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おっさんと戦いの日々

俺はワイバーンと戦っている男たちの隙をついて屋敷の侵入に成功した。


といっても、3階の窓が破壊されていて簡単に侵入することができた。


おそらく、ワイバーンが欲しているものがここにあるに違いない。


俺は部屋を一つずつ開けて確認しながら進んでいった。


3階、2階と何もなく、1階を調べたらすぐに見つかった。


小さなワイバーンだ。助けを求めて鳴いている。


コレは駄目だろう。


魔物の幼体を攫っては親が探しにくるのは当たり前だ。


生きている魔物を街に連れてくるのこは禁止されているし、見つかれば死罪は確定。関係者全員が死刑になる場合もあると聞いた。


まぁ、そうだよな。たった一匹の為に街が大混乱になっているんだ。


禁止されない方がおかしい。


コイツは親に返したほうがいいな。


上空を旋回するワイバーンを全滅させることもできるが、それは筋が通らない。


む、人が来たようだ。一旦離れるか。


俺は窓を開けると、外に飛び出し壁に張り付き中の様子を伺った。


「な、なんだこりゃ!」


入ってきたのはひげ面の男、金剛戦斧と言われた男だった。


「フフフ、見て分かりませんか?ワイバーンの子供ですよ」


いつの間にか男の背後に商人が立っていた。


「てめぇ、こんなもんを持ち込んでいたのか!」


「ええ、今までも何度かやっていますが、今回は少し失敗しましたね。まさか街まで追いかけてくるとは思いませんでしたよ」


「クソっ!コイツのために何人の冒険者が犠牲になったと思ってる!」


「知りませんよ。そんな事。どうですか?あなたも此方側に付きませんか?その力をもっと有効につかえますよ?」


「うるせぇ、デブ!てめぇみたいな胡散臭い奴の仲間に死んだってなるか!」


「そうですか、残念ですね。では望み通り死になさい」


商人が手を軽く振っただけで激しい衝撃波が飛び金剛戦斧に直撃した。


「ぐあぁ!」


衝撃波に直撃し壁を壊しながら表まで吹き飛んだ。


地面にぶつかり、数回跳ねると地面に転がった。


「…クソがっ!」


男は立ち上がろうとしたが、全身血まみれで起き上がる事さえ難しかった。


「フフフ、金剛戦斧でも私には敵いませんね」


壊れた壁から商人が出てきた。


そして、その商人を狙うようにワイバーンが急降下してきた。


「うるさいトカゲさんですね」


商人が手を振ると急降下していたワイバーンが衝撃波に弾かれて地面に落ちていった。


商人はワイバーンに目もくれず、倒れた男に歩み寄ると男に向かって手を突き出した。


「フフフ、私の誘いを断ったのをあの世で後悔しなさい」


そして、商人が手を振り上げた。


「そこまでだ!」


「だ、誰ですか?!」


商人が辺りを探していると館の屋根に一人の男が立っていた。


銀色の鎧をまとった騎士のような姿だった。


「自らの欲望のために多くの善良なる者たちを犠牲にする。そして、今もなお私利私欲の為に罪なき者の命を奪おうとする…。人、それを『エゴ』と呼ぶ!」


「な、名前を名乗りなさい!」


「貴様に名乗る名前など無いっ!とうっ」


俺は屋根から高く飛び、商人に向かって飛び降りた。


「私の邪魔をしないでいただきたいですね」


商人が腕を振るい飛んでいる俺の全身に見えない衝撃波が襲い掛かった。


衝撃波に飛ばされるが空中で一回転して地面に華麗に着地した。


「フフフ、少しはやるようですね。今度は連続で行きますよ」


商人は腕を連続で振るうと衝撃波が幾重の波になりながら地面を走ってきた。


俺はそれを見ながらサイドステップで避けたり、側転しながら避けたり、時にはバク転しながら避けたりしていた。


「なかなかしつこいですね。さっさと死になさい」


商人が今まで以上の速さで腕を振り始めた。


俺は飛んでくる衝撃波を大きく飛び越えるようにジャンプした。


そのまま衝撃波どころか商人も飛び越えた。


「フフフ、着地が一番無防備だと知らないのですか?…ん?」


だが、いつまでたっても俺は商人の見ている着地予想地点には降りてこなかった。


「どこを見ている?こっちだ」


商人の後ろに立っていた俺が声をかけると驚いた顔のまま腕を振ってきた


だが、振ろうとした腕は俺が手で押さえつけた。


「な、なんと!」


「これで衝撃波は飛ばせまい。そしてこれがその魔道具だな」


俺は商人の指に付けていた指輪を抜い…あれ?抜けない。こいつ指がむくんで外れなくなっている。

まぁ、いいや。引っこ抜こう。


「ぎゃあああああ」


指輪は外れた。そしておまけの()()()()()()()()外れた。


この程度に痛みで悶えて動けなくなるなんて…。


まぁ、死にはしないだろう。


今のうちにワイバーンの幼体を返すか。


俺は屋敷に入り幼体が繋がれている足かせを外した。幼体は弱った様子もなく、俺の腕を噛り付いている。外してやったのに、こいつ理解していないのか?


そのまま抱きかかえると外に出た。


一層ワイバーンが激しく吼えてきている。


俺はワイバーンの旋回する高さまでジャンプすると、ワイバーンに向かって幼体を軽く投げた。


ワイバーンの背中に幼体が着地したのを見た他のワイバーンは1体、また1体と街から離れて行った。


全てのワイバーンがいなくなると、冒険者たちがそれぞれの生き残ったことを喜んだ。


あの、商人にやられた金剛戦斧と呼ばれた冒険者も他の者から回復魔法を受けている。


そして、商人は冒険者に捕縛されていた。ほかにも、屋敷にいた使用人も数人拘束されている。


「助かったぜ。借りができたな」


いつのまにか回復していた金剛戦斧が隣に立っていた。


「気にするな。悪は必ず滅ぼす。今回はその商人から辿ればたどり着くかもしれない。だが、悪しき者が権力を持つ場合も多い。今回のように知らぬ間に悪に加担してる場合もある。気を付けよ。そして…」


「そして?」


俺は救護作業を行っている若い冒険者を指さした。


金剛戦斧と言われる男も若者を見た。


「未来ある若者のために、善良なる人々が安心して暮らせる世を作るために私は戦い続ける」


「へへへ、あんたすげぇよ。っていねぇし!」


振り返ると銀色の騎士が消えていた。


「よーし、俺も誰かの為に何かしてみっかな?」


「ジジイ!独り言キメェぞ!さっさと瓦礫をどかすのを手伝え!」


「よーし、まずは街の復興からだな!瓦礫を壊すなら俺に任せろ!あと、ジジイっていうな!」


金剛戦斧は声のする方へ歩いて行った。



俺は商業都市に戻る途中に商人から奪った指輪を思い出した。


もちろん、商人の指は捨ててある。


今さら戻って証拠品ですって渡すのも格好悪いし間抜けにしか見えない。


それに、風の魔法ウインドは風で切り裂く魔法だ。


衝撃波を放つ魔法なんて聞いた事がないし、見た事もない。


なんかレアっぽいからとりあえず、俺が預かっておこう。


俺が死ぬ前にギルドに持っていく…と思う。




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