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一緒に焼きそばパンを食べよう!

宜しくお願いします。

ダンジョンに潜るにあたって、リリィと事前の準備をした。


僕は初級の魔術ですら二度使えば魔力は無くなっちゃうし、武器なんて触ったこともない。


ヴォルフさんが初心者用の武器を持ってくるって言ってたけど、僕自身が強くなるにはやはりあれが必要だ。


「リリィ、僕に魔術刻印の刻みかたを教えてくれないかな?」






ーーー「ロイさん、きますわ。数は1、恐らくは低級の魔物です。左の穴からです、構えて下さい!」


ダンジョンに入って10数分、誰とも、なにとも遭遇しなかった。


気が緩みかけた時にシータさんから支持がとぶ。


「了解、リリィ!危なさそうだったら結界を頼む!」


リリィはすぐに答える


「大丈夫、既に全員に中級結界つけてる。安心してやっちゃってロイ兄!」


既についてるらしい。


そりゃシータさんがリリィに指示しないわけだ


なら、やろう!





出てきたのは小さな、本当に小さな黒い兎だった。


普通の兎よりもなお小さい、半分くらいじゃないか?


動きも遅い。


これは1突きで終えよう。


「ふぅ、なんだか可愛らしい見た目だし罪悪感があるね」


突いた後に言うとヴォルフが言った。


「甘くみちゃいけねえ。そいつは黒兎、レベルが低いと小さいし鈍いが噛み付かれたら指だって食いちぎっちまう。それに罪悪感も感じなくていい。こいつらは定期的にやっとかねえと数が増える。ダンジョン全体で魔物が増え続けるとスタンピードが発生して街が襲われる。小さくても数を減らすに越した事はない」


そうか、それは危険だね。


なら気を引き締めていこう。






1階は特に問題はなく、ボスフロア前まであっさりときてしまった。


「お待ち下さいませ、ボスフロアの扉の横に、妙な魔力反応がありますの。ボスフロアよりも遥かに大きいですわ。」


シータさんがボスフロアの100m位左をさしていう。


「そいつぁ妙だな。ここは誰もが通るダンジョン1階だ。何か罠があればとっくに見つかってるし、6階までは罠らしい罠も見た事はない。」


僕にはなにもわからない。


ただの壁のように見えるが...


「罠、ではないように思いますが断言は出来かねますわね。性質が読みきれませんの。ただ、魔力反応的には嫌な感じはしませんわね。気づかれなかったのは恐らく、触れただけでは反応しないからですわ」


触れただけでは反応しない?


ヴォルフさんが考え込む


「隠しフロアか?聞いた事はあるが、このダンジョンで見た事はねえな。嫌な感じはしねえってのは?」


シータさんがさらに覗き込むように壁を見ている。


「例えば先程の黒兎のような魔物ですと、禍々しい魔力が見えますの。ですがこの先にそれはない。恐らくは魔物はいませんわ。ですが魔力の反応はありますの。それも強い魔力の反応が。」


ヴォルフは少しの間俯き、やがて顔をあげた。


「恐らくは隠しフロア、それも誰にも見つかっちゃいねえフロアだ。お宝なんかがあるかもしれねえ。けどここから先はどうなるか俺にもわからん。魔物がいなくても罠の可能性は否定できん。しかし、ここは1階だ。そこまで悲観しなくても危険は少ないようにも思える。一度中を見て、魔眼で確認しながら進んでいく。念のためにリリィの結界も張ってもらいその上で危険を感じたら即離脱、これでどうだ?」


僕は答える


「いいんじゃないかな?シータさんに確認してもらいながらなにかあれば即離脱。なければ慎重に進んで確認する。もしかしたら目的の物が手に入っちゃうかもよ?お手柄だね!シータさん!」


リリィも頷き答える


「念のため上級の結界に張り直します。一撃なら中層のボスクラスでも耐えられるはずなので安心して下さい。」


シータさんが壁からこちらに顔を向け言った


「やはりここからではこれ以上はわかりませんわね。準備は万端。できる人材もいる。懸念はありますが...今を逃すと間違いなく誰かにとられますの。ならば、行きましょう!」


懸念?


