表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

博打です!

アクセスが思ったよりあり非常に嬉しいです!

これからもよろしくお願いします。

扉を開けると三つ首の巨大な化け物がいた。


巨大な、と言って伝わるだろうか?


ヴォルフさんの身長でも1/5にも満たない


10m以上はある高さ


長く巨大な胴体


全長なんてわかんない。


とにかくでかい、巨大な化け物だ。


僕なんてちょこんと弾かれただけで即死だろう。


でも僕がやらなきゃ...


いつまでも守って貰うばかりじゃいられない。






扉を開け全員がフロアに入ると化け物はのっそりとゆっくりこちらに眼を向ける


視線があっただけで震えが止まらない。


「だ、だめだ、戻ろう。これは無理だ!作戦の立て直しを要求する!我は一旦戻る!皆も一度引き返せ!」


アレス君は足をガクガクさせながら扉に戻る


既に絶望は始まっていた。


「と、扉が開かない!!押しても引いても開かないぞ!」


え!!


それじゃあ作戦の根本から崩れる。


「全員落ち着け!!扉が開かないのはイレギュラーだがここで止まってたら間違いなく死ぬ。それもなにもできずにだ。全員で転移石まで移動する。俺がポチを担ぐ、ロイ坊が縦ロールを担げっ!リリィは全力で転移石までの最短の道を結界で覆え!急げっ!」


ヴォルフさんは流石に冷静だ。


そうだ、まだなにもしてない。


僕は失礼します、と一言かけるとシータさんを抱え全力で走った。


後からリリィ、動けないアレス君を抱えたヴォルフさんが走り出す。


スキルの影響かレベルの恩恵か


シータさんが軽い


本当に僕が走っているのか?と思うほどに早い


!!


なにか、くる!


「きますわ!ロイさん、右に飛んで!!全体右に移動!ブレスですわ、属性は火!規模は超級規模!」


シータさんが叫ぶと同時に僕は右に大きく跳躍する。


先程まで居た所は大きくえぐれ墨化していた。


結界で数秒耐えたもののやはり超級を上級結界では防ぎきれない。


それも範囲を広げているのだ、耐えられる方がおかしい。


勿論無意味というわけではない。


数秒耐えられる、というのは大きい。


それにあの結界がなければ跳んだこの先も同じ光景になってただろう。


直前に感じたのは直感スキルの影響か。


しかしどちらからくるとかなにがくるとかわからないと結局対処できない。


「全員なにかわかった事感じた事があれば出来るだけ簡潔にお伝えくださいませ。ワタクシは今わかった事ですが、超級規模の同じ属性は連続では使えない、という事がわかりましたわ。2-3分程は次射までに時間があるようで、っ!次来ます!これは...ダメです!!全員固まって下さい!リリィさん、広げた結界を1箇所に纏めて!位置はそこですの!全員急いで!!」


くるっ!


遅れて僕も死の脅威が迫ってるのを感じた。


「プロテクション!!」


リリィが叫ぶ!


僕の目からみてもわかるほどに魔力を込めている


だけど、足りない。


先程の火魔術で数が大きく減ったので、追加もしているがこの量では恐らく耐えきれない。


全員集まると同時にきた。


暴風の嵐だ。


結界が一気に破壊されていく。


残り1枚になった時、僕はシータさんをヴォルフさんに預けてリリィの前に立つ。


「ロイ兄!ダメ!なんの強化もかけてない!耐えられない!!」


耐えられるさ。


アレスが最初に扉を確認してくれたから作戦の変更ができた。


ヴォルフさんが指示を出してくれたおかげで全員動き出せた。


シータさんが攻撃を見極めてくれるから今も耐えられている。


リリィが全力で魔術を行使してくれるから全員生きている。


僕は?


僕だけなにもしていない。


魔剣なんて大層な物を手に入れても、何もしていない。


ずっとそうだ。


リリィに守られて


シータさんに助けられて


僕は...


ここで守らなきゃ、男じゃない!


