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パスタ作ります!

宜しくお願いします。

銀狼族


ヴォルフ・フェルザード


28歳独身


身長は2mを越す長身


彼は犬ではなかった。


銀狼、つまりは狼だ。


嘘か真か彼らの祖先は神獣のフェンリルだという。


誇り高く、強靭な肉体を持ち例外なく風の魔術適性を持つという。


そんな彼はCランク「ウォーウルフ」の冒険者のリーダーをしているそうだ。


他のメンバーは全て人族


彼だけが獣人で、彼がリーダーをしている。


あれから3カ月が過ぎたが、週に一度は会っている。


ケビンの護衛として。


正式にケビン商会の護衛にウォーウルフが雇われる形になった。


ケビンにリリィがお願いした事が理由の一つだが、ケビン商会では護衛を毎回臨時でギルドに依頼していたがヘレンが今回の件で不安に思った事が大きかった。


ウォーウルフとしても安定収入を得られ両者にメリットがある形で収まる事になった。




もちろんこの3カ月でリリィは猛烈にアタックをする。


しかし1歳の子供に28歳の青年が真面目に対応するわけもなく関係を進めるはずもない。


そこで前世の記憶からリリィは新たな作戦にでた。




「ポールさん!新しい料理に挑戦したいのですが、お手伝いしていただけませんか?」


そう、男を落としたければまずは胃袋から作戦だ!


このアーデ家コックを勤めるポールさんに協力を要請した。


なんせリリィは自炊すらした事ない14歳だったのだから、知識はあっても作れる自信はなかった。


「新しい料理たってなぁ、リリィお嬢様は何を作りたいんで?」


「これから挑戦する料理の名前は、パスタといいます!」




この異世界に来てから毎日食事をとった。


毎日三食、この辺は日本と変わりない。


しかし、食卓に並ぶのはサラダ、お肉、スープ、パン。

基本これだけだ。


日本人の私からするとお米が食べたい気持ちはある、しかしないものは仕方ない。


でも毎食パン正直飽きてしまった。


この世界のパンは非常に固い。


もしかしたらアーデ家に出るパンだけが固い可能性もあるが、ふわふわの食パンは出てこない。


そこで新たな食文化を浸透させたいと一石二鳥な作戦考えたのだ。


パンがあるという事は小麦粉もあるという事。


うろ覚えだが小麦粉、卵、水、油だった気がする。


しかし分量が全くわからないのでポールと相談し数種類パターン作成する。


「リリィお嬢様、そのパスタとやらは生の卵を使うんで?腹ぁ壊しちまいやすぜ?」


ポールの言う事は最もだ。


特にこの後の調理法を知らず、熱を加える事を知らなければそう指摘するだろう


この後熱を通すとはいえ、この国の卵がどれほど安全かはわからないため念のため浄化の初級を使用する事にする。


「ほぇー!見事に魔術を行使されますね、本当に魔術刻印を複数お持ちで。大したもんだ!」


材料を捏ねた後確か数時間寝かせるんだった...はず。


時間もわからないためこれも複数パターンで作ろう。


寝かせ終わった生地を切るも、どれくらいで切っていいかもわからない。


ソースによって変わるんだろうけど...これも複数パターンを作ろう。


うどんに近いサイズから、素麺に近いサイズまで複数切ってもらう。


「麺にスパイスを混ぜ込んでも美味しくなりそうだけど、ここはシンプルに混ぜないので今回は作ります!今回のが美味しいと思えたなら今後改良してもらえると嬉しいわ!」


「未だにそのぱすたとやらがどんなもんになるのかも全くわからないですが、まあ美味かったなら改良しやすよ。」





そうして思考錯誤したものに対し、ソースは二種類用意した。


トマトベースのミートソースに、ペペロンチーノだ。


オリーブオイルが無かったので謎の癖の弱い油で代用している。


強いていうならサラダ油に近い気はする。


オリーブ、この世界にはないのかなぁ。


あるといいなぁ。


たらこはないのかな?


でもそもそも魚料理自体が出ないから、ここは海とは離れてるんだろうなぁ。


食べたいなぁたらこパスタ...




そうして完成したパスタ。


ミートソースも、ペペロンチーノも指示しポールに作ってもらった。


ソースだけ食べると少し濃いめだがなかなか上々ではないだろうか?