それに今まで見つかってないなら大丈夫な気もするけども...いや、次に来た時にあるとは限らないのは確かだね。


「行きましょう。コロ、先陣はお任せしていいかしら?」


「黙れ縦ロール。任された」


2人とも仲良いなぁ。


でもそんな仲良くしてるとリリィが...いや大丈夫みたいだ。


流石にダンジョンだもんね。


「この壁を開く方法は簡単ですの、こことここの溝に魔力を通すだけ。2人いれば開ける仕組みですわね。リリィさん、一緒に流してくれません?」


リリィと2人で魔力を流すと壁が横にズレる。


そこから見える光景は...






「なんですの...これは?」


信じられない。


さっきまでのダンジョンは洞窟をひたすら潜っていくような光景だった。


けどここは


「見渡すかぎり花畑...広すぎて1番奥まで見えないよ!!」


僕が走ろうとするとシータさんが止める


「ロイさん、落ち着いて下さいませ。入ってもやはり魔物の反応はありませんし、一面嫌な魔力は感じません。罠の性質も今のところ感じられない。ですが落ち着いて進みましょう。強い魔力反応はずっと先ではありますが隊列を組み直していきますわよ」


そうだった。


わかってたはずなのにダメだな僕は。


余りに美しい光景に浮かれてしまったようだ。


「ロイ坊は俺の後ろだ、しかしこいつぁすげえな!中層に行ってもこんな光景は見たことねえ。しかし花の匂いがキツくて鼻が効かねえ。悪いが縦ロール、警戒を頼む。」


「任されましたわ。元々コロの鼻には出番はありませんの。ただし、戦闘になったら頼りにさせて頂きますわよ?」


確かに花の良い香りがする。


それにしたってリリィが静かだ。


リリィを見ると


「誰か、ついてきてます。ダンジョンでは分からなかったけどここでは魔力を抑えず全開にしてます。今先程通った入り口の壁辺りで2人、なにかしてますよ」


!?


ついてきてる?


全然気付かなかった。


「あぁ、その二人組は気にしなくていいですわ。ギルドからずっとついてきてますもの」


「片方はDランクってとこだがもう片方は初心者だ。そこまで警戒しなくていい、こっちに手出しするようなら俺が潰す」


気付いてたのか!


僕だけか...気付かなかったのは...


「ロイ兄、大丈夫。普通はわからないよ。私は馬鹿みたいに魔力が多くてたまたま気付いただけ、シータさんは魔眼で周辺を警戒していた。ヴォルフさんはベテランだもん。ロイ兄もヴォルフさんみたいに経験を積めばわかるようになるよ!」


リリィはいつだって優しいな。


でも、僕だって兄なんだ、ここから頑張るぞ!







1時間程歩き、ようやく奥が見えてきた。


あれは...祭壇かな?


「あそこから強大な魔力反応がします。性質はわかりませんが祭壇に刺さってるいかにもな剣は魔剣ですわ」


魔剣!?


「立派なお宝だなぁおい。深層クラスでさえ滅多にお目にかかれねえ魔剣が1階にあるなんてなぁ。罠は周辺にあるか?」


シータさんは顔を横にふる


「ありませんわ、魔剣の魔力が強すぎて祭壇周辺が読めないのですが、周辺には特に。」


魔剣...あれが魔剣か。


真っ黒な刀身に真っ黒な鍔


何でできてるんだろう。


ヴォルフさんが警戒しながら進むと


突然こちらに振り向いた


「伏せろ!「伏せて」」


リリィが僕を抑えて伏せる。


すると突然炎の槍が降ってきた。


誰にも当たらなかったが、当たったら熱いじゃすまない。


これは...


