おっさんと温泉の日々
決闘ごっこを終えた俺たちは宿に帰ってきた。
時間は夕方。窓の外には夕日が見える。
「荷造りを終えたらすぐに出発だ。温泉が俺を待っている」
決闘ごっこで変なテンションだが、気にしない。
「もうすぐ夜になるわよ?乗合馬車は出たないわよ?」
「そうだ。夜の移動は危険だぞ?」
フェノの言葉に乗るようにイリアが言ってくる。
「ああ、大丈夫だ。我に秘策ありってね」
俺たちは旅行の荷造りした鞄を大型の魔法の鞄に入れると夜の街を出た。
そして、街からしばらく歩いた森の中に俺は鞄からある物を取り出した。
「小型戦艦~」
どこかの青狸のように言うが2人ともスルーだ。この超高額だった魔法の鞄は入れるところが大きく伸びるタイプで電話ボックスサイズの小型戦艦の幅がギリギリで入る大きさだった。
「これは…」
「あの、美容の…」
肉体強化の副作用が若さを保つのであって、美容がメインではないんだがな。
「これで行けばあっという間だ。ちょっと狭いが、すぐに着くから問題ないだろう」
俺はコックピットハッチを開け、座席に座った。そして、フェノもイリアも乗り込み、座席代わりに俺の太ももに腰かけた。
「これで本当にいけるのか?」
イリアが不安そうに行ってくる。
「大丈夫だ。ほら、外が見えるだろう」
ハッチを閉じると周囲に電源が入り外の景色が映し出された。
「凄い…」
フェノが驚いている。
俺は素早く船体チェックを行い、離陸準備を行った。
「んじゃ、出航だ」
俺が右手のレバーを押すと船体が浮き上がり、周囲の木々よりも高い高度になり、すぐに見下ろすような感じになった。
「かなり高いくまで飛んでいるが…」
「いや、まだまだだ。精々100メートルってとこだろ?こんな高度じゃ誰かにみられちまう。あとは飛びながら高度を上げて行く感じだな」
右手で押したレバーに付いているアナログスティックを前方に押すと船体が音もなく前方に動き始めた。
「ゆ、揺れたりしないのか?」
心配性か高度恐怖症かわからないが、若干の怯えた様子のイリアが不安げな声で聴いてくきた。
「ああ、船内は重力制御がしてあるからな。揺れることもないし、急ブレーキをしても中にいる限りは外の衝撃に影響を受けることはない」
「そ、そうなんだ…。それにしても凄い技術力だな」
話しているうちに小型戦艦は雲よりも高い高度に達していた。月が大きく見える。
そして、雲の上には俺たち以外にも火山も煙を上げているのが見える。目的地はあの火山の向こう側だ。
遠くに見えた火山の山頂も数秒で到達した。
「あ゛!」
火山の火口の上に人が飛んでいるように見えた。そして、俺が気が付いた時には防御フィールドに当たり全身がミンチになり消し飛んだ。
「どうしたの?」
「何かあったのか?」
フェノ、イリアが心配そうに見てきた。
「…2人に聞きたいが、魔法で空を飛ぶことはできるか?」
「私は聞いた事が無いな」
「どこかの研究機関が空を飛ぶことを目標に新しい魔法を作っていると聞いた事がありますが、成功したとは聞いた事が無いですね」
イリアも、フェノも知らないと。
「なるほど、それなら、あれは人型の何かだったんだな…。気にするのはやめよう。そろそろ到着だ。街が見えてきたぞ」
「おお、凄い早いな。まだ乗ってから5分も経ってないぞ」
「す、すごい早いですね」
「ああ、地上だからこの程度の速度だが、宇宙ならもっと早く飛べるぞ。さぁ、着陸も終わった。行こう。」
ハッチが開き、フェノとイリアが降りた。俺も降りると魔法の鞄に小型戦艦を収納して温泉の街へ歩いて行った。
