おっさんと新しい事業の日々
セインをソファに座らせ、俺も対面に座った。
「で、相談事ってなんだ?」
「はい、実は私の勤めていた商会の会長一族が違法取引で捕まり、一族以外のメンバーで一番経験が長かった私が商会を引き継ぐことになったんです」
「ほほう、それはおめでとうでいいのかな?」
「いえ、前商会長が捕まる寸前に逃亡しようとお店のお金を持ち逃げした挙句に違法な魔道具を買って衛兵に怪我をさせてしまいました。商会から衛兵にはお見舞金を渡さないといけないし、運営資金も無いんです。それに…」
「それに?」
「取引先も違法取引で軒並み潰れてしまい、八方塞がりなんです。どうしたらいいか…」
「ふむ…、残った従業員は何人いるんだ?それと種族は?」
「はい、私を含めて7名です。私以外が全員獣人です」
「6人が獣人か…。丁度いいな。よし、話は分かった。俺に任せろ。セインはちょっとまってろ」
俺は女将を呼ぶべく、ロビーに向かった。
すると、鼻息が荒い女将が階段を昇ろうとしている所だった。
「女将、ちょっといいか?」
「ええ、何かしら?」
「この広いロビーの活用についてだ。女将の意見を聞きたい」
「…ええ、いいわよ。…まだチャンスはあるし」
コイツ、ユウジの部屋に行くつもりだったのか?まぁ、俺に被害が無ければ問題ない。
「よし、俺の部屋で人を待たせている。行こう」
俺は女将と一緒に部屋にもどり、3人で俺の考えている新事業の話を始めた。
…
「そんな事でお客さんが来るかしら?」
「大丈夫だ。体が資本の冒険者だ。絶対に当たる」
「私以外が獣人ですが、本当に大丈夫ですか?」
「ああ、獣人の硬い体力と力が必要なんだ」
「どれ、2人には実際にやってもらおうか…くっくっく…」
俺は2人に実際に体験してもらった。
結果は良好。
その後、女将は仕切りの壁や必要な物の調達へ建築ギルドへ向かい、セインは今ある商会の店舗を売り払うべく書類を持って役所へ向かった。
よーし、明日から忙しくなりそうだ。
とりあえずは、明日から獣人たちへの指導だな。
この世界には、この業種を見た事なかった。絶対に成功する。
それから10日後、宿のロビーの片隅にマッサージ店がオープンした。
体が資本の冒険者はすぐに食いついた。
癒しの魔法では取れない体のコリが取れるとすぐに評判になった。
力の強い獣人で筋肉質の冒険者のコリをほぐす。
狙いは大成功だ。
しかも、指名制度も取り入れた。
力の強い男の獣人にしっかりほぐしてほしい人、力が弱くてもテクニックで絶妙な場所をほぐしてほしい人、好みの異性にほぐしてほしい人など多くの思惑があるが、指名料はそのまま本人の懐に入るようにしているので、マッサージ師のやる気も一段上がる。
結果は、大成功。
ホテルの宿泊客以外も利用しているようで、セインは嬉しい悲鳴を上げていた。
一応、セインがマッサージ店の店長だから、毎月一定額をホテルに払うようにしてあるし、開業にあたっての施術台やタオル等の備品代など色々と金が掛かったが全て俺が出した。
利子が0で返済期限が世界が崩壊するまで、という超気長な返済プランだ。女将と同条件なので誰からも文句が出ることは無いだろう。
将来的にはマッサージ店の2号店、3号店と出していけたらいいな。
まぁ、気の長い話だがそのうちセインに話しておこう。
さて、そんな感じで潰れる寸前の商会を繁盛店に変貌させることに成功した。
これが、商業ギルドでも話題になり俺に面会を求める商人が現れてきた。
多くの商人が俺に近づき甘い汁を吸おうとしていたが、
一人だけ毛色の違う商人がいた。
名前はアマンダ。奴隷商の女主人だ。
煙管で煙草をふかして、キツイメイクをしていて、どこからみてもイメージ通りの奴隷商の女主人って感じの妙齢の女性だ。
俺は新たなる事業を思いつき、彼女の話に耳を傾けた。
主人公が冒険しない。異世界冒険譚。
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