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天級魔術使います!

思った以上に進めずすいません。


地響きで目がさめる


そこはボスフロアだった。


夢じゃあ無かったな。


片足は無いままだ。


寝てる場合ではなかった。


どうなった?


周りを見渡すとすぐ近くに嬢ちゃんとポチの姿が


ロイ坊と縦ロールはどこに?


まさか...


2人だけでケルベロスに?


なんて無茶を!


くそっ!


こんな時に足がねえなんて、這ってでも、せめて囮に位には...


そう思っていると嬢ちゃんに止められた。


「信じて」


何を言ってる?


そう思ったが次の瞬間にはケルベロスを撃破していた。


あぁ


俺が寝てる間にうまくやったんだな。


あれだけの化け物を相手に1人の死者を出すことなく...


本当に大した奴らだ。










ポチの野郎が寝てる間の事を全て説明してくれる


無茶、無謀、大博打


聞いてるだけで成功するとは思えねえ作戦だ


やがてロイ坊と縦ロールは戻ってきた。


なにやら気恥ずかしそうにしてる縦ロール


こりゃぁ空気的にいじってやらねばならんな?


盛大に盛り上げてやろう。


せめて今だけは悲しい代償に目を向けなくともいいように...







やがてフロアにボス討伐報酬が出現する。


このダンジョンが出来て300年と言われているが、このフロアを攻略したのは初めてだろう。


前任者の呪いのおかげでクリアできたようなもんだがな。


棚からぼた餅てなぁこの事だろう。


ぼた餅にしては何度死にかけたかぁわからねえけどよ...とんでもねえ餅だった。


「バタッ」


あ?


ポチの野郎が突然倒れた、ん?あぁ


当然くるよな。


どんだけのレベル差があったかわからねえが


レベル酔いだ


またここで眠っちまうのか...よ...










...どんだけ寝てたんだ?


今度はすぐに理解できた、あぁ身体がくそだりい。


その上空腹がとんでもねえ。


レベル酔いは今まで経験したことは何度かあるがここまでのはねえな...


以前に強力なボスをパーティで討伐した時に丸々1日寝てたことぁあるんだが。


周りを見渡すと全員寝てる


縦ロールとポチはわかるんだが...


ロイ坊と嬢ちゃんはなんでまた...


俺よか高レベルだろうが!


つかなんで嬢ちゃんは俺にくっついて寝てる?


まあいいんだが...こうして落ち着いてみると嬢ちゃんはべっぴんだ。


他じゃあ見た事なんてねえ位に。


それにいい匂いだ。


ずっとダンジョンにいたってのに。


噂で聞く大聖堂の聖女もここまでではあるまい


中身は2歳とは思えねえ程に賢いし


口さえ開かなければ文句はないんだが...


なんにしたって早く俺よりいい男を見つけてもらいてえもんだ。


俺?


俺は中身が2歳児の幼女に手ぇだすほど落ちぶれちゃいねえ。


面だけ見てると危うい場面はあんだがな。


とりあえず何故か腕枕を強要されてたので剥がして離れる。


するとロイ坊も気づいたのかゆっくりと起き上がる


「よう、目ぇ覚めたかよロイ坊。」


目を擦りながらロイ坊は答える


「おはようヴォルフさん、ようやく起きたんだね。僕はみんなが起きるまで寝てようと思ったんだけど6回は起きちゃった。結構眠りは深い方だと思ってたんだけど。」


6回!!?


いや待て待て


おかしい


「ちょっと待て、数え間違えじゃねえか?」


ロイ坊は笑っていう


「そんなの間違えないよ。バッチリ6回。それも全部かなりぐっすり寝れたよ。」


俺ぁ頭を抱える。


多分ロイ坊も初回の眠りは1日以上寝たはずだ。


一体何日経過してる?


マズイ!!


全員叩き起こさねえと


いや、その前に聞いとかねえといけねえことがある


「嬢ちゃんはいつからこうしてた?コイツも何度か起きてるんだろう?」


嬢ちゃんを指差しながら言うと、ロイ坊は苦笑いだ


「リリィは眠りが浅いので多分僕より何度も起きてますよ。タイミングがあって1度少し話したんですがちょっと話すと「勿体ないから」といってそのまま寝ました。因みに腕枕の事については最初からです。一応腕枕してもいいかって最初に聞いてましたよ?」


あぁ


こいつぁお仕置きだな?


覚悟しとけよ?