最後の結界が破れると同時に魔剣を振りかざす


「マナドレイン!!」


マナドレイン


本来は対象に触れる事で魔力を吸い出す闇魔術の上級魔術だ。


だけどもう一つ、本来とは異なる使い方がある


魔術に直接ふれ、魔術の魔力を吸い出す事もできる!


これはセーフティエリアで散々試した。


できる!


「うぉおおおおおおおおおお!!!」


柄じゃない。


わかってるさ。


けどね、嬉しいんだ。


僕が皆を守るんだ。


そのためなら...


「ダメですわ、吸いきれない!押されてますの!」


やっぱり...僕じゃ...


「諦めるなロイ坊!気合いを入れろ!!」


「ロイ兄!回復は常にしている!あとちょっと、お願い!」


ヴォルフさんが僕を支え、後ろから僕に強化と治癒の魔術をリリィがかける。


期待されてるんだ。


もう...少し...


もう少しだけ耐え...


「......我らを守り、強大な敵を阻め!

アースウォール!」


僕の意識が消えかけたその時、目の前に大きな土の壁が立ち上がった。


これは...土属性?


「よくやったぞロイ!お陰で我の土魔術が放てた。この一発で魔力切れだが、これで...おぉおおおおお!!!」


見事に土壁は吹き飛び


僕らは全員フロアの端まで吹っ飛んだ。


辺りを見渡すと全員立ち上がっていた。


「流石はポチですの...カッコつけて中級魔術を詠唱省略等するから...まあお陰で助かりましたが。」


近くに飛ばされていたシータさんが僕の肩をもつ。


思った以上に超級魔術を吸い込みすぎて、僕の身体では吸い切れず上手く立てなかった。


「ロイ坊よくやった、その様子だと魔力酔いだな。数分で戻る、なんとか踏ん張れ」


魔力...酔い?


頭が割れそうだし足元がふらつく


だけどシータさんが支えてくれて立てている。


「それに目的の場所までこれましたわ。目の前には転移石、後は詠唱を...これは?詠唱が見え...ない...」


え?


見えない?


「そんなはずは...まさか...そりゃぁ」


ヴォルフさんが転移石を見るとやはり見えない様子だ。


まさか...


「フロアに入れば扉は閉まり、転移石は詠唱が隠されている。恐らくはボスを倒さねば転移石は...これが深層のボスフロアですか。」


たった2回の攻防でこちらの力を大半使用してようやく耐えた化け物を


僕らは倒さなければ帰れない...ここで死ぬという事だった。


「嬢ちゃん、魔力はどうだ?余裕はありそうか?」


リリィは笑顔で答える


「余裕です。まだ半分も使ってないですよ?魔術は惜しみなく使います。必要なら指示を!」


嘘だ。


リリィのあの顔は嘘をついている。


幾度となく見てきた嘘つきの顔、本当に嘘が下手だ。


「ならあんな犬っころ楽勝ですわね!まずは弱点を探ります。初級で構いません、広範囲に使える攻撃系の土魔術をお願いします。それとコロに強化魔術を。最悪足だけでも速くなれば構いませんわ。コロはリリィさんをフォローをメインに状況次第で離脱して下さい。ワタクシはここで魔眼を全開にして弱点を見つけます。この転移石周辺はあの犬っころも攻撃しないようです。お陰で多少は作戦を練れます。」


シータさんはいつだって冷静だ。


でもその作戦には僕が含まれていない。


「シータさん、第2案を。僕を使って下さい。リリィ、状況次第では無理をさせる。超級魔術一回分の魔力は残しておいて!」


言うとリリィは激昂した。


「ロイ兄!第2案はまだいい。でもグロウアップの使用なんて聞いてない!聞いてなかったの?それに既に呪われてるんだよ?複数の呪いが重なればどうなるか...天級魔術を習得しても治せないかもしれない!」


大丈夫、その答えはある。


「リリィ、ここで出し惜しみしたら全員死ぬかもしれない。僕の心配をしている場合じゃない。僕だけじゃない。全員死ぬんだ。それに天級魔術でもしも治せなかったならその上を探せばいい。最悪、リリィだけでも治せればあてはある。嘘じゃない。だからリリィ、必ず超級魔術一回分は魔力を残しておいて。帰ったら説明する、約束する。」


