おっさんと貴族の日々
俺は名誉貴族になるべく、冒険者ギルド長に相談に来た。
「うむ、事情は分かった。新しい女を合法的に手に入れる為に貴族になりたいというんだな」
「たしかに、その通りだが、もっと他に言い方ないんかよ」
「なに、私らの仲じゃないか。回りくどいのは嫌いだろう?」
「確かにそうだが、なにか釈然としないものが…」
「さて、貴族になる方法だったな。私からの推薦状と中に書かれてある最低金額以上を献上すれば大丈夫だが、まぁ、ラグなら大丈夫だろう?」
ギルド長から渡された推薦状を開くと裕福な家庭が20年くらいは楽に暮らせそうな金額が書いてあった。
「…思ったよりも少ないな。良心的な額だな」
「おいおい、その最低金額だって庶民じゃ払えんぞ。それにしてもこの街のほとんどのギルドを傘下にして街を乗っ取るつもりか?」
街を乗っ取るのも面白いかもしれんが…
「やめてくれ、俺は金にモノを言わせて色々とやっているだけだ。赤字の事業だってあるし、総合的にみて、ギリギリで黒字なんだぜ」
鍛冶ギルド、装飾ギルドは大赤字だ。材料費も高いが人件費も高い。あいつらは持つのに相応しいと思ったらタダで渡す癖があるからな。高額な商品ほどそうなりやすいんだ。
「そして、黒字のギルドは思いっきり甘やかして優遇して良い循環になるようにす。そして、赤字ギルドは…」
「赤字ギルドは?」
「まぁ、いろいろと、ここでは言えない事をしようかと思ってるさ」
「怖ぇよ!何やるんだよ!」
「まぁ色々とやりようはあるさ。とりあえずは、推薦状ありがとさん。さっそく王都に行って貴族になってくる」
「ああ、気をつけろよ」
ギルド長と別れ、一旦宿に戻った。
そして、翌日になり俺は一人で王都へ向かった。
フェノやイリアも行きたがっていたが、フェノは仕事があるし、イリアも俺の部屋に来るための荷造りがあるから、と置いてきた。
けっして、一人で気楽に旅行がしたいとか、大人のお店に行きたいとか、そんなこと1㍉ぐらいしか考えていない。
そして、王都に着き手続きをして、ニコニコ顔のカイザル髭の大臣から書状と王国の紋章が入った短剣を貰った。ニコニコ顔の理由?それは、最低金額の10倍の金額一人で収めたんだ。国の臨時収入にしては予想を超える金額だ。ちゃんと適正に使ってくれることを願おう。
そして、城をでると知っている人に出会った。
「やっほー。お城から出てきてどうしたの?」
「やあ、ミア姉さん。ちょっとした野暮用」
俺の実の姉のミア姉さんだ。この王都にいくつものお店を出しているやり手のオーナーだ。
見た目は20そこそこだが、実年齢はよんじゅ…
「ぐはっ!」
俺のボディに拳が突き刺さった。
「あんた何考えてるの?殴るわよ?」
「…殴ってんじゃん」
「下手な事考えないほうがいいわよ?特に女性の年齢とかはね?」
「了解だ、姉さん」
「それよりも、久しぶりに会ったんだからちょっと話でもしない?」
「まぁ、いいけど」
急ぎの用もないしな。
「じゃあ、行きましょう。こっちよ」
俺は姉さんの後を付いて行った。しばらく歩くと白い清潔感のあるお店にたどり着いた。
「ここは?」
「新しいお店よ?前に会った時はここのオープン準備で忙しかったの」
「へー、そうなんだ」
チリンチリンと可愛い音を立てながらドアを開けると店内は落ち着いた感じの喫茶店だ。
「いらしゃいませ。お二人様でよろしいでしょうか?」
声を掛けてきたのは可愛らしいエプロンを付けた少女だった」
「ええ、お願い。できたら奥の部屋いける?」
「かしこまりました。ご案内します」
俺たちは店員に案内されて店内の奥にある席にたどり着いた。
「紅茶2つと…、私はケーキ。あんたは?」
「サンドイッチとかあるか?」
「ございます。紅茶2つとケーキ、サンドイッチでよろしいでしょうか?」
「「はい」」
「かしこまりました。少々おまちくださいませ」
店員はそういと一礼して厨房へと向かった。
「どう?しっかり教育されてるでしょ?」