全員を起こすとポチだけが未だ辛そうにしていた。


それと縦ロールが縦ロールじゃなくなってやがる。


コイツもとんでもねえ長い髪してやがったんだな。


「もう、早く戻りたいですわ。こんな状態を人に見られるとは...ヴァイオレット家の恥ですわ。」


あんな状況から生きてるだけでもとんでもねえ幸運だってのにコイツはなにを言ってやがる。


「はは、シータさんは髪を下ろしてても綺麗だから大丈夫だよ。むしろ新鮮でちょっと得をした気分だよ」


言われると縦ロールはみるみる真っ赤に


こいつらぁダンジョンで青春してんねぇ


まあダンジョン内で恋愛に至る男女は多いしな。


わからんでもないが。


「でも僕も早く戻りたいのは一緒だよ。何度も目が覚めてお腹がペコペコだよ。一応非常食をリリィが持ってきたのを何度か食べたけど1人で半分くらい食べちゃった。」


飯あったのかよっ!


まぁそうだな。


何度も起きてたんなら耐えられんわな。


俺なら全部食う。


「半分残してたんだ、とりあえずみんなで残りを食べながら状態の確認でもしましょうか」


嬢ちゃんは頭を撫でながら笑顔で言う


嬢ちゃんには起きたらゲンコツを見舞ってやったんだが、何故か喜ばれた。


本当は尻叩きでもしようと思ったんだが、やめだ。


嬢ちゃんはぜってぇ喜んで受け入れる


尻を叩かれて喜ぶ美女


そいつを叩き続ける俺


絵面的にも俺的にも色々厳しい





全員にビスケットが2枚ずつと固いパンが半分ずつ配られ、嬢ちゃんが土魔術でコップを作って水魔術で氷入りの水をいれる


器用なもんだな。


正直飯もそうだが水は助かる。


はぁ、生き返る...


「リリィさん、一旦全員のステータスを見せてくれません?恐らくはとんでもない事になってると思いますの。魔眼でみると全員の魔力量が飛躍的に上昇してますわ。」


縦ロールは髪を巻き巻きしながら言う


ついでに言うと嬢ちゃんに水魔法で髪を洗わせてもらってた。


ダンジョン内ってのに贅沢な魔力の使い方だ


嬢ちゃんは濡れタオルを全員に配ってもいた。


確かに全員そこそこに匂いはする。


特に俺だ。


まぁダンジョントライなんかしてるといつもの事だしそこまで気にはなんねえが、縦ロールの目線がうるさいので軽く拭ってはおく。


拭ったあとに嬢ちゃんがタオルを回収してったが、何故かめちゃめちゃ喜ばれた。


そんなに臭ったか?


「そうですね、じゃまずはシータさんから確認しますね。ステータスオープン!」


シータ・ヴァイオレット

LV52

時魔術適性LV4

水魔術適性LV2

風魔術適性LV2

スキル

魔力制御LV4

召喚陣作成LV2

瞑想LV2

extraスキル

魔力眼

鑑定

称号

深淵を越えし者


あ??


ちょ、ちょっと待て!


伝説の勇者なんかより遥かにレベルが高え!


何がどうなって...いやなんで縦ロールは冷静なんだよ!


「まあこれくらいは上がってると思いましたの。これくらいで驚いていたらこのあと大変ですわよ?称号は予想外ですが。一旦全員のを見てから話しましょう。」


コイツ...澄ましやがって。


伝説の勇者を越えているんだぞ?


ギルドで確認された最古の最高レベルでさえレベル41だ。


ギルドは300年も前からあるんだぞ?わかってんのか?


「凄いですねー!じゃあ全員そこに並んで背中を出して下さい!」


ちゃっちゃと済ませましょう?みたいなノリで始めんな!


リリィ・アーデ

LV67

光魔術適性LV5

水魔術適性LV3

土魔術適性LV3

火魔術適性LV2

スキル

魔力操作LV5

魔術付与LV5

強制回復LV4

強制復活LV4

extraスキル

診断

称号

深淵を越えし者

聖女



ロイ・アーデ

LV71

火魔術適性LV5

闇魔術適性LV5

スキル

剣術LV4

近接戦闘LV4

怪力LV4

直感LV4

威嚇LV3

魔力制御LV1

extraスキル

吸血

鬼化

称号

深淵を越えし者

魔王




ヴォルフ・フェルザード

LV56

風魔術適性LV3

スキル

近接戦闘LV4

闘気LV3

瞬足LV3

直感LV3

extraスキル

獣化

称号

深淵を越えし者




アレス・ブレイザード

LV50

土魔術適性LV4

火魔術適性LV2

水魔術適性LV2

風魔術適性LV2

スキル

魔力制御LV4

並列思考LV3

extraスキル

詠唱破棄

称号

深淵を越えし者






...俺の頭がいかれちまったのか?