「最後まで見てるだけかと思ってましたが、どうやら見込み違いのようですの。このワタクシ、シータ・ヴァイオレットと事を構える覚悟がおありのようですわね、アレス様?」


シータさんが立ち上がって言った。


待った!アレス?アレスだって!?


「気付いていたのか、流石は没落寸前とはいえ公爵家の者だ褒めてやろう」


出てきたのはアレスと護衛のグラートだ。


頭に血が上っていくのがわかる。


ダメだ、抑えないと...ここはダンジョンだ。


「アレス、何しに来たんだ。突然魔術を行使して、ダンジョン内での争いは御法度だろう?」


出来るだけ冷静に、冷静に。


「貴様には用はない。我が用があるのはそこな娘だけだ。」


リリィを指差しながら言った。


こいつも何かしらでリリィの特異性に...?


「娘よ、其方は美しい。平民ではあろうが我は決めたのだ。我に嫁げ!そうすればロイの事も許し、そこな魔剣も譲ろうではないか」


え?


リリィに...え?


あ、そうか。


リリィが2歳にもなってないのを知らなければ...いやわかんないや。


なんでここで告白なんだろう。


「嫌です。私には心に決めた大事なお方が居ますし、それでなくても突然襲ってくるような方は趣味ではございません。」


リリィはそう言いつつもどこか嬉しそうだ。


僕にはわかる。


あれは絶対に喜んでいる。


多分、美しいに反応しているのだ。


「気も強い。益々いい。強かな女でなければ貴族は務まらん。ならばグラート、やれ!」


護衛が動き出す。


速い!!


僕も特訓の成果を見せよう...あれ?


「レベル12ってとこか。まぁまぁじゃねぇの?」


あれ?


今のヴォルフの動きが全く見えなかった...


「まぁ今のは大人げなかったな。多分素のままでもいけたんだろうが、念のためってやつだな。」


よく見るとヴォルフ輝いている。


この光は...


「超級光魔術にて一時的にレベルを底上げする、制限時間は3分ってとこか。こんな使い方もあったなんてな?」


やっぱり!


グロウアップだ!


でもあれは子供を急成長させる魔術なんじゃ...


「ヴォルフさんにしかこの中では使用できませんがね。本来急成長させるだけ魔術ですが、既に成人してる者に使用すればレベルだけを一時的に底上げする。ただし反動で戻った時に筋肉痛に陥るのと1日に一度しか使えない裏技です!」


凄いよリリィ!


一時的とはいえレベルが上がるなんて!


僕もあんな活躍したいな...


「へへっ、こんだけ動けるんだ。早くこのレベルまであげてえな。嬢ちゃんこれはどの程度レベルが上がってるんだ?」


あの動きはどの位のレベルなら出来るのだろう?


「おおよそにはなりますけど、大体20位は底上げしてますよ?あ、もうそろそろ魔術が切れますので私に捕まって下さい。多分数分は動けないのと、上級じゃ治癒も受け付けない状態になるかと思いますので」


20!?


20レベルって今の僕にかけてもレベルだけなら深層に行ける程の高レベル冒険者だ!


「あぁ!?20!?強くなり過ぎだろ!それにさっき聞いてた話しだと軽い筋肉痛になるだけって...あぁああああ!!!!痛ぇ!!なんだこれは...話しがちげえぞ!」


すぐさまリリィはヴォルフさんに肩を貸す。


あぁ、これが目的だな...


絶対そうだ...


「本当なら5-6分は効果を保たせられるはずなんですが、効果時間分だけ苦しむので、今回は短めにしました。褒めてくれていいですよ?本当はもっとかけたかったんですが...」


やっぱりね。


それはそうとアレスは...