「ああ、見事だな」
「やっぱり経営するならお客目線で物事を考えないとね。何が良くて悪いのか見えなくなっちゃうからね」
よく出来た女性だ。俺も色々と見習いたいものだ。
「それで、最近どうなの?商業都市は景気が良いって聞くけど?」
「ああ、どこに行っても人、人、人だ。建築ギルドが休む暇なく家を建ててる」
「ええ、そうみたいね。王都からも家を建てるのに何人も応援に行っているって聞いたわ」
「そういえば、ジャックが建築ギルドだったっけ?」
「ええ、あの子から聞いたわ」
ジャックは姉さんの子供だ。長男はジャンで料理人、ジャックは建築ギルドで働いている。
「でも、凄いわよね。なんでも多くのギルドにたくさんお金出している人がいるみたいなんでしょ?それで景気が良いって聞いたわ」
「ああ、そうだなー」
「…まさか、あんたなの?」
「…」
無言で無つめ合う俺と姉さん。
「…」
「…」
段々と目に力が入ってくる俺たち。
「…」
「…」
そして、にらみ合うかのようにお互いの顔が近づき、
「…正解」
「長い!そんなに溜めて意味あるの?」
「意味はない。ノリだノリ」
「まったく、アンタは小さい頃から変わんないわね」
たしかに、小さい頃からノリと勢いで生きていた気がしないでもない。
「お待たせしました」
丁度いいタイミングで注文の品が届いた。
紅茶、ケーキ、サンドイッチを置き、一礼して去っていった。
「で、あんたは何でそんなことしてるの?冒険者ギルドに出資しているのは聞いたけど、それからどうなったの?」
「ああ、出資したがすぐに回収できるとは思っていない。だから俺の資金は冒険者として稼いだ額をつぎ込んでいる」
「…あんたまだ冒険者やってたの?」
「俺は生涯現役だ。まぁいいや。で、そこそこ強い俺は定期的に実体化した魔物を狩って収入を得ている」
「実体化した魔物ってかなり危険じゃない!」
「ああ、危険だからこそ高額な金額になる。それに…」
「それに?」
「俺は根っからの冒険者だ。たとえ天地逆になっても、己の道は変えぬ、姉上」
「…はぁ?あんた何いってるの?また何かの受け売り?それで、その危険な事でして得た資金で色々なギルドに援助したってわけね。そんなんで儲かるの?」
「援助しているのはギルドだけではないさ。いくつかの商店にも資金援助している。それらが好景気で後押しされる形で最近になってやっと少しずつ回収できるようになってきた。俺が生きているうちには全て回収して利益も貰えると思う」
寿命が1000年以上あるからな。もっとも、回収できなくても気にしないが。
「ふーん、ちゃんと考えてるのね。安心した。それで、良い人は出来た?」
「ああ、安心してくれ。ちゃんと結婚したさ。二人と」
姉さんは口に含んでいた紅茶を噴き出した。
「ふ、二人?急に二人なんてどうしたの?」
「本当にどうしたんだろうな。別に二人とも付き合ってたわけでもないし、意識したことも無かった。世の中って何がどうなるかわからんものだ」
「何を人ごとみたいにいってるの?自分の事でしょ?」
「ああ、だからこうして王都まできて名誉貴族になって正式に二人とも俺の嫁にしたんだ」
「なるほど、それでここに繋がるのね」
「そういう事だ」
「ふーん、あ、もうこんな時間。そろそろ帰らなくちゃ」
外をみると太陽が夕日を照らしていた。
「そうだな。俺もお土産買って帰らないとな」
「そうね。2人とも大事にしなさいよ。それと、そのうち2人の顔を見に行くからね」
「ああ、大歓迎だ。まってる」
俺と姉さんは店の前で別れた。
そして、近くの定食屋で早めの飯を食べると夜の王都に繰り出した。
…
……
結果から言おう。
いくら俺の守備範囲が広くても、オークのような巨体とゴブリンのような顔の女型の化け物は無理だ。対面した瞬間に走って逃げた。やはり客引きの言葉は信用できんな。
読んで頂きありがとうございます。1PVが増える事にやる気に繋がります。