長い沈黙の後に渋々といった表情を浮かべ、絶対だからね。と一言残した。


絶対さ。


だから皆で帰ろう。


「ふぅ、良いですこと?ロイ君は現状先程の魔力酔いも残ってますし、ポチは完全なる魔力切れ。ワタクシも魔眼をダンジョンに入ってずっと使用していて魔力は残り2割。行動回数は最小限に、成果は最大に。一回一回が博打ですがその最後の締めがロイ君、貴方ですわ。貴方に全てがかかってますの。ワタクシ達の命、全部貴方に預けますわ、ですから今はそこでポチの面倒でも見て落ち着きなさいませ。」


逸る気持ちを見抜かれたようだ。


「ポチ?貴方にも大事な役があるので休んでいてばかりはいられません、覚悟してお聞きなさい?」


今日1番の飛びっきりの笑顔でシータさんは言った。


「作戦は決まりました。立証するためにコロとリリィさんには一度お試しいただきますが、決して気は抜かず、危なければ必ずここへ戻ってくるように。さぁ行きますわよ!作戦開始しますわ!」








まずヴォルフさんが囮でチョロチョロと動きだす。


するとすぐさまケルベロスはそちらを向き氷の槍を降らせる。


広範囲かつ、擦れば全身氷漬けになるような魔力のこもった強大な魔術


それをリリィが結界をケルベロスの目の前に張り発射が遅れる。


その隙に攻撃範囲外に逃げたヴォルフさんを見てリリィは初級の土魔術


ロックショットを打ち出す。


魔力を相当込めてるのか、本来の拳大の大きさではなく、その全てが僕と同じ程度の大きさだ。


それもその数は20近く。


昨日父さんの言いつけをあっさり破り、覚えたばかりの魔術なのにもうあんなに使いこなして。


やっぱりリリィは天才だ!


これなら...


「ダメですわ、傷1つつきませんの、けれど想定通りケルベロスは避けませんわ!お二人とも戻って下さいませ。」


ヴォルフさんはこちらに向かって走り出した。


けれどリリィは


「避けないのなら広範囲の必要はない、数ではなく質で...」


何か言っている。


リリィ?


リリィの目の前にケルベロスの半分程度の巨大な岩が出現し、高速で回転しだす。


「もっと、もっと魔力を込めて、回転を加えて...これで倒せればロイ兄が危険な真似する必要なんかない。いけ!ロックショット!!」


とんでもない速さでそれはケルベロスに向かう


「いけませんわ!リリィさん!逃げて、風の魔術がきます!」


ケルベロスはそれを風の魔術で迎撃、岩は大半を砕かれ、破片がケルベロスにぶつかるも特にダメージを受けてはなさそうだ。


そしてそれで終わりではないと言いたげにケルベロスが突然吠えた


「ヴォォオオオオオオオオオオッ!!!」


大きな、大きな遠吠えだった。


周りを見渡すとシータさんも、アレス君も固まっていた。


なぜ...リリィを見るとリリィも固まっていた。


既に風の魔術の一部を受けたようで反対方向に吹き飛ばされていた。


「スキルか!!僕には効かない...なら僕が「ロイ坊はそこに居ろ!俺が行く!」」


ヴォルフさん!


ヴォルフさんも効いてないようでリリィの元に駆けていく。


リリィの元に辿りつくと火の魔術が二人を襲う。


ヴォルフさんは抱えたリリィをこちらに投げた。


僕はリリィを受け取ると...ヴォルフさんは片足を無くしていた。


「ヘマったわ...嬢ちゃんの結界で数秒耐えられたものの強化魔法も解けちまって、あと一歩が足りんかったな...」


そんな!!


