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一回寝ます!

宜しくお願いします!

大博打とは言ったもののワタクシには勝算があった。


あの化け物は必ず最後はあの魔術を使う。


問題は最初にスキルを使用するかどうか


確率でいったら1/4


ですがこれも恐らくはスキルを初手で使用するはず


なんせロイさんの背中にはワタクシ、人間が背負われているのだから


それだけでは弱い、しかし先程から何度も結界によって超級魔術を防がれている


きっと同じ人間だ、警戒はする


さらに言えば先程のリリィさんへの攻撃後


あの化け物はピンチだった


全ての魔術を使い果たし、1分程度魔術が使えない。


襲われたら反撃手段がない状態でした。


それをあのスキルは見事に巻き返した。


絶対的な信頼があるはず


ならば、これは博打ではない


計算され尽くした勝利への方程式


けれどそれは伝えない


伝えたら敗北が決まってしまうのだから...









「おぉおおおおおおおおおおおっ!!」


叫びながら走るロイさん


ロイさんは勇敢なお方、自分しか勝算がないとわかっていても


あの化け物に向かっていくのはなかなかできることではない。


「きますわ、スキルです。ロイさん、走りながら水筒の準備を!」


わかったと返事が聞こえる


3、2、1。ほらやっぱりスキルですわね


「ヴォォオオオオオオオオオオッ!!」


寸分違わず先程のスキル


ワタクシが身動き1つ取れずにいると冷たい水が頭からかかる


すぐに異常は解けて伝える


「解けましたわ、次は何の魔術がくるか...火以外なら勝利ですわ。いいこと?ロックをかけたら必ずワタクシを置いていくんですわよ?」


わかってると返事が返ってくる。


ワタクシもこのあとの展開はわかってる


あとはお願いしますね?


「超級魔術、属性は風がきますわ!これで勝ちですわ。5秒したら放たれますの、ワタクシがロックと言ったらすぐに紐を切るんですのよ?」


やっぱり。


風だけが唯一複数の人間を行動不能にした。


威力は他に劣るものの最も広範囲だ。


絶対に風だと思っていた。


「大丈夫!シータさんも必ず逃げてね!」


ええ。


あとはタイミング。


ロックは通常は物体にかける魔術であって


生物にかける魔術ではない。


生物にかけた場合魔力によって反発されてしまうためほんの数十秒程しか固定できない。


魔獣なら数秒、比較的近い距離でないとかけられない上に数秒では割に合わない。


しかし相手はケルベロス


恐らくはコンマ数秒しか止まられない


だから通常の魔力より遥かに強く練る


残った魔力を全てこのロックにかける


それでも計算上は1秒しか止められない


しかしそれで充分


ケルベロスが超級魔術を放つ瞬間は何度も魔眼で見てきた。


放つタイミングも動作も全て一緒


なら


間違えるはずもありません


「ロック!!」


予想通り


ケルベロスは放つ前に頭を真上に上げ


そこから目標に向けて頭を下げながら魔術を放つ


まるでブレスのように


ならば真上を向いたタイミングで風の超級魔術を放てばどうなるか


そう


ボスフロアの天井が崩れ落石の嵐


この混乱状態なら必ずたどり着けますわ


あとは頼みまし...!?


「なにをしているのですか!!紐を切りなさい!!」


紐が切られてない!


「大丈夫!このままでも登れるよ!シータさんは軽いしね。」


そういう問題では...


「吸血するにもなにをするにもワタクシがいてはお邪魔ですわ、ここで構いません、下ろして下さいませ!全て終わってしまいますわよ!!」


そう、ここでワタクシを囮にしないと全て終わる


「なんとなくわかってたよ、シータさんの考え。このまま放置すれば落石で死んじゃうし、生き残ってもこれだけの原因を作った人をケルベロスが見逃すはずない。自分を囮にするつもりでしょ?」


な!?


「似てるんだよね、シータさん。うちの妹に。周りの事ばっかりで自分の事を後回しにして。だから置いてかない。暴れたらその分だけ僕がたどり着くの遅くなるから大人しくしててね?」


それでは駄目なのに...ほら


落石で多少時間を稼ごうと


ケルベロスはワタクシをターゲットにする


「いいから、信じて。もうちょっとだから」


ダメです。


もう、なにをしても


そう位置は動けずとも手足は範囲内なら動かせる


囮がいなくては単純に払われておしまい。


ほら


もう目の前に...あぁおしまいですわ


「スキル、鬼化!!」


え?


