おっさんと予想外の日々
あの女勇者を助けてから数日がたった。
特に何も変わらない平凡な日々だ。
昼過ぎに起きて早く寝る生活だ。
そうそう、あの女勇者を助けた後のことだ。
早めの夕食を食べていた俺にイリアが抱き着いて感謝したんだ。柔らかな胸で窒息死するかと思ったぜ。
んで、抱き着かれている所にあの女暗殺者が訪ねてきて若干の修羅場になったが、イリアも一緒に3人で食事をして、一泊してから冒険者ギルドへ向かった。
イリアが酔っ払って一緒に寝ようというから、彼女のベットへ寝かせて眠るまで手をつないで撫でてあげた。
ギルド長へ事情があって命を狙われる可能性があるのと、料理が得意なのでギルドの軽食屋で働かせてほしいと言ったら、即答してくれた。
普段からギルド長の言うままに金を出しているだけあって、とても優遇してくれている。
持つべきものは金の力だな。
それと、女勇者への手紙だな。
差出人不明でギルド経由で渡してもらう。
内容は『わし鼻の司祭』
多分、これであの騎士なら勘づくだろう。名前を忘れたんだ、仕方ないじゃないか。
まぁ、結局は俺の物語ではないから、わし鼻の別の人が犯人に間違われていても、それはそれで良いアクセントになるだろう。
ギルド長へ手紙を渡すと、新しいギルドカードを渡してきた。
ギルド勤務者向けのカードだ。
これには冒険者カードと同じ機能と別でのランク付けがしてある。
一般職員用のXカード。
役職者用のYカード。
ギルドに多大な貢献をしてギルドが重要人物と判断された人物用のZカード。
俺はこのZカードを貰った。
以前の王都での演説とギルドに無償で貸し付けした金額を加味しての発行らしい。
小さい頃に夢見た、
冒険者でトップになってやるって夢が違う意味で実現した感じだ。
まぁ、このカードは生きている限り有効なので冒険者を引退してもいいかな?
そんなこんなでギルドから宿へ帰ると宿が文字通り炎上していた。
火事だ。
っていうか、燃えてるのが俺の泊っている宿だけではなく、その隣の宿のほうが勢いよく燃えている。
多分、あっちで出火したんだな。
で、鎮火できずに燃え移った感じか。
あー、女将さん、オヤジさんが泣いてるよ。給仕の姉妹も厨房手伝いの兄も泣きながら見ている。
他にも換金前の品を置いていたのだろう冒険者が炎の中に行こうとして止められている。
なんだか、一歩離れた場所で見ているとドラマティックな展開だな。
ちなみに、俺の部屋には着替えと武器(鉈)だけだ。
しかも着替えも半分以上は処分しようと考えていた物だ。
手間が省けた。
それからすぐに火事は鎮火した。
燃えたのは宿が2件だけだった。
怪我人はいるものの、死者は無し。
出火の原因は、ある冒険者がダンジョンで見つけた小箱を開けると炎が上がり、瞬く間に宿を包み込んだらしい。
そして、隣にある宿にも延焼して、この区画の建物2件が全焼した。
何か封印でもされていたのか?俺にはわからん。
そして、衛兵の詰所を借りて隣の宿屋の主人と燃え移った宿の女将と出火原因の冒険者と冒険者ギルド長と俺で今後の話合いが行われた。
この世界の宿には各部屋ごとに火事が燃え広がらないように魔道具で保護するのが普通だ。
お札に似た紙の魔道具を扉に貼ると貼られた扉の部屋の中で火事が起きると、その部屋の中の家財は燃えても壁や扉には燃え移らない優れた物がある。
隣の宿は宿賃を低価格に抑えるために必要な経費まで削ったようだ。
そんな宿で何かが封印されていた小箱を開け炎が上がり火事が起きた。
冒険者から謝罪の言葉とギルドからは見舞金がそれぞれの宿へ、それなりの額が後日渡される。
そして、隣の宿の主人は宿をたたみ、実家に帰るという。
ならば、丁度いい。提案がある。
俺が隣の土地を買い取り、女将に無期限で貸し与える。
今まで2つだった敷地を一つにして大きな宿を立てる。
宿を立てる資金の援助も無期限で貸し出す。
ただし、一つだけ条件がある。
宿の1階に俺の部屋を作ってほしい。
広くなくていい。今までの大きさの部屋で十分だ。
これが俺の出す条件だ。
ん?こんな良い話に裏がありそうだって?
違う、俺はオヤジさんの作る料理が食べたいんだ。
それに、給仕の姉妹の一生懸命な姿に好感を持っているし、
女将の経営手腕を高く評価している。
今は宿2件分の土地だが、いつの日か超巨大な宿の経営を任せてみたいと考えている。
女将、俺の見た夢を実現させてくれ。
…え?宿2件分じゃ足りない?
やるなら最初から大きな宿にしたい?
なるほど、女将の半分自棄になっている態度と目から見て俺が本気じゃないと思っているんだな。
よかろう、女将の思うまま全て金を出そう。
近隣の土地を全て買い上げて見せよう。
成金の底地からを見せてやる。