レベルもスキルも軒並み超人、いや英雄越えだ。


もうどうにでもなれ...


ーーー


「ではワタクシから皆さんのスキル等を説明しますね?理由はお判りかとは思いますがワタクシのエクストラスキル、鑑定である程度わかるようですので。」


縦ロールは自信満々に言う。


「鑑定では生物の情報はわかりませんが、それ以外の物やスキル等の情報を鑑定して理解できるスキルのようですの。ワタクシにピッタリの理知的なスキルですわ!」


よほど嬉しいんだろうが、縦ロールがこんなに感情をだすのも珍しい。


「まずワタクシのスキルからお伝えしますわね。目新しい物は、召喚陣作成と瞑想、あとは全員についた称号ですわね。まず召喚陣から。これはレベル応じた魔物や魔獣を召喚して使役できるスキルですわね。まだレベルが低いので種類はそんなに多くはありませんが有用なスキルですわ」


ほぉ。


召喚スキルは珍しい。


持ってるやつぁ見たことねえな。


「次に瞑想、これはポピュラーですわね。瞑想する事で魔力を回復するスキル。現状のレベルですと10分で約1割回復できますの。ただし、その間は動けませんが。」


それは知っている。


まあ縦ロールとは相性のいいスキルではあるな。


気になるのは次だ。


「次は称号ですわね。称号は困難を乗り越えたり、何かを成し遂げた時などに与えられる者ですわね。今回はこのボスフロアの攻略で得た称号ですわ。ロイさんや、リリィさんは別の称号をお持ちですわね。レベルが一定の値越えたからか、或いは違う要因かはわかりませんがそちらの説明は後ほどさせて頂きますわ。」


いいですこと?と前置きを置く、今更なにも驚かねえっつんだ。


「称号、深淵を越えし者。ダンジョン内で80階層以下での行動時、魔力消費半分、攻撃時3割増し、防御時3割減。ですわね...つまりはここは...」


80階層!!


そもそもそんなに深くまで階層があったってのかよ...


10階層に満たないダンジョンだって多いってのに...


80階層...ねぇ。


「ま、まぁこれで皆さん共通の称号説明はおしまいですの。次はどなたが「我を頼む!」...ポチですわね」


ポチの奴はさっきから落ち着かない様子だ。


顔色は大分良くなったんだが。


「ポチは1番多くの適性を得ましたわね、これの条件などはわかりませんの。スキル並列思考を獲得していますわね、これは同時に複数の魔術行使やスキルの展開が可能になりますわ。LV3なら行使する魔術にもよりますが4つは使えるそうですわ。合成魔術なども可能だそうです。」


「よし!よしっ!!これでエクストラスキルが我の予想通りならとんでもない組み合わせだな?な?」


あからさまにげんなりする縦ロールに比べ小躍りでもしそうなポチ


まあどっちも気持ちはわかる


「ポチの予想なんてわかりませんわ。ただ、凶悪な組み合わせは間違いありませんわ。エクストラスキル詠唱破棄。適性内の魔術なら詠唱はいりませんわ。但し、刻印と違い魔力消費はそのままですし、詠唱破棄を使用すると魔力制御を用いても形状や増減はできず、規定値の魔術しか放てませんわ。って聞いてますの?」


ポチは雄叫びをあげていた


「ポチは置いておきますわね。次はコロでよろしくて?」


あぁと返事をすると早速始めた


まあ大体わかってるんだがな


「コロはまぁ、魔術の才能はございません。逆に戦士としては優秀のようですわね。元々持っていた近接戦闘以外を説明しますと、「あぁ、闘気と獣化だけで構わねえ。後は知ってる」そうですの。話しが早くて助かりますわ」


「闘気、このスキルを持ってるだけで王都の騎士団に入団できる程の戦闘スキルですわ。魔力を闘気に変換し肉体性能を向上させます。怪力や瞬足といったスキルとも併用可能で攻撃力、防御力、聴力といった全ての能力が向上しますわ。」


あぁ。通りで闘気持ちは冒険者に少ねえと思った。


王都にいけんならダンジョンに潜る必要もねえってこったな。


「次に獣化ですが。呼んでそのまま!獣になれますの!!コロにぴったりのスキルですわね!知能が若干下がり武器や防具なんかは使用できませんが肉体性能は段違いのようですわ。最も、丸裸になりますのでワタクシの前では「それ、本当ですか!!?」」


嬢ちゃんが会話に入ってきた。


俺もあんまし嬉しくねえスキルだなと思ってたところにむちゃんこ嬉しそうな顔して...