それは


「ロイさん!駄目ですわ!そのスキルだけは!!」


もう遅いよ?


笑って言うロイさんの歯が変化していた


そして


気付けば火の首に辿りついていた


「スキル、吸血!!」


なんで笑っていられますの?


ロイさん貴方は今、人を捨てたんですのよ?


それも忌み嫌われる鬼族に


吸血鬼になったんですのよ


「さぁ見せてみろ!お前の本当の力を!!ブラドォオオオオオ!!」


黒くて禍々しい闇が魔剣をとりまく


魔力反応はグングン上昇していく


既に魔剣の魔力はケルベロスと同格だ


これは予想通り


吸血をすれば魔剣は必ず力を取り戻すと思っていた。


ケルベロスから吸血で得られる力、それ自体は恐らくはそれほどでもないだろう


精々が火の魔術適性のレベルが少々上がる程度


もしくはなにかしらのスキルが手に入る可能性もあるが


そこは問題ではない。


かつて魔剣ブラドがかけた呪いがこのケルベロスにかかっている。


それもほぼ完璧な状態で


ならばその呪いを吸えばどうなるか


全盛期の力を取り戻すのではないか?


これがワタクシの本当の考察だった。


レベルではない。


言えば恐らくはリリィが反対するだろうと読んで、


恐らくはそこまで読んで魔剣の使い手をここに転移させたのだろう。


あとは簡単な話しだった


長い年月を呪いによって封じられ、疲弊しているケルベロス


全盛期の力を取り戻し、最強の魔剣


答えは簡単だ


一撃だった













ーーー

「なんで鬼化したんですの!!置いていけとあれほど言ったでしょう!?ロイさんは馬鹿なんですの?これではポチ以下ですわ!!」


怒りが収まらなかった


なんで?


あそこでワタクシを置いていけば鬼化せずとも倒せたはずだ


それは間違いない


「あそこで鬼化しないと、シータさんが死んじゃうでしょう?」


ヘラっとした顔で言う


ロイさんという方はこんなにも...


「それで良かったじゃありませんの!!元はと言えばワタクシが魔眼で余計な扉を発見したせいですわ!死んで当然ですの!」


馬鹿ですわ!


死んで当然なワタクシを生かして自分鬼になるなんて


「よくない。あれは皆で決めた事。ここを発見したのもちゃんとシータさんが警戒して周りを注意深く見てくれたおかげ。それで死ぬなんておかしいよ?」


ムッとした表情で言う


ムッとしてるのはこちらなんですが?


「それで貴方が鬼になればいいと言うんですの?それで妹さんは納得しますか?ご両親は?貴方を想う全ての人は?ちゃんと考えましたか?」


抑え切れない。


ワタクシは助けてもらっておいて何を言ってるんだろう


でも許せない。


あそこでワタクシをおいていけば...


「納得させる。死ぬよりはずっといい。生きてさえいればなにか方法はあるかもしれない。でも死んだら終わりだ。逆にシータさんは?ちゃんと考えた?」


なにを言って...


「ワタクシは両親も既にいませんし、使用人も極わずか。領地も事実上他の公爵家に任されております。ワタクシが死ん「ホラ!何も考えてない!」」


何も考えてない?


何も考えてないですって!!?


「シータさんが死んだら一族の呪いを誰が解くのさ!公爵家を復権させるのは誰がするの!?ハリボテの公爵家で未だ働いているシータさんを想う使用人の人は?全部置いて死んじゃうの?シータさんの命はシータさんだけの命じゃないでしょ?」


