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おっさんと決闘の日々

よく訓練された200人対俺一人の戦い。


もちろん、ガチでやりあえば瞬殺も可能だ。


別に自己顕示欲や承認欲求があるわけでもない。


俺らしい、戦い方をしようじゃないか。


俺は200人の騎士に向かう途中、小型の魔法の鞄を取り出した。


人の拳がギリギリで入るサイズだ。薬などの小物しか入らないだろう。


俺はその鞄からある物を取り出し、騎士たちに向かって投げた。


宙を舞う金色の硬化。中には銀貨や銅貨も混じっている。


その硬化が陣列を組む騎士たちに舞い降りた。


「き、金貨だー!」




一人の騎士が大声で叫ぶと、持っていた槍を投げ捨て地面に落ちている金貨を拾いだした。


その様を見た他の騎士たちも数人が武器を捨て金貨拾いを始めた。


よし、目論見通りだ。


俺は再び魔法の鞄に手を入れ金貨を広範囲に何度も投げた。


前線の重装備は6割ほどが金貨拾いをしている。


その後ろの弓兵や魔法使いも半数近くが職務放棄している。


騎士と行っても人間だ。欲望に負ける事もあるだろう。仕方のないことだ。


「クソっ!陣形が!」


他とは少し違う隊長風な鎧の人が戦意ある者たちで陣形を組もうとするが、俺はその人物に向かって金貨の入った袋を投げつけた。


「これくらい!」


バッサリと袋が剣で切られ金貨が宙を舞った。


「おおー!金貨!!」


金に目がくらんだゾンビのような騎士たちが散らばった金貨を目指して群がった。


「お、お前たち!うわー!!」


隊長は多くの亡者に飲み込まれていった。


こんな感じで金の亡者アタックを何度か繰り返していると、残りはイリアの兄貴一人になった。


対峙する兄貴と俺。その俺の後ろには金貨を投げることを期待している亡者たち。


「イリアが素晴らしい男だと手紙で褒めていたが、…騎士の風上にも置けん男だな。そんな金で真の騎士が倒せると思っているのか?」


「…騎士とはなんだ?」


「領主に武が認められた名誉ある者だ」


「フム…、質問を変えよう。ある所に盗賊に襲われている村にでくわした。どうする?」


「そんなもの、退治すればよかろう」


「退治して終わりか?礼を言われて気分よく帰るだけか?」


「それの何がいけないんだ?」


「盗賊を退()ければ、怪我人の救助、死体の処理に、被害の確認。盗賊に反抗したであろう働き手の男が殺されれば、村の農場や産業が壊滅する。そのためには他の街や村から人を連れて来なければならないし、新しく人が住むことになれば、家を建てなければならない。それに、盗賊の生き残りが再び襲ってくる可能性もなるので村の防備の強化も必要だ。それには全て多額の費用が掛かる。ここまで考えて動き()めなければ、復興にならん。村人が安心して暮らせるようにするまでが退()()だ。倒して終わりなら冒険者と何もかわらないぞ」


あくまでも俺の持論だがな。


「なんと思慮深い。そこまで考えているのか…。イリア、良い男を捕まえたな」


「ええ、素晴らしい人です」


後ろで外野が何か言ってるが、気にしない。


「だが、盗賊を倒すには武が必要だ!手合わせ願おう!」


そういって、背に背負っていた大剣で打ち下ろして来た。


俺はその刃を白羽取りしようと腕を振り上げた。




騎士


騎士とはいえ領主から給金を貰っているが衛兵とほとんど変わらない金額だ。


子供も生まれて、妻からは給金が少ないとボヤかれて、やってられん。


今日も郊外で訓練だ。


いつもの、借金まみれの相方と打ち合いの訓練だ。


もちろん、お互い手を抜いている。


訓練なんかで怪我なんかしたくない。


ダラダラ訓練していたら、副将軍の指示で200対1の訓練とか始まった。


わけわからん。


陣列を組み、男と対峙する。


駆け寄ってくる男が何かを投げた。


あれは…


「き、金貨だー!」


隣の借金男が叫んだ。彼は武器を捨て落ちた金貨を拾いだした。


…なんとも、見苦しい。


他にも数人が拾いだした。


すると、コンコンと兜に何かが当たった。


目の前を舞うように落ちる黄金色のコイン。


俺も武器を投げ必死に金貨を拾った。これがあれば口うるさい妻も黙るだろう。


俺は必死にあって拾った。俺と同じように拾っている連中は邪魔にならない。拾っては移動を繰り返しているからな。


ただ、ボケっと突っ立ているのは邪魔だ。そんな時は全力でぶっ飛ばす。


あ、隊長の足元に金貨がある。


我さきにと群がる同士たち、そして人波に消える隊長。


っていうか、隊長を倒したのは借金男だ。隊長が踏んでいて金貨を拾うために倒したのか。


そんなこんなで、俺の数年の年収分の金貨をひっくり返した兜に入れながら、最後に立っていた副将軍の近くまで来た。


一応、何があってもすぐに動けるように、金貨を湯水のように湧き出す男から少し離れた場所にいる。


男と副将軍が何か言いあっているが、内容はどうでもいい。金貨を投げるか投げないか、が大事だ。


俺たちは男の動向を凝視していしていたら、副将軍が愛刀の大剣で頭から切りつけた。


副将軍が剣を振り切ると前のめりに倒れた。


何が起きたかわからないが、一つだけ言える。


振り切ったはずの大剣は根本から折れていた。






ラグ


やべー、大剣を掴もうと思ったら、ついつい根本から折ってしまった。


ちょっと力が入り過ぎたかな?


さらに折れた刀身が兜にあたり、脳震盪まで起こした。


俺ってラッキー。


「うむ、認めよう。イリアには本当に勿体ない男だ。迫る剣を冷静に見極め折るための力に技。そして、先ほどの盗賊退治後の復興まで考える優しさ。全てが合格だ。娘を安心して預ける事ができる」


「ありがとうございます。必ず、幸せにしてみせます」


「ああ、頼むよ」


そんな感じで義父とは仲良くやっていけそうな雰囲気だ。


「しょ、将軍!大変です!」


街から馬に乗った伝令兵がやってきた。


「そんなに慌ててどうした?」


伝令兵は馬を降りると膝を付き報告した


「さ、砂漠が凍っています!」


砂漠が凍る?


「いったいどうなっているんだ?詳しく話してくれ」


伝令兵が言うには冒険者ギルドからの緊急報告で、砂漠と希少鉱石が取れる灼熱の砂漠都市の気温が一気に下がった。原因を探すために冒険者が派遣され、遠くのオアシスに近づくほど気温が下がっていき、凍傷で近づくどころではなくなってしまった。原因が不明だが、緊急連絡として各都市に速報が届いたということらしい。


「なるほど、それならば領主や有権者との会議が始まるな。全軍、訓練は中止だ!帰還するぞ」


俺とイリアは軍の撤退準備を見ながらフェノと合流すべく館に向かった。


次はフェノの家に挨拶の予定だ。

色々あって更新が凄く遅れます

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