僕は急いでヴォルフさんの元へ走り抱えて転移石の元へ戻る。


ヴォルフさんの意識はない。


「リリィ!お願い、ヴォルフさんを!ヴォルフさんを!!」


リリィは片手だけ辛うじて動かして


「ハイヒー...ル...」


ヴォルフさんの足を治した。


治したといっても無くなった足が生えてくるわけじゃない。


太ももから下はごっそりないのだ。


シータさんにアレス君も徐々に動きだした。


「リリィ、自分にキアヌをかけるんだ。これが状態異常ならそれで緩和できるはず!」


リリィはすぐさまキアヌをかけ、他の2人にも同様にかけた。


そしてヴォルフさんの様子を見に来て


「ごめんなさい...ごめんなさい、私があの時余計な事をしたから、私なんか死なないのに。死なないのに。なのに...ヴォルフさんが...ごめんなさい」


リリィはヴォルフさんに覆い被さるようにして泣いていた。


ヴォルフさんの意識は戻らないがハイヒールは効き、命は繋ぎ止めた。


「リリィさん、悲しむのはあとですわ。反省も後。今はこの後どうするか、どうすべきかですわ」


シータさんは強い口調でいった。


「リリィ、地上に戻りさえすればヴォルフさんの足だって治せるかもしれない。超級魔術の詠唱を集めるんだよ?今ならアレス君だっている。その中には創生魔術だってあるかもしれないじゃないか!」


リリィは顔をあげる


「うむ、ロイはよく言った。超級魔術、オールヒールは創生魔術だ。無くなった足を生やし、腕を生やし、生きる者のかつての身体を血肉から全てを作り出せる魔術だ。我に任せよ!きっと見つけ出そうではないか!我を誰と心得る?我は公爵家が次男、アレス・ブレイザードなるぞ!」


アレス君は自信を持って言い切った。


ありがとう、アレス君。


「ポチが居なくともワタクシが見つけ出しますわ。まずは現状の確認からしましょう。現状魔力はロイ君を抜いて全員が枯渇寸前。リリィさんも後1度の初級魔術を使うのが限度、ポチはとっくにない。ワタクシも今の攻防での魔眼の使用で1割を切りましたわ。」


絶望的だ。


これでどうやってあの化け物を倒せる。


そんな空気の中シータさんいつも通りの笑みを浮かべてこういった


「それでもこの戦い、ワタクシ達の勝ちですわ!」











え?


今なんて?


「まず、あのケルベロスは通常の状態ではありませんの。スキルはほぼ全てが使えない、あの最初の位置から動きもしませんの。ただの1度も動いていませんわ。」


確かに、でもさっきスキル使ってきたよ?


「最初からおかしいと思いましたの。何故魔剣を抜いたらここに転移したのか。推測ではありますが、恐らくは魔剣を抜いた者にあのケルベロスを倒させるためですわ」



どういうこと?


「この魔剣ブラドの前使用者は恐らくこのケルベロスと戦いましたの。それで敗北した、だけど拮抗はしていたのでしょうね。ケルベロスに複数の呪いをかけた。1つはケルベロスを動けなくする呪い。2つ目はスキルを使えなくする呪い。3つ目は魔術を縛る呪い。だけど、その呪いはきっと遥か昔にかけられたもの。2つ目と3つ目が綻びかけている。」


呪いを複数...


でも確かに今まで1度も動いてはいない。


「魔術に関してはそれぞれの得意とする超級魔術を1つずつしか使用できないとみて間違いないでしょう。先程ロイさんがヴォルフさんを助けに行った時、ロイさんを見ていたもののなんの魔術も使用しなかった。何故か。3つの魔術を使用し、クールタイムだったためですわ。超級が使えるのに初級中級は使えない、そんなはずはありませんもの。間違いなく呪いに縛られていますわ。」


確かに!


あの時は夢中だったけど隙だらけだったもん。


初級ですらまともに食らえば死に至る


「そしてここからが本番。先程奴はスキルを使用しましたね?これはとても言いづらいのですが...」


シータさんがこちらを見る。


理由はわからないけど、今は情報が必要だ。


「シータさん、僕の事なら気にしないで。言ってほしいな。」


「それでは、ロイさんとヴォルフさんが大丈夫だったことから恐らくは純粋な人間種にのみ混乱を与えるスキルと判断をしました。正しいかはわかりません。非難は受け付けますわ。」


あ!なるほど。


ヴォルフさんは獣人種


僕は吸血鬼混じり


だから効かなかった。


聞いてみれば納得できる


「ありがとうシータさん。言いづらい事をすいません。」


「いえ、ワタクシが謝る必要はあってもそちらが謝る必要はございませんわ。話しを戻しますわね?何故スキルを使用できたのか?出来たなら何故最初から使用しなかったのか。答えは単純。先程のリリィさんの攻撃がきっかけで呪いが一部解除されたんですわ。」


攻撃がきっかけで呪いを解除?


