おっさんと王様の日々
未知との遭遇から、いや化け物級の女から逃げてから10日たった。
この10日間は色々とあった。
イリアに俺が銀色の騎士との説明から生体強化の実施と訓練。
身体強化の魔法の延長線上なのか4時間くらいで体が慣れたようだった。
そして、その間に俺の部屋は大きく改築されていた。
たった半日足らずで完成だ。
俺の部屋の隣にあった倉庫とリネン室、そちらの部屋が俺たちの私室になった。
こんなのを頼んだ記憶がなかったが、女将がこれから子供も生まれるからと気を使って拡張になった。
ありがたいことだ。
っていうか、建築ギルドの連中の手際の良さに驚きを隠せない。早くて丁寧、そして正確。文句なしの仕事ぶりだ。
さて、俺が新しい執務室で貴族向けの事業の書類を確認していると扉をノックされた。
「どうぞー」
俺は書類から目を離し入ってくる人物を見た。どこかで見た事がある女性だ。
「お久しぶりです。メリッサです」
メガネを掛けたショートヘアの知的な女性だ。
「…ああ、王都の冒険者ギルドの…」
思い出した。以前、俺に融資の話をした人だ。冒険者ギルドの本部から派遣されてとか言ってたような…
「はい、覚えておいていただき光栄です。実は王城からこちらの手紙を預かりました」
手渡されたのは普通の封筒だ。裏面を見ると王国の紋章で封をしてあった。
ペーパーナイフで封筒を開け中の書面をみると、なんてことはない多額の上納金の感謝の言葉だった。
ただ、それが王様直筆だった。
「それで何が書かれていましたか?」
「ああ、王直筆の感謝状だった。なんでも南部の鉱山都市の大火事で多くの人が困っている中の多額の上納金でたくさんの人が救えるって。そして、直接感謝を言いたいから王都へきてくれないかって」
「凄いですね。王様から直々にお言葉を頂けるなんて光栄ですね」
ありがたいことだ。国王から直筆の文書が貰えるなんて末代までの宝にしよう。
「ああ、近いうちに向かうとしよう」
…
……
「…この多くの国民が困難を乗り越えるべく一致団結している中、多額の寄付を頂けたラグナント男爵を表彰する。表彰状、あんたはエライ!」
「ありがとうございます」
俺は国王の言葉と賞状を頂き跪いた。
商業都市から3日、控室で2時間待って謁見3分。
…まぁ、名誉な事なんで文句は言わないさ。
控室に戻り借りていた衣装を返し普段着に着替えてると廊下が慌ただしくなっているのに気が付いた。
扉を開け様子を伺うと、城内を多くの騎士が走り回っている。
「どうかしたのか?」
俺は近くにいた騎士に尋ねた。
「はい!南西にある渓谷都市で魔物らしき群れの襲撃です!膨大な数らしく、私たち騎士団が応援に向かいます!」
「襲撃?ダンジョンの氾濫じゃないのか?」
「はい、未確認の情報ですが、炎を操ったり纏ったりしているそうです」
「そうか、わかった。ありがとう」
「八ッ!失礼します」
騎士は敬礼すると廊下を走っていった。
渓谷都市か…。またの名を山頂都市と言って山の頂上にある都市だ。
山頂というと王都を見下ろして不敬だとか騒がれて渓谷に名前が変わったとか聞いた事がある。
ふむ、ここで襲撃を知ったのも何かの縁だ。ちょっと行ってみるか。
俺は部屋付きのメイドに帰ると告げ城を出て何食わぬ顔で王都を出ると南西の渓谷都市へ向かった。
…
……
文字通り飛んで行ったが、なかなかの景色だ。
美しい渓谷の山の中にある都市が赤く燃えていて美しい。
いやいや、陥落寸前か?住民の避難とかはどうなっているんだ?
渓谷都市に近づくごとに多くの避難民が山道を歩いている。おそらくは避難民だろう。その全員が荷物も持たずにに
そして、街の門を出たところで冒険者と兵士たちが殿として魔物を食い止めていた。
しかし、街の中にもまだ取り残されている住民やそれを護る冒険者がいくつも上空から見ることが出来た。
まずは退路の確保からだな。
俺は変身して街の門で戦っている魔物たちの後ろに着地するとアストラルブレードを引き抜いた。
そして無防備な背後から魔物たちを切り裂いた。
アストラルブレードは肉体ではなく魂を切り裂く剣だ。どんなに強力な鎧も盾も効力を発揮しない。
触れた部分は魂が切り裂かれ、良くてショック死、当たり所が悪ければ癒させることの無い痛みで悶絶の末に死んでいく。
「大丈夫か?」
「ああ、助かった!ここはなんとか食い止めているが、まだ中に取り残されている!すまないが助けてくれないか?」
俺に返事をしたのは衛兵の中でも階級が高いのだろうか、他の衛兵よりも立派な兜をかぶっていた。
「ああ、もちろんだ。道は俺が切り開く。いくぞ!」
俺はそのまま返事も聞かずに街の門を潜り抜けて街の中に入っていった。
襲い来る魔物は普通の魔物に近い見た目をしていた。ただ、その全ての魔物が口から火を吐いていた。
さらに上位の魔物になると体の一部をに炎が纏っていたり、腕を振るうだけで炎を出すような魔物もいた。
そんな魔物たちを倒しながら多くの住民や冒険者を助けた。
「ック!ここまでだ。これ以上いけば退路が炎で塞がれるぞ!」
俺の後ろで怪我人を背負った冒険者が声を上げた。
たしかに火の勢いがすごくなっている。
それに救出した住民や怪我をした冒険者も多数いる。
「仕方ない。これ以上は我々が危険になる。撤退だ!急ぐぞ!」
まだ街の半分にも達していないが、そろそろ潮時だろう。
俺は最後尾に着き、全員が炎に包まれた街からの脱出を支援した。
後方から襲い来る魔物を倒しながら何とか街の門までたどり着いた。
「クックック…。なかなかの猛者がいると聴いてやってきたが…」
上空に現れたのは炎を纏った男だった。
俺が上空の男を見た隙をついて赤黒い肌のオーガが俺をこん棒で薙ぎ払った。
が、こん棒が当たる寸前に避け、オーガの懐に潜り込んで顎から頭上へかけてアストラルブレードを突き刺さした。
「ほう、たしかに中々の腕のようだな。だがこの数ならどうだ?」
燃える炎の向こうから多くの魔物がやってきた。それこそ100を超えるんじゃないかという大量な魔物だ。
「クックック、この数ではさすがにかなうまい。貴様の死を見れぬのは残念だ」
男はそういうと炎に燃える街に消えていった。
「こ、こんな数の魔物相手に…」
「む、無理だ…」
後ろから聞こえる弱音。
「殿は私が引き受ける!この程度の魔物の数、私の命の見積もりが甘かったことを証明させてみせよう!さぁ、行くんだ!」
「す、すまない…」
衛兵長が礼を言って怪我人を背負いながら街の門を出て行った。
さて、こちらの準備が整うまで待っていた礼だ。苦しまず逝かせてやろう。
俺はアストラルブレードを構えると向かってくる魔物たちへ向かっていった。
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