「ぜってぇ使わねー」


すると泣きそうな顔をして


「え!?なんでですか!!絶対カッコいいですよ!もふもふですよ?奥の手にするにしてもどんな感じかわからないと困りませんか?試しに今使ってみてはどうです?我ながら良いアイディアですね!今日私冴えてます。見せてもらえませんか?」


上目遣いでめんこいんだがな


だが断る!


「縦ロール次の説明にいっていいぞー助かった。」


ええええええ!!とうるせえ声がするが俺も縦ロールも気にしない


「それではリリィさんとロイさんですわね。まず、ロイさんから、適性レベルが最も高くそれも2つ。これは吸血により火が、魔剣の覚醒によって闇が上がりましたの。ですがロイさんにはそこまでの魔術の才能はありません。上級魔術刻印が付与されている闇はともかく、火は間違いなく使わない方がいいですわ。威力の調整や方向を調整等恐らくできません。規定値の魔術を放つことは可能ですがポチと違い方向等の微調整ができないと最悪自身を焼く事になりかねませんの。」


ロイ坊は見るからにしょげていた。


気にすんな


俺なんか魔術制御すら手に入らなかった


「ただしコロと同じく戦士系のスキルを多く持っておりますわね、魔剣との相性も良く恐らくは近接戦闘に置いてロイさんを越える方と出会う方が難しいでしょう」


パアッとロイ坊の顔が明るくなる


縦ロール、ロイ坊の扱い方うめえな


「増えたスキルですが、威嚇。これはあのケルベロスが使用したスキルですわ、人間種のみですが金縛のような混乱状態に陥りますわ。これも吸血によって得たスキルですわね。」


吸血すげえな。


ケルベロスが呪いにかかってなかったなら複数のスキルを奪えたのでは...いや複数のスキルを使用して縦横無尽に動くケルベロスには敵わねえな


「それから称号魔王ですが、これは魔術王の意味ではなく魔族の王です。効果は魔族と相対する場合、魔力消費半分、攻撃時3割増し、防御時3割減。因みに魔族は魔獣や魔物の他に魔人等も含まれますので。称号も併用可ですのでダンジョン内の80階層より上層なら無双できますわね?」


魔術の下手くそな魔王なんて初めて聞いたぜ!と言ってやりたい所だが


俺の方が使えないので黙っとく


「魔人?って聞いた事ないんだけど、どこかにいるのかな?」


ロイ坊は魔人を知らないらしい


いや俺も見た事なんてないけどな?


「過去の大戦で人族に敗れ、今はひっそりとどこかで暮らしている...なんて聞きますが実際はわかりません。ただ魔人は近接戦闘も強く魔術も素晴らしい腕前と聞きます。ただ人と違って絶対数が余りに少ないそうなので今後も会えるかはわかりませんわ」


そっかーと答えるロイ坊を置いて嬢ちゃんに向かう縦ロール


「リリィさんが増えたのは診断と聖女ですわね。診断はワタクシの鑑定の逆、と言えばわかりやすいかしら?生物の現在の情報を読み取れるスキルですわ。なんの状態異常をうけてるかやなんのスキルを持ってるかまでわかります。」


嬢ちゃんは「お医者さんみたいだね!」と呑気な事を言ってる。


「次に聖女ですが、光魔術の消費魔力が3割減、効果が2割増しですわ。それも常に。...それと」


こりゃぁ嬢ちゃんが魔力切れになるこたぁもうないかもしんないな。


レベルも上がって魔力量も増えただろうし。


ん?


「呪いや異常等を全て受け付けないそうですわ。次にケルベロスからあのスキル受けても恐らくは大丈夫です。問題は呪いを受け付けない、リリィさん。ステータスの強制回復等は残ったままなのですが、呪いは消えてます。つまり、すでにグロウアップは消失していますわ!!」


ああ!!?


