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おっさんと2人目の日々

ある日、ギルドで仕事を終えたフェノと一緒に宿の食堂で飯を食べていた。


時間は昼過ぎ。いつも通り俺の起床後の時間だ。


「今日もここのご飯は美味しいね」


フェノはにこやかに食べているが、俺には物足りない時がある。


あの頑固ジジイの定食屋みたいに、パンチの聞いた味や刺激臭は一度もない。(働きたくはないでござる③参照)


一度、フェノを連れて行ったら、一口で気を失った。


たしかに、あの日の食事は初心者には厳しいかったが、俺やその場にいた常連には大好評だった。


見た目は、超前衛的芸術作品のようだった。青のスープに入ったピンクの触手と内蔵どころか鱗も取っていない生魚を一匹入れた豪華な御馳走だ。


鼻の奥にガツンと届く塩素系の匂い、そして口に入れるとほんのり香るラベンダーと酸味の効いた匂い。


一口食べると感じられる辛さの向こう側にある苦みに包まれた旨味。


一度食べたら忘れられない衝撃的な味だったな。


あの日以降、フェノに行こうと誘うが断れている。それも全力で。


まぁ、店の雰囲気からして女性向けではないからな。仕方ないか。


そんなことを考えながら、飯を食べ終えお茶を飲んでいると、俺たちの席の横に人が立っていた。


「…そ、そんな噂は本当だったのか…」


立っていたのはイリアだ。そういえば、最近見てなかったな。


「よう、最近見てなかったが、どこに行ってたんだ?」


「…魔境都市で鍛えると同時に実体化した魔物で資金稼ぎを…」


「へぇー、魔境都市か。確かにあそこのダンジョンはここよりも強い魔物が多いし実体化しているのは強くていい素材持ちが多いから資金稼ぎにはもってこいだな」


「ああ、それで今までよりも3ランク上の装備になったんだ」


「へーそれは凄いな」


「数年前だが焔の魔人が復活したらしい。勇者はその魔人を討伐するためにメキメキと実力を伸ばしている」


「焔の魔人か。そんな危険な者を誰が復活させたんだろうな?」


「それは分からない。ただ、封印されていた聖櫃は片手で運べるほど小さく、また封印を解くとその炎が近くの物をすべて燃やし尽くすくらい激しいらしい」


「ん?箱を開けると燃える?まさかな…」


宿の火事の原因がそれなら、思わぬ所で繋がったな。まぁ、そんな事あるわけないか。たまたまだな。きっと偶然だ。


「それよりもラグは結婚したのか?」


「ええ、私はラグと結婚しました」


今まで黙っていたフェノがイリアに笑顔で答えた。ただ、その笑顔がなにかとても恐ろしかった。


「…そうか、幸せになってくれ…」


そういうと、イリアは外へ駆け出そうとした。が、その手をフェノが掴んでいた。


「待って。私があなたの気持ちを知らなかったはずないでしょ?」


「だが…」


「いい?落ち着いて。こっちに座って」


フェノはイリアを落ち着かせるとフェノの隣に座らせた。


「確かに私たちは結婚したわ。私たち庶民は一夫一婦制よね?」


「ああ、だが、フェノは別れるつもりは無いんだろう?」


「ええ、もちろん。だけど、一夫多妻なのはどんな人たち?」


「それは…貴族だが…」


「そう貴族。貴族になるにはどうしたらいいか知ってる?」


イリアは首を横に振った。


「当代限りの名誉男爵なら王国に献金すればなれるの。そして彼には献金しても問題ないくらいの財力があるわ。そうよね?」


フェノが俺に話題を振ってきた。


「ああ、問題ないくらいあるぞ」


「ほらね。それに名誉男爵には義務も何にもないから。複数のお嫁さんを貰うなら財力が無いと幸せにできないからって国が認めた制度なの。だから私たちは幸せになっていいの」


「…ラグ、結婚してくれる?」


イリアの上目での懇願だ。破壊力抜群だ。


「もちろんだ」


だって考えてみろ。金髪のボンキュボンの美人に求婚されてるんだぞ。


断る理由が見当たらない。


「だが、いいのか?相方のナーガや勇者、他の者たちはどうする?」


「ナーガは…魔境都市で…」


あそこのダンジョンは強い魔物が多い、きっと助からなかったんだろう。


「いい男捕まえて結婚しちゃった。今なら素直に祝福できそうだ」


「紛らわしい言い方するな!で、他の者は?あの皇国からきた騎士と魔法使いは?」


「ええ。彼、騎士のほうは皇国に用があるってさっき国に帰った。魔法使いの彼女だけど、魔境都市から商業都市に来る間に居なくなっていた。こちらには商人の護衛をしながら帰ってきたが、野営中に朝起きたらいなくなっていた。周囲には街も村もないような場所だ。どにに行ったのか見当もつかない」


と、いうことは今の勇者のパーティーメンバーはイリアと勇者の2人きりか。もうダメじゃん。パーティー崩壊してる。


こんなんで魔人を倒すって無理だな。


「それで、街に戻って今度の事を考えようってなった。攻撃魔法使いと回復魔法使いが抜けたんだ。補充するか、それとも解散か?と。皇国騎士の彼は解散すると言って国へ、私もナーガがいなくなって暫く休養したいから解散と。あの勇者様はユウジのところに行くと言っていた。おそらくは向こうのパーティーに入るのではないだろうか」


「なるほど、パーティーは解散してるのか。じゃ、結婚すっか」


「ええ、お願いします」


まずは貴族にならないとな。


ん?貴族?


…貴族向けに何か金儲けが出来そうな案が浮かんだぞ。


とりあえずは、貴族になってからだな。


冒険者ギルド長に相談でもしてみるか。





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