あぁ


この人は


ロイ・アーデという男は


「...それで、治すあてはありますの?」


ヘラっと笑って言った


「ないよ?これから探すんだ」


それじゃあとワタクシが言いかけた時


「だから一緒に探してくれるかい?」


多分その時のワタクシは酷い顔をしていたと思う


ポチが良くする口を開いたままのポカンとした表情


きっとそんな顔をしていたのだと思う


「それとも、鬼は嫌いかな?」


少し悲しげな顔をして言うロイさんにワタクシは思った


想った


こんな馬鹿な人を理解して


支えて差し上げられるのはワタクシしかこの世にいない、と


「喜んで!」



2人は握手をした。


長いこと手を離さなかった。


そして2人は忘れていた。


この場に他に3人いる事を。








ーーー


「もう駄目ですわ!お嫁にいけませんの。」


シータさんはしばらく俯いたままだった。


あの落石の際の衝撃でヴォルフさんは目覚めそこからの一部始終を全て見ていた。


その前の話しなどで情報が足りない部分はアレスが全て教えていた。


ヴォルフさん的には映画のワンシーンみたいで感動した、と言いつつひたすらそれをネタにし続けている。


必要以上に何度も言う度にシータさんから元気が無くなる。


もうシータさんがどんどん小さくなってるからその辺で勘弁してあげてほしい。


ロイ兄は多分素だ。


とはいえ年齢から考えて普通ではある。


鈍感という程でもないだろう。


アレスはもう本当にうるさかった


多分本当に感動して、素ではしゃいでいるのだ。


それがヴォルフさんと重なるのだからこれはもう一種のいじめ


新手のいじめだろう


私なら耐えられない


とは言えあれを見てロイ兄を叱る事も出来なかった。


ロイ兄が鬼化しなければシータさんが死んでいた


シータさんは恐らく転移してからずっと自分を責めていたんだと思う。


それに関しては私もロイ兄と同意見だ。


自分で罠を張ったわけでもあるまいし、自分が死んで当然はおかしい


だからここはロイ兄に言うべき言葉は一言


「ロイ兄、よくやった!お父さんとお母さんには一緒に謝ろう。私も出来るだけ説得するよ。」


ロイ兄はポカンとしていた。


「リリィはてっきり鬼より鬼のように怒るとおもってたよ。」


笑っていった。


鬼より鬼?


うるさい。


私だってちょっといいなって


ヴォルフさんにあんな事言われたいなぁって思ったりもしたんだ。


そこまで空気を読めない私でもない。


と全員でひとしきりはしゃいでいたらフロアの真ん中。


丁度ケルベロスがいた場所が輝き始めた。


「なにっ!?まだなにかあるのか?我はもう一歩も動けんぞ!」


やがて光は広がっていきフロア全体が輝くと中央に収束し直して


「あぁ、やったな。本来は1階層で見れるはずだったんだが。ボス討伐の報酬だ。基本は初回だけ特別性能が良いものなんかがもらえる。2回目以降に攻略されたボス報酬は階層に応じて固定の物になる。初回は上層でもそこそこの物がでるぞ!」


ボス報酬!


そんなものが!


でも


「それ呪われてたりしませんか?」


ヴォルフさんが笑って答える


「そりゃぁないな。報酬で呪いってなぁ残酷すぎるだろーよ。まあ今日の流れだと気持ちはわかるがな。」


そうしてお宝に近づこうとすると


先程まで倒れてて、報酬の言葉に勢いよく立ち上がったアレスがいきなり倒れた


「え!?呪い?罠?どうしよう魔力残ってない!」


私が慌ててると次にシータさんが倒れた。


するとヴォルフさんがフラつきながら言った


「あぁ。俺もか。大丈夫安心しろ、多分お前らはこの後すげえ体調悪いだろうけど数時間から1日で治る。気分悪くなったら無理矢理寝ろ。これはレベル酔いだ。急に上がると...」


ヴォルフさんも倒れた。



えぇぇえー!!


というかこのまま放置してるとケルベロス復活!!とかないのかな?


不安でしょうがないんだけど...あ、頭痛いかも。


痛い


痛い痛い痛い痛い!!


なにこれ!


めちゃくちゃ痛いんだが?


え?


呼吸するの辛いんだが?


横を見るとロイ兄も頭を抑えてる


どうやら鬼でもレベル酔いは防げないらしい


「ロイ兄」


「うん。」


「一回寝よう」


「うん。」










そうしてケルベロスを打倒した一同は寝た。


丸々2日寝た。


起きたら大騒動になるのだが


今はまだ知らない

寝る子は育つ

そういうこと。

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