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おっさんと新しい日々

新しい拠点での初睡眠はとても快適だった。


無音ともいえるほどの防音効果の室内、窓には分厚いカーテンで昼なのに真っ暗だ。


ベットの上で軽く首を解してから着替える。


うむ、シャツにズボンと一般的な恰好だ。


そして、部屋を出て食堂へ向かう。


無人の倉庫とリネン室を通り、ロビーに出る。


絨毯が敷いてあり、高級感が漂っている。


フロントには女将と数名の従業員がいて、女将と目が合うと深々とお辞儀をされた。


俺は軽く会釈して2階へ向かう。


階段を上るとすぐに食堂の入り口が見える。


営業初日の昼の時間だ。人がいないと思ったが、宿泊客以外も食事が食べられるようで多くの人が食事を楽しんでいた。


俺は空いている椅子に座り、メニューを眺めた。しばらく思案しウェイトレスを呼んだ。


やってきたのは若い女性で、あの姉妹ではなかった。


「色々とメニューがあって迷ってしまう。君がオススメする料理をお願い出来るか?」


「わかりましたぁ。私のオススメですとー、ちょっとお値段高くなりますが、よろしいでしょうか?」


「ああ、大丈夫だ。美味しいのを頼むよ」


「かしこまりましたぁ」


少し間延びしたようなおっとり系の彼女はオーダー表を書きながら厨房へと向かっていった。


旨い料理が出てくることを期待しよう。


少し待つと別の女性が料理を持ってきた。


オークのステーキセットだ。前の宿の時からの名物料理だ。かかっているタレが旨い。


いくら食べても食べ飽きない味だ。



美味しい食事が終わり、食後のお茶を楽しんでいると目の前の席に誰かが座った。


フェノだ。


ギルドの受付主任で、最近の冒険者たちからは鉄仮面と呼ばれるほど無表情らしい。


俺の前では泣いたり、笑ったり、困ったり、表情豊かに見え鉄仮面と呼ばれる理由が全然理解できない。


「やぁ、フェノ。休憩かい?」


「ええ、余裕がある時間ですから皆で順番に休憩よ」


彼女は近くのウェイトレスにお茶を頼むと食堂をきょろきょろ見回してた。


「すごい綺麗な所ですね。こんなに良い所が冒険者割引で泊まれるなんて羨ましいです」


この宿は冒険者ギルドと提携している宿で、冒険者なら相場の70%で宿泊が可能だ。


さらに高ランクの冒険者が連泊すると最大50%まで割引される、超割引も実施している。


ギルドも宿も出資者が俺なので、提携させることなんて簡単だった。


「フェノも泊まってみたらどうだ?最上階なんて眺めが最高」


「そうなんだ、ラグの部屋も最上階にあるの?」


「俺の部屋?一応オーナー部屋ということで1階にある。防犯上の理由で家族以外には場所が教えられないが、フェノなら問題ないだろう」


俺の妹分だからな。


「え、いいの?」


「ああ、問題ない。場所を教えよう」


戸惑うフェノを引き連れて席を立った。


食堂の出口で会計をして階段で1階に降りる。


ロビーを通り人気のない通路を歩き、リネン室、倉庫を過ぎる。


そして、オーナー室と書かれた部屋の扉を開ける。


「ようこそ、オーナー室へ。君が初めてのお客さんだ」


「あ、ありがとう。ここがオーナー室…」


フェノを部屋に招き入れて案内する。


といっても、トイレと部屋風呂しかないが。


「あー疲れちゃった」


フェノは俺のベットに座り、すぐに寝ころんだ。


「疲れたなら少し眠っていくか?」


「もー、そうじゃないの!」


口を尖らせたフェノが枕を投げてきた。


わけわからん。


そろそろ時間というフェノをロビーまで見送った。


フェノが宿を出るとすぐに見知った顔たちが入ってきた


「ラグさん、こんにちわ」


「やあ、ユウジ。大荷物もって引っ越しかい?」


「ええ、今までの宿よりも安くて広くて綺麗だから、こっちに移動してきました」


ユウジの後ろにはパーティーメンバーの女性たちもいる。


皆がそれぞれに鞄やリュックをパンパンにしている。


「たしかに、冒険者が特に優遇されているからな。俺も泊まっているが、飯が旨いぞ」


「へぇ、そうなんですか。楽しみですね」


「お、フロントが空いたみたいだな」


俺の言葉でユウジがフロントを見ると女将の目が怪しく光っていた。


ユウジは女将のストライクゾーンなのか。


美人の人妻に好意を持たれるのも良い経験になるだろう。


着替えを覗かれたり、ボディータッチが多いとかドキドキ体験があるかもしれないな。


若人よ、ガンバレ。


その後もロビーのソファで座って入り口を見ていると、顔見知りの冒険者たちが続々とチェックインしていった。


皆、俺に気が付くと手を振ったりしている。もちろん、俺も手を振り返して答えている。


「あれ?叔父さん?」


声をする方を見ると姪のルインがいた。


攻撃魔法使いとして冒険者パーティーの一員として活動している彼女だが、今は普段着を着ている。


とても冒険者として活動しているように見えない。普通の町娘のような雰囲気だ。


「やあ、ルイン。元気そうだね。もうチェックインは済んでいるのかい?」


ルインは隣に座ると答えを返してくれた。


「ええ、オープンしてすぐにチェックインしたわ。おかげで見晴らしのいい5階の部屋が取れたわ」


「そうか、5階は見晴らしが良いから早い時間に満室になったようだね」


先ほどフロントで言っていたのが聞こえていたんだ。


「本当に遠くまで見えるの。街の壁の向こうまで見えるだから」


「それは凄い。きっと素晴らしい眺めなんだろうね。そういえば、最近は困った事はないか?俺ができる事と言ったら金で解決しかできないけど、少しでもお金で困ったら直ぐに言うんだよ」


直接的に手を出して助けるとフェノがうるさいからな。


まぁ、2ランクほど上の装備をしている彼女のパーティーなら同ランク帯の魔物なら余裕で倒せるだろう。


「お金は大丈夫よ。魔法の鞄で荷物沢山入るし。それに、良い装備と余裕を持った行程で無理しないって決めてるからね。まだ行けると思った所が引き返し場所と訓練所で習ったからね」


素晴らしい回答だ。十分な安全を確保しての活動なら怪我も少ないだろう。


それから少し話をして、ルインは部屋に戻った。


そろそろ夕飯にしようかと考えた時、ルインの兄セインが宿へやってきた。


「叔父さん…」


「どうした?珍しいな」


「相談があって、ルインからお金のことは叔父さんに相談しろって…」


姪も甥も可愛い子たちだ。助けてやるのが大人の務めだな。特にお金に関しては得意分野だ。


「ここでは話しづらいだろう。俺の部屋に行こう」


そういうと、ソファを立ち上がりセインを引き連れて人気のない通路へ向かった。


いつの間にか立てられた『関係者以外立ち入り禁止』の看板を避けて奥へ進む。


「叔父さん、こっちでいいの?」


心配そうなセイン。だが、問題ない。


「ああ、こっちだ。」


リネン室、倉庫を横目に進むと俺の部屋にたどり着いた。


「…オーナー室…」


「ああ、金貨の風呂に入って見たかったら、いつでも用意できるぞ」


あれは見ている分には羨ましいと思うが、実際にやると硬いし痛いし金属の匂いで臭かった。


俺はセインを部屋に招き入れた。




誤字脱字報告ありがとうございます。読んで頂けるだけで励みになります。


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