その場に立ち尽くしていたままだ。


「あり得ぬ...我の護衛で1番の高レベルで元冒険者が...グラートが一瞬で...」


シータさんが大声で言った


微笑んだままで


「さて、今回の件どのようにすればいいでしょう?没落寸前とはいえ同格の公爵家に対してなんの勧告もなく魔術の行使、そのまま襲いかかる仕末。そしてワタクシは時の魔術を扱える者。例えば時の中級魔術でワタクシが見た光景を再現出来ると言ったらどうされますか?アレス様、お父上にお見せしたらどうなるんでしょうね?勿論聡明なアレス様ですもの。この後の対応はお間違いにならないでしょう」


飛びっきりの笑顔だ。


ここにシータの勝利が、アレスの敗北が確定した。








その後すぐに魔術契約をシータとアレス間で結んでいた。


内容はこうだ


・アレスはここにいる4人、そしてその家族に対して危害を加えないこと


・今後この4人に対して敵対しない、協力的であること


・本日から10年間アレスはシータの言いつけを守ること


本当はいっぱい制約したかったらしいけど、初級の制約魔術ではこれが精一杯らしい。


特に3つ目の効果範囲は広すぎるため限界があるが、守らないとペナルティで最悪死に至る場合もあると嘘の脅しをかけていた。


実際は上2つしか制約できてないらしい。


因みに制約魔術と言っているが、属性はない。


誰もが使える魔術だ。


強いて言うなら無属性ってことになるのかな?


お互いがお互いの肉体に魔力を循環させて行う魔術


相手が拒否したらかからないため一般的には奴隷契約とかが知られている。


僕は大きな商売などでは使用することもあるって学んだから知っていた。


「それでは最初にアレスに命じます。今いる4人に対しては横暴な発言は一切認めません。またこの4人はアレスに対して敬称も敬語も貴族に対しての一切の礼儀を行いませんがそれを認めなさい。私は公的な場以外ではアレスの事をポチと呼びます。わかったら返事をなさい」


「な!!それでは我が「返事は?」...はい。」


なるほど。


これは効果がありそうだ。


しばらくすれば気付くだろうけど、それまではいい薬になるんじゃないかな?


「よぉポチ、これからは気持ち入れ替えてけよ?」


「ポチ、次は許さないから。」


リリィに肩を貸されてるけどヴォルフが強気に言った


リリィは凄く幸せそうだ。


「アレス君、君のした事はまだ許せない。だから謝ってほしいんだ。リリィに。そして戻ったらポールにも。出来るかい?」


アレス君を暫く下を見ていたが、顔をあげて言った


「リリィ殿、この度の事、また以前のやきそばパンなるもの叩きつけた事、深くお詫び申し上げます。ロイ殿も大変申し訳ございませんでした。ポール、といった方にも戻ったらお伝えしますのでお許し下さい。」


謝ってくれるなら僕から言うことは1つだけだ


「いつも父さんが言ってたんだ。人は必ず間違う生き物だって。でもね、こうも言ってたんだ。間違った後に反省して繰り返さないのも人間なんだ!って。だから、アレス君もきっともう間違えないと思うんだ。そしたらさ、今度こそ一緒に焼きそばパン一緒に食べよう!」


アレス君がポカンとした顔をしていた。


「貴様は...いや、ロイはお人好しという言葉を知っているか?我もここまでのは初めてだ。だが悪くない。うむ、悪くないな。ならばさっさと地上に戻り我とやきそばぱんを食べようぞ!」


「うん!」


僕が笑うとアレス君も笑った


「さてほんじゃあ魔剣を抜いてさっさと帰ろう、今日はもうダンジョン探索って気分じゃあない。ロイ、俺は今こんなだ、ほんで後は女とポチだけだ。頼まれてくれるか?」


「わかった!じゃあ抜くよ?」


言われて魔剣に触れる


黒くてなんだかおっかない剣だけど、何故だか手に馴染む


さっきまで持っていた槍とは比べ物にならない


まるでずっと使って来た愛剣みたいな感じ...なのかな?


思ってたより深く刺さっていたがぐっと力を入れるとあっさり抜ける


すると突然黒い光が辺りを埋め尽くして
















ーーー僕らは消えた。


ダンジョンの奥深くに。




この話し書いてる時に焼きそばパン2つ食べました。

ナポリタンドッグも好きです。

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