着陸地点は街から歩いて10分の場所だ。日が沈んだばかりの時間だ。まだまだ街の門が閉まる時間まであるし、多くの店が営業しているだろう。俺たちは温泉と美味い料理を期待しながら門をくぐった。
焔の魔人
手に入れた力が完璧に馴染んだ。今の俺なら上位の魔物を無数に召喚できるし、力を分け与えることも可能だ。
まずは、俺を封印した人間どものせん滅だ。
そして、俺は溶岩が流れる火口から飛び立ち、近くにある街を探していた。
「ん?あれは…」
遠くから何か四角い箱が飛んできていた。その速度はすさまじく、避ける暇もなかった。
「こ、こんなはずでは…」
衝突の衝撃でバラバラになった体が見える…。ああ、俺は死ぬのか…。
薄れゆく意識の中、痛みもなく俺は自らの死を体感した。
ラグ
温泉街は夜の時間なのにとても賑わっていた。
それもそのはず、この街の周囲には魔物がほぼ出現しない。
偶に現れるのはアメーバ状のスライム程度だ。核を潰せば倒せるし、なんでも溶かすのでゴミ捨ての集積場に多く集められている。生きている人間も溶解して吸収できるが、生きていると魔力抵抗があり、溶かし始めるまでに数日かかる。その間に、他の人に助けれるので、スライムに殺された人間がいるとは聞いた事がない。おそらく、王国で一番、魔物に対して安全な場所と言えるだろう。
俺たちは街の中心地にある、ちょっとどころじゃないお高い宿に泊まった。
ここは各部屋に大きい露天風呂が完備されているのだ。
そして、この宿は極めて珍しい全室が和室だ。
転生者か転移者かわからないが、過去に和室の存在を知っている者がいたんだろうな。
「へぇー、珍しい部屋だな。室内で靴を脱ぐって新鮮だな」
「そうですね。絨毯とも違う敷物も良い香りがしますね」
イリアにフェノも楽しんでいるようだな。高い金を出しただけあったな。
「たまには贅沢もいいんじゃないか?俺たち今まで頑張ってきたからな」
俺たちは毎日仕事を頑張ってきたんだ。慣れない仕事で苦労したぜ。
「いや、苦労したのはラグだけだと思うが…」
まぁ、いいや。とりあえず、浴衣に着替え緑茶を飲み一息つく。
和の雰囲気が風情を醸し出す。これで鹿威しがあれば完璧だったんだがな。
フェノもイリアも浴衣に着替え、お茶を飲みながら雑談をしていると、中居さんが夕食を持ってきた。
「失礼します。お夕食をお持ちしました」
室内に入り配膳をする。料理に驚いた。和食だ。白いご飯もある。
配膳を終えた中居さんが食事の説明をし始めた。
「こちらは当旅館の初代が考案したレシピを忠実に再現した物でございます。500年間一度も製法を変えずに守り続けている当旅館の伝統の味でございます。ご堪能くださいませ」
中居は簡単に説明すると部屋を出て行った。
配膳された中にはフォークとナイフがある。しかし、それ以外にも箸があった。
俺は箸を持ち米を頂く。…うん。パサパサの米だ。炊いた香りとは違う匂いもするし、なによりも米が細長い。俺が食べていた日本米とは違う種類か…。
そして、煮物は味が濃い。出汁巻玉子もどこかボソボソする。
見た目100点味30点だな。本物を知っていると物足りなさがある。
「ふむ、見た目も珍しいが味も悪くないな」
「そうですね。食べた事ない味ばかりで美味しいですね」
…まぁ、本物の和食を知らなければ、こんな物かと思えるか…。
そして、食事が終わってしばらくすると、中居さんが片づけに来た。
そして、布団を敷いてもらった。
畳の上に敷く布団を珍しがって敷いている様を眺める2人。
中居さんは布団を敷き終わると部屋を出て行った。
さぁ、風呂の時間だ。
誰も入って来ない家族用の露天風呂に男と女。これがナニを意味しているか分かるよな?