だって嬢ちゃんでっけえままだぞ?


いや俺よかちっせえんだが


「え?私元のサイズに戻ってないよ?」


「これは言いづらいのですが、一度成長したものを戻す事は出来ないようですわ。強制回復等は残ってますがあくまで傷に対して。髪を少々切ってもよろしいですか?」


嬢ちゃんがいいよーというとすぐさま縦ロールがどこからかハサミを取り出す


それ、なんでダンジョンに持ってきた?


他にも必要なもんあったんじゃねえか?


「リリィさん、髪切れますよ。戻りませんよ?リリィさん、おめでとうございますわ!」


リリィはへぇって感じだった


実感がないのだろう


「それとリリィさん、目的の光魔術がレベル5になりました。天級魔術を使用できるようになりましたが、どうします?ワタクシ詠唱覚えてますが。今度に「今しましょう、まずはシータさんを治せるか試さないとね!」...お願いしますわ」


そうだ


嬢ちゃんの目的は天級魔術の使用だった。










「では早速詠唱をお伝えしますわ「待たれよ!」なんですの?ポチの出番は終わりましたの。もう帰っていいですわよ?」


ポチはそれでも引かない。


こいつ制約の事忘れてんじゃねえだろうな?


「違う!出鼻を挫いてすまないが、少し話しを聞いてもらえぬだろうか?詠唱なしで一度試したいのだ。成功すれば詠唱が秘匿されている呪文も扱える事になる。さすればヴォルフ殿もこの場で癒せよう?」


詠唱なしで?


馬鹿な事を。


そいつぁお前のスキルであって嬢ちゃんにはねえ...なんで縦ロールも嬢ちゃんも否定しねえんだ?


「...たしかに。ポチの癖に名案ですの。普段からそこまで頭が回れば諍いも減りますわよ?」


「ぐぬぬ...言い返せん。これだけ悔しい思いをこう日に何度もさせられるとは...我は妙案を言っただけなのに...」


「日頃の行いですわね。いいですわ、試しましょう。ですが負担はリリィさんよりも遥かに貴方の方がデカイですわよ?覚悟は良くて?」


構わんと自信満々のポチが言う


なんだなんだ?俺だけわかんねえのに話しが進むが、ここは口を挟まず黙っとく場面だろう


俺はポチと違って空気が読める男だかんな


「リリィさんは背中をだして、その背中ポチが...ポチ、やらしい顔はやめなさい。首を落としますわよ?リリィさんは魔力を全開で高めておいて下さいませ。」


ポチはデレっとした顔から「ひぃい!」と言って顔を青ざめさせていた。


まあ気持ちはわかる


嬢ちゃんは?が顔についてるが無防備すぎんだろうよ。


「リリィ殿、こちらからも魔力を全開で送る、今回は初めてで上手く加減はできぬが耐えてもらえるだろうか?」


「アレス、大丈夫よ。私今調子がいいもの。それこれが成功すれば呪文のわかる光魔術は使える事になる!絶対成功させるわ!」


準備はいいな?とポチが言うと嬢ちゃんが魔力は解放した。


魔力が濃すぎてこっちまでクラクラする。


こいつぁ当人達はキツイな。


「アレス、いくよ!」


「心得た!」


「「ディスペル」」


すると目が焼けるんじゃねえかって位に嬢ちゃん達が光って...光が消えた。


ん?


どうなんだ?


「足が...戻ってる...ワタクシの足が!治ってますわ!!」


縦ロールは泣いて喜び、近くにいたロイ坊が駆け寄るとロイ坊を抱きしめた


そこは嬢ちゃんにじゃねえのか...


「おめでとう、シータさん!これで呪いの制限なく行動できるし、家も元通りだ!これもシータさんの努力のお陰だよ!おめでとう!」


「本当に治りましたの...治りましたの!指先の感覚もありますの。本当に...なんとお礼を言っていいか...リリィ様、ロイ様。この度はワタクシをお救い頂き本当に感謝しておりますわ。ワタクシ、生涯をかけてお二人のお力になりますの。本当に...本当にありがとうございます。」