「先程のロックショット、魔術で大半が弾かれたとはいえ一部が擦り、火の首の所に微かに傷を残していますわ。」


あそこですわとシータさんが指をさす


確かに、ほんのかすり傷だけど血がでている。


「傷を負うことで呪いが解除される、もしくは肉体になんらかの呪いの構成式があり、それを削ってしまった分呪いが軽減する、ですわね。」


なるほど!


シータさんはやっぱり頭がいいなぁ


でもそれじゃ!


「そう、攻撃すればするほど本来の強さを取り戻していく。少なくとも他スキルや魔術、なにか1つでも追加されただけでこちらはおしまいですの。」


「それでは勝利など夢のまた夢ではないか!」


アレス君が立ち上がる


「落ち着きなさいポチ、仮にも公爵家に名を連ねる者でしょう?勿論普通に戦えばワタクシ達は負けますわ。それも100%。ですが逆に考えて下さいませ。一撃与えるたびに力が戻るなら、一撃で倒してしまえばいいんですわ。まぁ実際には2回の攻撃が必要なんですけれど。」


一撃でって...


「魔剣ブラドには恐らくかつての力はない。呪いを施した影響か、もしくは使用者のレベルの問題か。ワタクシは使用者のレベルの問題と考えますの。」


僕のレベルの問題...


それなら


「グロウアップで「却下ですわ」」


シータさんが言葉を重ねる


「現状リリィさんはそれだけの魔力を残していません。また使用できるまでここに居て回復を図るのも無理ですわね。気付いてまして?ほんの少しづつですがこのフロアに入ってから魔力を吸われてますの」


吸われてる??


気づかなかった!


「本来はケルベロスから魔力を吸い取り、呪いを継続させるためのもの、離れていても多少吸われますわ。なので皆さんの魔力の回復どころかここにこうして30分もいればロイさん以外は全員枯渇状態に陥り動けなくなりますの。」


そんな!


ん?なんで僕は?


「ロイさんはこの呪いへの耐性がおありのようで、魔力を吸われませんわ。魔剣の影響でしょう、当然といえば当然ですわね。」


なるほど


だから気が付かなかったのか


でもそれなら


「レベルの件はどうやって解決するのだ?魔剣の力を引き出したい、しかし肝心のレベルがここではあげられんぞ?」


そうだ。


その問題を解決しなければならない。


「その問題は簡単ですの。ロイさんが最初に言っていた第2案、吸血を用いますわ。」


吸血か!


吸血でレベルが上がるのかな?


それに...


「馬鹿者!先程言っていた事と矛盾するではないか!傷を与えたらより強くなるのであろう?ならば吸血したらその時点で詰みではないか!」


そうだ。


あと1つでもスキルや魔術があれば終わるって


「馬鹿は貴方ですわポチ。傷を与えたら強くなる、ですが既にある傷を利用すれば如何かしら?リリィさんが必死の想いでつけてくれたあの傷、利用しない手はないでしょう?」


そうか!!


既にある傷を使えば新たなスキルに目覚めることはない。


だけど


「どうやって近づけばいいんですか?あのスキルのせいでロイ兄以外は近づけません、それに超級魔術が三種、今は結界も張れませんし近づく前に殺されます。」


やれと言われれば全力でやるけど、3つどころか一回で死ねる自信がある。


「今のままですとそうですわね、ロイさん、魔力酔いは落ち着きましたか?」


うん?


「うん、だいぶ落ち着いたよ。今なら普通に走れるよ!」


それが今この場で必要なのかな?


