしてくれればいいと思いません?」


冒険者になると首から下げるホルダーが配布される。


クエストの難易度や、回数、ダンジョンに潜ったら潜った回数や階数などでランクが上がる。


ランクが上がると受けれるクエストの範囲が広がり、料金も上がる。


初心者のホルダーは銅だ。


Eランクの証


「初っ端からカッコいいのになってたら上に上がる楽しみがないってもんだろ?結果さえ出せばホルダーも変わってくんだ。今は我慢してくれや」


縦ロールは不満気な顔だが


「それもそうですわね。それではヴォルフさん、本日の指揮と目標をお願いします。」


これは事前に決めてた。


「今回は様子見だ。まずはダンジョンに慣れてもらうのを目的としている。あとはロイ坊のレベル上げだな、ロイ坊のレベルは現在2、公爵様はレベルが8だったな?目標階数は5階だ。」


ロイ坊はまだレベル2だ。


年齢相応だが、逆に上層でもレベル上げがしやすい。


縦ロールはこの年齢にしちゃあ高レベルだ。


だが今回はレベル上げに参加させず、違う目的がある。


「ヴォルフさん、公爵等とお呼びにならずに結構ですわ。今はワタクシ1冒険者ですの。お好きにお呼びになってよろしいですのよ?」


おうおう、もう冒険者気取りか。


まあ気持ちはわかる。


なんたって初めてのダンジョンだかんな。


「ほんじゃ縦ロール「縦ロール!!?」おめぇの目的はちっとばかし違う。今回のリーダーはおめぇだ。その魔眼はダンジョンとの相性がいい。ダンジョンには罠があるが、全てダンジョンの魔力によって生成される。その魔眼があれば性質もわかるし、次の階層を見れば魔力の濃度なんかでどの程度のモンスターがでるかもある程度判別がつく。なによりこのメンツで1番冷静だ。後は現場慣れする必要があるって事で、今日は指示出しは基本おめぇに任せる。」


縦ロールはなにやらショックを受けてるが気にしねぇ。


自分で言ったんだ。撤回もさせねえ。


「次にロイ坊、今日は3階までは前衛兼中衛だ。槍を渡すからまずはしっかり当てる事だけ考えな。フォローはするから安心してやれ」


ロイ坊は頷く。


恐らくは武器なんか持った事はねえだろうに、いっちょまえに構えてやがる。


「んで嬢ちゃんは中衛、前衛のロイ坊と後衛の縦ロール、どちらがピンチになっても回復や結界で守れるようにどちらにも気を配れ。まあ心配はしてねえがな。」


すると縦ロールが口を開く


「それでヴォル...いえ、犬ッコロはどのような配置に?」


こいつ!!


てめえでどんな呼び方してもいいって...


「俺は犬じゃねえ、銀狼族の狼だ。」


するといつもの笑みを浮かべながら


「あらぁそうでしたの、ワタクシとした事が間違えましたわ。それではコロ、と呼びますわね。あぁいい響きだこと。これはもうコロに改名した方がよろしいんではなくて?勿論、ワタクシの事は楽しみロールとお呼びになって頂いて結構。ですがワタクシも変えるつもりはありませんからご理解下さいませ。」


こいつ...まぁいい。


口で勝てる気はせん。


「それでいい。俺は遊撃だ。基本的にはロイの近くでフォローするが、全体を見て状況によって勝手に動く。縦ロールは俺がいないものと思って考指示していい。もしも致命的な間違いだと判断したら俺が止める。それまでは自由にやんな」


あくまで俺は臨時のメンバーだ。


この3人で上層を突破できるようにならないと意味がない。


「コロも存外考えてますのね。ではそれでいきましょう。リリィさんもそれでいいですか?」


リリィは手をあげる


「私もヴォルフさんにあだ名考えていいで「ダメだ」」


ぜってぇダメだ。


許可できん。


「僕はそれでいいと思う。シータさんはとても賢いしヴォルフさんはこの中で唯一の経験者。リリィがいれば怪我も治してもらえるしね。」


ロイ坊も頷く。


「んじゃいっちょダンジョントライしてみるか!」








ーーーそうしてダンジョンに入っていった4人


その後ろからついてくる人影に気づく事もなく意気揚々と進んでいくのだった


作者は牛乳プリン派です。

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