縦ロールは生まれてからずっとこの呪いの事考えねえ日はなかっただろう。


父親も母親も、一族全てが石になったのを屋敷に置いてあるっつう話しだ。


怖かったろう


救いの呪文が本当に効くのかも疑っただろう


使える奴も探し続けたろう


それでも、諦めずに探し続けたんだ


おめぇは立派だ


「シータさん、様付けなんてよしてよ。僕らはクラスメイトで、リリィはその妹。呼び捨てで構わないよ?それにシータさんが頑張ったから、僕らを見つけたから、諦めなかったから治ったんだ。僕もリリィもお手伝いはしたけど、それも全てシータさんが頑張ったからじゃないか!シータさんの努力の成果だよ?地上に戻ったらお家の人もみんなみんな治そう!よかったねシータさん」


ロイ坊。


お前はその年にして立派な男だな。


「シータさん、ううん。シータって呼んでもいい?シータさんヴォルフさんはコロ、アレスはポチって呼んでるじゃない?私達2人だけいつのまにか敬称ついてて、なんだか距離あるなぁって。でも私達あんな化け物も倒しきった戦友でしょ?パスタが大好きな食友でしょ?プリン大好きなプリン友でしょ?だから公爵家の御令嬢だけど、お互い呼び捨てでいいかなぁーなんて!」


嬢ちゃんは嬢ちゃんだな。


おめでとうも言ってない。


治るのが当然と疑ってもいなかったんだろうな...


まあ嬢ちゃんはそれでいい。


「それで、よろしいですの?ワタクシ助けられてばかりで...「シータがいなかったらここにいる全員死んでたと思うけどぉ?」わかりましたわ、リリィ、それにロイ。貴方方はワタクシの生涯のお友達、大親友、大戦友というやつですわね?あ、帰ったらまずはぷりんを食べましょう?ワタクシの家の者を癒すのは明日にして下さいますか?家の使用人に説明もしなくてはなりませんし。」


うめえけどよぉ。


まあいいか。


これで一件落着ってなもんだな。


「我は?おい、我はどうなんだ?」


うん、先に確認する事があるな


「ポチ、確認だが天級魔術でも詠唱なしで発動はできたんだな?」


「とんでもない疲労感はあるができるな。並列思考がなければあれほどの魔力計算は厳しかったやもしれぬが、同時に複数箇所から魔力の調整を行いこちらのスキルを無事共有できた。天級を日に何度もは我でもキツイな。」


うむ。


「嬢ちゃん、魔術刻印はどうだ?」


そこが1番気になる所だ。


「あ、刻印できてますよ?アレスはヴァイオレット家にこなくても大丈夫です。私は逆に天級魔術なのにそんなには。これも称号のおかげですかね?」


ケロっとした顔で言う


おま、マジでか!


ならポチを使えば全ての魔術を詠唱なしで刻印刻めんじゃねえか?


「あ、次はヴォルフさんでした。アレス、次は超級だから並列思考なしでもいけるかもよ?アレスなら多分楽チンだよぉー天級も出来ちゃう天才だもんね!」


うまいな。


嬢ちゃんもポチの扱いがわかったらしい


疲労困憊という空気を出しているが、これではポチの性格上


「勿論だとも!我を誰だと思っておる?我は公爵家が次男アレ「それじゃあ超級覚えたいの2つあるんだけど余裕だよね?ヴォルフさん用に創生呪文エクスヒールと毒とか状態異常を治すと同時に癒しも与えるオールヒール。本当は範囲型の超級エリアヒールと、規定時間癒し続けるリジェネヒールも覚えたいんだけど、流石にアレスでも厳しいかなぁ。天才でも限界があるかなぁ。」...できるとも!あぁできるさ!やってやるとも!我の力を見るがいい!!」










ポチは全ての超級を終えるとそのまま眠りについた。


結局4つの超級を刻印に刻み、俺の足も元どおり。


多分まぁたレベルあがってんだろうな嬢ちゃんは。


天級1つに超級4つだ。


まあもう驚かんがな。


「呆れましたわ。協会が秘匿している魔術をごっそり自分の物にするなんて。バレたら命を狙われますわよ?」


わかってて言ってんだろうな、縦ロールのやつ


「え?でも私達に勝てる人なんてそうそういないんでしょ?しかも私死なないし。」


そうだ


嬢ちゃん不死のまんまだかんなぁ。


そもそも素のステータスでどんな戦士よりも強そうだしなぁ。


「まぁそうですわね。まあそれよりコロはポチを担いで頂けます?とりあえず報酬が気になって仕方がないんですの。」


いいけどよ。


今ならスプーン持つようなもんだし


ようやく報酬まで移動することにした。












「オホォー!!こりゃすげえな!」


魔眼持ちでも鑑定持ちでもない俺でもわからぁ


こいつぁ宝の山だ


売ったら生涯暮らせるレベルを数回分てな代物がいくつもある。


これだから冒険者はやめらんねえ!!