「そう、ではポチ手伝いなさい。この局面を乗り切れるかは貴方にかかってますの。ロイさんが超級魔術を吸って増えた魔力をワタクシに送りなさい。」













「我か!?そして我にはそんな魔術も使えぬし、魔力もないぞ?」


「魔術を行使するのはロイさんです。闇魔術の適性持ちはロイさんですから。けれどロイさんには魔力を扱う経験値が圧倒的に足りない、リリィさんも他人の魔力を扱う経験はないし、リリィさんには別件で魔力を使用して頂きますわ。ワタクシなら完璧にこなせますが、ワタクシに魔力を送る以上ワタクシではお手伝いできませんわ。仮にも公爵家の者、先程も完璧ではないとはいえ中級魔術を詠唱省略にて発動させた、魔力を扱うセンスはワタクシの次に貴方が高いんですの。出来ない、とは言わせませんわよ?」


ぐぬぬ、とアレス君が唸る


「この方法は先程までは出来なかった事。ロイさんの中で追加で得た魔力が安定しだした今だからできる策ですわ。」


シータさんに僕から魔力を送る


できるのだろうか...


「出来ますわ、マナドレインで得た魔力を放出するだけですもの。難しく考えなくていいですわ、そこのポチ以外は。本来の使用者が魔力を送る場合でも変換率は7割。得た魔力分を考えますとワタクシの魔力量の全体の6割ちょっとというところですわね。ですが今回は他者が魔力をコントロールする。恐らくワタクシがやって変換率は5割。それでも今元々ある魔力とあわせれば半分近くの魔力を得られますの。」


続けてシータさんは言う。


「ポチ?貴方に求めるのはそこまでではないけれどそれなりに難易度が高い事はわかってますわね?最低でも変換率3割はいかないと戦いはここでおしまいですの」


アレス君は顔が真っ青だ。


「アレス君、大丈夫!シータさんも言ってたじゃない!アレス君は魔力の扱いが上手いって。僕はアレス君を信じるよ!」


そう言うとアレス君は顔をブンブン振って


「ロイ、よくぞ言った。我が欲しかったのはその言葉だ!我に出来ぬことはない。時間が惜しい、さっさとやるぞ!」


「その前に、リリィさんにお願いがございますの、こちらで魔力の譲渡を行なっている間にして頂きたいんですの」


ーーー










「ロイ、マナドレインで得た魔力を放出するイメージを描け。細かな調整はこちらでやる。とにかく全魔力を放出するつもりでやれ」


魔力を放出するイメージ...


イメージ...


井戸水をキコキコするといっぱい出てくる


そんなイメージを浮かべる


「イメージは出来たか?出来たなら魔術刻印に魔力を流せ!タイミングは任せる。」


イメージは出来た。


魔力を流し込むと


「むぅ!思ったより魔力が多い...ロイはそのままでいい!イメージを崩すな!こちらでやる、魔力をロイの手を通じて流す、流す際にシータ嬢の魔力が反発しないように抑え込む...」


なにやらアレス君はブツブツ言いながら額に汗を浮かべている。


こんな経験アレス君だってないはずだ。


それでも必死にやっている。


今僕はシータさんの背中に両手をつき


アレス君が僕とシータさんの肩を支える


魔力がガンガン抜けている


大丈夫、僕はアレス君を信じている。


「ふぅ。終わったぞ、正直2度とやりたくない。もう一歩も動けん、あとは任せたぞ?」


アレス君は大の字に寝転んでいる。


多分、本当にもう動けないんだろう


顔色も悪い


「ポチの割にはよくやりましたわ、褒めて差し上げます。返還率は4割ちょっと。余裕すらありますわ」


流石だ!


