おっさんの真剣勝負の日々
誰かに揺り起こされた。
まだ10時間しか寝てないぞ。
目を開けると昨晩暴れていたナーガとイリアがいた。
「昨晩はご迷惑をかけました。本当に申し訳ございません」
ナーガが頭を下げて謝罪してくる。
俺は布団からでて座りなおした。
「気にするな。迷い悩んでいる若者を導くのもおじさんの役目だ」
若い時は色々悩みがあるからな。相談できる人物がいるだけで人生はいい方向へ進んでいくだろう。
「ラグ…、やっぱり、あなたにもう一度勝負を挑みたい。力比べとか名声とか関係なく真剣勝負をお願いしたい。」
イリアの真っすぐな目が俺を見つめる。
「…わかった。こちらも準備がある。正午に冒険者ギルドの訓練場にきてくれ」
イリア
私が駆け出しの冒険者だったころ、同世代と比べて身体強化の魔法のレベルが高かった。
当時の私は魔法のおかげでCランク冒険者並の戦闘力を得ていた。調子にのった私は森の奥まで足を踏み入れてしまった。
そこはCランクでも歯が立たないほどの高レベルの魔物の巣窟だった。
多勢に無勢。その実力差を肌で感じた。
武器を失い、傷つき、多くの魔物に取り囲まれて死を意識した時に現れたのは彼だった。
銀色の鎧と青く光る剣で魔物を一撃で仕留めていく。
その姿に憧れた。
私は彼の戦い方を見ながら怪我のために意識を失ってしまった。
次に目が覚めたのは冒険者ギルドだった。
怪我を治してもらった私は、助けてくれた銀色の騎士に礼を言いたくて受付に向かった。
その時、訓練場で少年冒険者を指導している彼を見つけた。
彼の剣の振り方、体捌き、足運び、すべてが同じだった。
すぐに彼に礼を言いに行ったが、知らない。の、一点張りだった。
そして、私は誓った。彼の隣に立てる冒険者になろう。
そして、数年ぶりに会った彼は
まだ、Cランクで燻っていた。
私が強くなれば、彼も強くなっていると思っていた。
Aランクまで上げれば肩は並べられないが、その背中が見えると思っていた。
しかし、彼は違った。
怒りに任せて勝負をしてみたが、一撃で終わってしまった。
あの鋭い足さばきなら軽く避けられる速度だったはずなのに。
Aランクの私に華を持たせようとしているに違いない。
それから出会うたびに勝負を挑んだが、いつしか彼を見かけなくなってしまった。
落ち込んでいた私を慰めて立ち上がらせてくれたのが、同郷のナーガだった。
いつか本気の彼と対峙する時に備えて剣を磨き続ける。
ナーガに言われた言葉を信じてAランクでも上位の存在と言われるまでになった。
そして、彼に再び出会った。
私好みのワイルドな渋い男性になっていた。
それに、相手を思いやる優しさに胸を打たれた。
ふと気が付くと、憧れが愛情に変わっていた。
次の真剣勝負に勝っても負けても、彼に胸の内を告白するんだ。
ラグ(主人公のおっさん視点)
クックック。準備は整った。
これで俺の勝ちが確定した。
冒険者ギルドの訓練場で設置したステージ。
この為だけに朝から動きまくって暇そうな低ランク冒険者に高い金を払って作らせたんだ。
冒険者ギルドの訓練場の中央に作った2つの厨房を!
火の魔石で動くコンロに水の魔石を使った水道。
氷の魔石を使った冷蔵庫もあるし、オーブンだってある。
そして、多種多様な食材。
この準備だけでCランクの報酬1回分くらいの費用が掛かった。
おじさんになると色々と細部まで拘りたい年ごろなんだよ。
っと、時間だな。
イリマとの真剣勝負が始まる!
料理勝負が始まるまでに一悶着あったが、割愛しよう。
たいしたことではない。
俺がイルマを言いくるめたくらいだ。
さて、審判員になってもらったのは
そこにいたギルド職員のフェノ、
道を歩いていた何でも食べる悪食のビル、
そして、…だれだ?あのおっさん?
まぁいいや。
勝負は3本勝負。
得意料理3つを食べさせて旨いと思わせたほうが勝ちだ。
で、俺は味は悪くなく、見た目も悪くない。家庭で作れる簡単な料理3品。、
イリマが作ったのは焼いた肉、焼いた野菜、焼きすぎた何か。
だれがどう見ても俺の圧勝だった。
俺の料理は可もなく不可もなく、イルマの料理は…
3品とも食べ切ったビルが変な痙攣しているが問題ないだろう。
それにしても、誰かに料理を作るのっても楽しいな。
労働って素晴らしいぜ。
イリマ
まさか料理勝負とは思わなかった。
ラグは私の思いを知って花嫁修業とでもいいたいのだろう。
成人して家出するまでは貴族の子女としてダンスや作法を練習したが、料理をしたのは初めてだった。
冒険者として遠征する時は干し肉か、その場で狩った動物を血抜きして焼いて食べていただけだからな。
まずは、ナーガに料理を教わろう。
そして腕を磨いたら再びラグに会いに行こう。
その日まで、胸の中にある暖かい思いを大切にしていこう。
ラグ
宿に帰ってきた。
隣には美人のねーちゃんが2人いて、壁に大穴が開いているだ。
ついうっかり、着替えを覗いたりしても事故だよな?
おじさんは悪くない。それに一つ屋根の下に男女がいるんだ。
間違いの一つや二つ、10や20くらいあるだろう。
ぐへへへ、今晩が楽しみだ。
と、部屋を開けると壁がキレイに直っているじゃないか?!
あんなに大きな穴が半日で直るなんて…
建築ギルドおそるべし…