いや?こんな思いした事ねえけどな?


「凄い、って物じゃないですわね。極上の魔石が複数に魔具が複数、どれもこれも気になる所ですが、初回特典のあの宝箱が気になりますの。魔眼で見ても鑑定をかけても罠はないようですが中身がわかりませんわ。」


一際金ピカ光る宝箱


あの宝箱だけでも相当な値段すんだろぉ。


「ほんじゃ一丁開けてみるか?」


中から出てきたのは...んあ?


腕輪?


3つの魔石が組み込まれた腕輪だ


装飾は大したこたぁない


「縦ロール、鑑定してくれや。」


「既にしてますわ、少々お待ちを...これは凄いですわ!というよりこれはこの世界の常識を覆しますわ!」


この変哲も無い腕輪がか?


「ふふん、聞いて驚いて下さいまし。この腕輪はケルベロスの腕輪。ワタクシ達が何度も死にかけたあの3つの超級魔術がそれぞれの魔石に組み込まれてますの!そして素晴らしいことが、使用者の魔力を必要とせず、消耗品でないということ!」


!!


あの魔術が使えるだと?


しかも魔力を必要としないってなぁ


どうゆうわけだ?


「シータ、超級3つ使えて凄いっていうのは伝わったんだけど。あんまり世界の常識が変わるって気はしないのよね。なにか秘密があるの?」


嬢ちゃんはわかってねえ。


いや俺も全部はわかっちゃねえんだけどな?


「リリィ、今この世界にある魔具は全て使用者の魔力を必要とするのですわ。魔石に詠唱呪文を加え、そこに魔力を流して制御することで初めて使用できる。だから当然魔術士でなければ使えませんわ。ですがこれは違う。あのケルベロスが放った全力の超級を固定化して誰でも使用ができる。そして魔石に溜まった魔力を消費するため使用者魔力も必要ない。一度使うと魔力の補充に丸々1日かかるようですが、それでも誰でも1日に3度の超級魔術が使用できますのよ?これが今ある魔具全てで行えるようになれば...世界は変わりません?」


そりゃ凄え。


レベルアップした今でも、まともに食らえば即死の超級魔術が俺にも使えるってのか!


そりゃあすげえ!


「なるほど!シータそれは凄いね!でもそうなるとこれを誰にって話しになるね。僕は一応魔力制御を覚えたし、火に関しては一応天級まで適性があるからいらないかなと思うんだけど、そうなると魔術の素養が少ないヴォルフさんが良いかなって思うんだけどどうかな?」


ロイ坊!


そら欲しいけどよ!


俺だってズバーっと魔術使いてえけどよ!


「ロイの言う事は最もですが、これに関しては誰に渡すかも含めて少々お待ち頂きたいんですの。というのも、この魔石の中の構造がどのようになってるか調べたくて...魔石の質はとてもいい物ですが、サイズ的に一度とはいえ超級を使えるように思えなくて...それになぜ魔力が回復するのか。使用者からの魔力で回復するわけでもなく...わからない事だらけですが、魔眼と鑑定をフルに使って時間をかけて内部構造の解析をしたいんですの。ですから身勝手ではありますが、ワタクシに一度預けて下さらないかしら?解析が終わり次第、また誰に渡すか相談というのはどうでしょう?因みにワタクシはコロに渡すので賛成ですわ。ポチは欲しがるでしょうが、魔術を複数利用できますもの。」


なるほどなぁ。


使う事しか考えてなかったが、縦ロールはその先まで見てたか。


確かにこれの構造がわかれば、再現もできるかもしれない。


問題はねえ。


そもそも俺は化け物退治後半寝てただけだしな。


「問題ねえよ。縦ロールに預ける。必要ならお前が使っても構わねえ」


「あら、コロは欲がないのですわね。解析のために何度かは使用するつもりではありますが、そのまま頂くつもりはありませんので安心して下さいまし。」


「ほんじゃまぁ腕輪はそれで良しとして、他の見てみるか!」










ーーーそうして俺らは報酬を確認し、ポチを担いで地上に帰還した。


ようやく一息つける


そう思って戻った地上は大混乱だった。


ようやく次回地上に戻ります。

予想以上に長くなりました。

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