そしてパスタと混ぜ合わせ、食べてみる。


「美味しい!思ったよりモチモチしてる!」


記憶にあったパスタよりはるかにモチモチしている。


これが小麦粉の影響なのか、それとも卵か、はたまたほか材料のせいなのかはわからない。


いや、家でしか食べてなかったから乾麵と違いかもしれない。


「本当ですかい?見た目は、まあいいんですがどうも食いづらそうですが、ほんじゃあっしも食いやすよ」


この国に麺という文化はない。


小麦粉があれば誰でも思いつきそうなものだが...この村にないだけで王都などにはあるのかもしれない。


「どぉ?美味しくない?」


「これは、不思議な食感ですが、美味いです!濃いめに作ってくれと言われたソース上手く絡んで美味い!美味いですぜっ!」


「いける?お父様やお母様、ロイ兄にヴォルフさんにも美味しいと言って貰えるかな?」


「あぁこいつは美味い!早速今晩の食卓に並べましょう!しかしリリィお嬢様はこれをどこで知ったんです?あっしは王都で料理の見習いをしてた頃からこんな料理を見た事も聞いた事もないんですが...」


しまった!なんてことにはならない。


恐らくこの料理を作ったらこう聞かれると思っていた。


なので事前に作戦は練っていた。


「これよ!こないだお父様に買ってきて頂いた本の中に他国の料理が載っていた本があったの。ソースはこちらで考えたのだけれど、パスタのざっくりとした作り方は書いてあったわ!」


当然そんな内容が書いてあるはずもない。


しかしその本は存在する。


なぜか?その本に自身で書いたページを追加したためだ。


予め他国料理が書いてある本を市場で購入してもらい、その本が一点物であることも確認済み。


筆跡は他のページの字からなぞらえて、そっくりに作成。

元々作りの浅い本だったのでページを追加するのも容易だった。


これで問題ないはず!


ついでにいくつか他麺類を記入しておいた。


ラーメンやらうどんなんかもこれでできたらいいなぁと思って。


思惑通りポールは食いついた!


「そんな本が!あっしにも見せてくだせえ!」


やっぱり。


ポールに最初に話したのは大正解だ。


これで他国の料理も、うどんやラーメンも出来る日は遠くないかもしれない...


これからの食卓が楽しみだ!!



「お父様、本日はポールさんと一緒に新しい料理に挑戦しましたの、以前頂いた本を参考にオリジナルを加えたものです。美味しくできたと思うのですが、見た目が斬新ですので受け入れずらいとは思うのですが是非食して頂きたいです!」


前置きは大事だ。


何も言わずに食卓にパスタが出たらケビンはともかくロイは食べない可能性がある。


いや、絶対に食べない。


ロイはお肉ばかり食べてスープやパン、そしてサラダはほぼ残す。


なので一口目を食べて欲しかった。


妹が美味しいといえば、きっと一口は試してくれるはず!


1番最初口にしたのはケビンだ。


「これは...美味しい!モチモチとした食感にこのトマトソースがとても合っているね!」


口の周りにミートソースがべっちゃりだ。


そうか...スプーンもナイフもフォークすらもほぼ日本一緒の物があっても食べ方はわからないのだ。


ポールさんは器用に食べてたから失念していた。


「お父様、これはパスタという料理だそうです。そして食べる際はこのスプーンとフォークで巻いて食べるのが上品との事ですわ!」


後でページ足さないとなぁ。


食べ方かぁ、案外大事かもしれない。


仮にこのパスタが流行ったとしよう。


するともしかしたらパスタをラーメンのように啜るのが上品な食べ方、という常識が生まれるかもしれない。


なんとなくそれはいやだった。


「リリィ、これ美味い!もうないの?」


きっと話しを聞いてなかったのだろう、ケビンと同じく口の周りをミートソースがべっちゃりついてるロイが言う。

年相応で可愛いのだけれどそれはダメだ。


認められない。


「あるんだけど、今食べたのはミートソースパスタって言ってトマトと挽肉のソースなんだけど、他のはペペロンチーノって言って少し辛いよ?」


そう言いつつロイの口の周りをフキンで拭う。


ロイは辛いのは食べれない。今日は試作といった意味合いが強く、量はそんなに作ってないのだ。


「あらあら、そんなにこのみーとそーすぱすたが気に入ったの?ならこちらと交換しましょうか?」


そういうとヘレンがミートソースとペペロンチーノを交換した。


リリィは気付いていた。


ヘレンがミートソースもペペロンチーノも一口ずつ食べたあと、ペペロンチーノをすぐさま完食した事を。


そしてロイのペペロンチーノを狙っていた事を。


ヘレンは食事には敏感だ。


以前ロイがヘレンの隠していたクッキーを食べた時に丸々3日口を聞かない程にヘソを曲げた事がある。


結局ケビンがクッキーを大量に購入した事で丸く収まったが...。


そうかヘレンはペペロンチーノがお気に入りか。


「ロイ兄、明日はロイ兄が好きそうなナポリタンってパスタを作るから食べてもらえるかな?」


当然答えはイエスだった。






これはきっとヴォルフさんも気に入ってくれるはず!


リリィは密かに期待を膨らませていた。

作者はミートソースが1番好きです。

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