家出します!
ちょっと短めです!
リリィはあれ以来屋敷を出ていない。
2週間後に迫った皇太子様の誕生祭にも行かないと言っている。
王様との一件以来
僕とリリィは口をきいていない
「なんで!?リリィ、そしたらここまで繋いでくれた皆の想いはどうなるの?」
「ロイ兄こそわかってる?ヴェルガさんを殺したら、そのヴェルガさんを守り続けた銀狼族の想いはどうなるの?ヴェルガさんは皆を守りたかっただけだよ?」
「リリィ殿、それではシータ嬢のご家族は石のままになってしまう!その点はどうされる?」
「それは...まだわからない。」
「ならば!「でも、だからヴェルガさんを殺すのはおかしいよ!他にも方法があるかもしれない。探そう?」リリィ殿...石化は解いて時の牢獄は維持する魔術など存在せぬ!仮にあったとしても問題の先送りにしかならん!」
「でも!そのヴェルガさんは強いんでしょ?魔術を封じられてもマルコさんを圧倒する程に。そんな相手と戦ったらロイ兄やヴォルフさんはスキルを使うかもしれない!使ったら今度はロイ兄を殺す?ヴォルフさんを殺す?私はそんなことできない。きっと私も銀狼族の人と同じ事をする。私が2人を守る!ヴェルガさんも同じなんだよ...どうしてそんなに簡単に殺そうってなるの!!」
「ヴェルガはスキルに負けたんだ。俺もロイも負けねえし、スキルは使わねえ約束する。」
「嘘!私が危険になったら、皆が危険になったら絶対に使う。事実ロイ兄は約束してたのに使った!信用できるわけない!」
「うん、約束は...できないね。僕は誰かが危険なら使うと思う。だから使ったら、僕が暴走する前に...」
バチンッ
音が鳴り響いた
リリィが僕を叩いたのだ。
リリィは泣きながら言った
「ロイ兄、それ以上言ったら許さない。私は誰かが死ぬかもしれない危険な戦いに行くつもりはない。誰かも死なせない。王様?私が行かない場合の未来がわかりますか?」
王様は答える
「100%全滅だ。現状その未来しか見えない。最も色濃い未来だ。そして放置していても必ず最悪の未来は訪れる。既に末端とはいえヴァイオレット家の1人を解呪した。少しづつ広がり、いずれはマルコの呪いも解ける。そしてヴェルガは復活する。それもそう遠くない未来だ。時期は選ぶ未来によって異なるが最短で1年もないな。」
リリィは顔が青ざめ、膝を折る
「私が...私のせいで...?」
するとすぐさまシータが間にはいる
「リリィは悪くありませんの。頼んだのはワタクシですわ。貴女は戦わなくていい。そしてその絶望ワタクシが潰してきますの。安心して?ワタクシこう見えて悪運は強いんですのよ?」
シータは笑って言うがリリィは頭を振る
「いやっ!シータがいなくなっちゃうなんて嫌!誰も悪くないのに、なんで戦わなきゃいけないの?」
シータはリリィの頭を撫でて答える
「世の中にはどうしようもないことも救えない話しもございますの。今回はそれに当たっただけのこと。それでも選ばなければなりません。リリィ、貴女はとても優しい人。賢くて強い人ですわ。だけど力があるから戦わなきゃいけない道理はございませんの。貴女が戦わないなら滅びる?それなら滅んだ方がマシですわ。ワタクシがそんな未来を変えてみせますの。安心して下さいまし」
シータはそう言うが僕は納得できない。
リリィはそのあと一言も話さなかった。
あれからずっと部屋に閉じこもってる
母さんが部屋に食事を持って入るも半分も食べない。
シータも何度も足を運んでくれたが変わらない
夜になるとうなされているようだ
起きると泣いている
リリィが心配だ
でも僕とは口も聞いてもらえない...