「ほれ、ロイ。我に言うことはないか?」


凄いドヤ顔だ。


顔色は真っ青なのに何故か余裕すら感じる


「流石だねアレス君。出来ると信じてたよ。ありがとう!」


すると照れたのだろう


顔をプイっとすると


「当然であろう、我を誰だと思っている?」


シータさんが割って入って


「はいはい、ポチは凄いですわ。最高ですわ。ですがこれ以上無駄話しをしていると時間が過ぎ、魔力を吸われて死にますから話しを戻しますわよ?」


アレス君は真っ青の顔が更に真っ青に、いやなんかもう一気に死にかけの顔になって黙る


「ここからは博打ですわ。まず、ロイさんの背中にワタクシを縛って固定しますの、それでロイさんはケルベロスの火の首めがけて一直線に走って下さいませ。」


頷くとシータさんは続ける


「ケルベロスの所までここから走っていくと計二回の攻撃を耐えねばなりません。この攻撃が魔術二連続だったらワタクシ達はお手上げですわ。」


博打


なるほど


スキルを1度使ってこなければならない、そのためにシータさんがついてくるわけだ。


きっと僕だけならスキルを使用してこない。


「そして使用するタイミングも大事ですの、先にスキル、そして魔術の順番でないとワタクシはお手上げですわ」


それは...


いや確率の問題はいい。


なんせ普通に挑めば0%なんだ。


勝ちの目があるこの作戦にかけよう


「先にスキル、そして魔術ですが火の魔術を使われたらお手上げですわ、しばらくは高熱が発生して首に登るどころか触れることさえできませんわ」


...流石にお手上げパターン多くない?


「ですから必勝パターンはスキル、そして水か風のどちらかの超級魔術の順番です。」


アレス君が倒れたまま叫ぶ


「それでは博打どころの話しではなかろう!成功する確率は五分どころか1割といったところではないか!?博打も博打、大博打ではないか!」


最もだけど、1割


逆に言えば1割の確率であの化け物を倒せるとシータさんが言っているんだ。


この初心者だらけのパーティで


パーティリーダーを信じよう


「お黙りポチ。大博打程度勝てないであのケルベロスが倒せるお思いで?その上で風、もしくは水の魔術を使用したタイミングでワタクシ唯一の魔術刻印を刻んだ時魔術で防ぎます。」


おぉ!!


ってあれ?確かその魔術刻印は初級って聞いたような


「初級時魔術、その名もロックですわ!なにを隠そう、ワタクシのこの自慢の巻き髪もこのロックで固定してますの。1度かければ24時間形状を固定するワタクシの必須魔術ですわ!」


ダメかもしれない...


僕はそう思った。











「いいですこと?奴がスキルを使用するとワタクシは動けなくなりますわ、そうしたらこの水筒を全てワタクシにおかけなさい。」


シータさんが水筒を僕に渡す


「それには先程リリィさんにキアヌの魔術付与をして頂きましたの。これで仮に2回目もスキル使用だったとしても数分は効果はないですわ。もっともワタクシはロックを使用した時点で魔力切れを起こしますわ。そうしたらこの紐を切って置いて行きなさいませ。」



何を言うんだ。


「そんなことできるわけない!ケルベロスの目の前に置いてけなんて...無駄死にじゃないか!」


シータさんが顔をふる


「いいえ、恐らくはその心配は無用。ケルベロスはその魔剣に気づいている。かつての力がない事も含め。とはいえ自身を縛った原因でもあるから警戒はするはずですわ。ワタクシが置いていかれる場所はケルベロスの間近、とはいえその時点でワタクシとロイさんが別れればワタクシの事は眼中にないはずですわ。ワタクシを背負ったままで動きが鈍り、ワタクシを庇って動きが鈍り、結果吸血が出来なければ話しになりませんの。いいです事?これは必須条件ですわ。勿論、全員が生き残る上で最良の。」


最後は微笑んでいった。


本当にいつだって冷静だ。


そんなシータさんの言う事だから...信じられる。


「わかった。だけど僕が切ったらなにがなんでも、這ってでも距離を取ってね。僕は振り返らないけど、ちゃんと逃げてね?」


「勿論ですわ。ワタクシこう見えて這うのは得意なんですのよ?」


2人で笑った。


そして転移石の方を見ると3人が横たわってる


ヴォルフさんは意識はないままだ。


リリィはヴォルフさんの横でヴォルフさんを笑顔でガン見している


アレス君は...あぁリリィが好きなんだっけ


照れてリリィと反対方向を向いている


そして背中にはシータさん。


やれるだけの事はやった。


ーーーあとは化け物退治だけだ!!

良ければ感想等貰えると嬉しいです!

宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