アレスとダンジョントライする。
ダンジョンなら魔術の練習にうってつけだからだ
僕の魔術は勿論、アレスも合成魔術に挑戦している。
アレスは言う
「思えばリリィ殿には頼り過ぎていたのだ。外見のせいか、落ち着いているせいか、2歳を迎えたばかりの幼女ということを失念していた。そしてリリィ殿が言う事も一理はある。」
アレスが言う
でも
「僕はそうは思わない。僕がヴェルガさんなら殺して欲しいと思う。誰かを殺す前に。愛する人に手を出す前に。」
アレスは首をふる
「簡単にはいくまい。我も仮にロイがそうなったら殺せるとは思えぬ。何か他の方法を...と思うであろう。」
アレスにだけは言おう
友と言ってくれたアレスにだけは
「アレス、このままリリィが来なかったらどうなるかと唯一の対処法を王様に確認したんだ。聞いてくれるかい?」
アレスは顔をあげこちらをみる
「手立てがあるのか?それならば先にいえ!ふぅ、陛下もお人が悪いな!」
そうじゃない
そうじゃないんだ...
「ヴェルガの封印はシータが時魔術で破れるようになるらしい。そしてヴェルガを倒せる唯一の方法は、僕の第3段階までの鬼化だ。鬼化に呼応して魔剣ブラドも力を増す相乗効果でヴェルガを倒せるに至るんだけど。相乗効果は鬼化の暴走も強める。人で無くなるらしい。意識を保てるのはおよそ5分といったところらしいから、ヴェルガを倒したら僕を殺してくれるかい?」
アレスは答えなかった。
「こんな事を頼めるのはアレスだけだ。僕の唯一の友達だからね。時の牢獄を破り魔力の足りないシータでは僕を殺せない。近距離戦しかできないヴォルフでは暴走で殺すかもしれない。アレスだけなんだ。」
アレスは僕を掴んで言う
「そんな事...聞きたくなかった!!なぜそんな事を言う!友だから?友に殺せと言うのか?それならば我も国が滅ぶのを選ぼう!」
ごめん。アレス。
でも王様が言ってたんだ。
「僕も死にたく...ないよ?アレスにだってこんな事言いたくない。でもね、死んじゃうんだって。父さんが母さんがリリィが皆が。」
アレスが首をふる
「そんなわけない!そんなわけなかろう!陛下だって言ってたではないか!未来は不確定で見えなかった未来になる事もあると!」
そうだね
だけどね
「そう、細かな未来ならそう言う事もあるって。だけどリリィが行かないと言ってから他の道が全部消えて、滅びの道しかないって。僕の鬼化の話しをしたら小さいけど、確かに全滅をさける道が見えたって。もう何度も何度も未来を見たって。そう...言ってたんだ...他の可能性なんて一個もないって...そう言ってたんだ。だから!アレス、頼むよ!君しかいないんだ。どうせ皆死ぬなら、皆を守るために死なせて欲しい!僕を人殺しに、鬼にしないで?」
アレスは泣いていた
いつのまにか僕も泣いていた
「ずるい...ずるいぞ...そんなの...我が断れないと知ってて...そんな役目を押し付けて...我はそんな事をするためにロイと友になったのではない!」
ごめん...
本当にごめんね...
屋敷に帰るとヴォルフさんがいた
「よお、辛気臭え面してんなロイ坊!」
パスタをずるずる食べながら言っていた。
「うん、ちょっとね。魔術の特訓がうまくいかなくて...」
ヴォルフさんは僕の頭を撫でて言った
「嘘が下手くそだな、ロイ坊。まあ男は強がる生き物だかんなぁ、仕方ねえか。」
うりうりぃ!
そんな事言って僕の頭を撫で続けた。
「ロイ坊1人だけ死なすわけねえだろ?俺が代わってやれねえのが残念だけどな...暴走したお前がアレスに近づけねえように抑え込んでやる。一緒にいってやらぁ!そう言う事だろ?」
ガシャン!
後ろから音が...
リリィ?
「やだよぉ。2人が死んだら私は...私は...ぁあああああああああああ!!」
2週間ぶりに見るリリィはやつれていた
僕とヴォルフさんを抱きながら
リリィはいつまでも泣き止まなかった
ーーー翌日
リリィは屋敷からいなくなった
1つの魔具と
ケルベロスの腕輪を持って
次回、ようやく本命スキル活躍!(予定)