おっさんと恋愛の日々
王都から帰ってきて数日たった。
俺は長旅の疲れから昼過ぎまで寝ている日々を過ごしていた。
つまり、いつも通りの日々ってわけだ。
今日はいつもと一つだけ違うことがある。
我が同士『悪食のビル』が朝から俺を叩き起こしたんだ。
ビルは出された物はなんでも食べる男だ。
どんなに不味くても、辛くても甘くても完食してきた男だ。
身長は2メートルを超え体重も200キロを超える超巨体だ。
禿げ上がった頭といつもニコニコした笑みと親しみやすい雰囲気で多くの友に囲まれている。
そんなビルが俺に相談があるといって宿屋の裏庭に2人で向かった。
相談事はなんてことない恋愛事情だ。
チンピラに絡まれている所を助けて貰い、それで一目惚れしたらしい。
相手は冒険者で名前がミザリンというらしい。
冒険者ギルドの関係者で友人はラグしかいないから相談に来たと。
なるほど、俺に恋愛成就の為に手伝ってほしいんだな。
お断りだ!
俺は生まれてから35年間、結婚どころか彼女もいなかったんだぞ!
それを彼女が欲しいから手伝えって?
俺だって欲しいさ。
彼女を持ったことがない人間に彼女の作り方を聞いても無意味。
だから、俺よりも適した人物を紹介しよう。
そこにいる給仕の姉妹だ!
「ふぇ?私?」
丁度、裏庭でシーツを干していた給仕の娘がいた。
もちろん、姉か妹か判断付いていない。
「ああ、君というよりも君たち姉妹に彼の相談に乗ってほしい」
「え、でも…」
「ビルはとても誠実な男だ。俺からの助言よりも同性からの助言の方が役に立つ事が多い。それに、彼の服装や身だしなみを整えるのにも、女性視点の方がいいだろう。これを使ってビルを男前にしてくれ」
俺は給仕の娘に金貨の入った袋を渡した。
「こ、こんなに必要なの?」
「大切な友が困っているのに力になれないんだ。少しでも助力したいという俺の気持ちだ。使ってくれ」
「…ラグ、すまん」
ビルが頭を下げて感謝するが、俺にしては端金くらいの感覚だ。
「気にするな、お前の為ならいくらでも金を積もう」
そして、俺は宿の中に入っていった。
別に、彼女が欲しいとか全然思ってないんだからね。
さて、メンドクサイ他人の恋愛話は女性に任せたので、俺はこれから何をしようか?
と、食堂を通ったら珍しい人物がいた。
イリアとナーガだ。女勇者と一緒に魔王の討伐に向かったはずだ。
話を聞くと、南のダンジョンの攻略に向かったがトラップに引っかかり女勇者と聖皇国の騎士と回復魔法使いが飛ばされたと。
いくらAランクの2人とはいえ、あてもなく探すのは危険と判断し、ギルドに報告。
普段なら自己責任ということで放置だが、聖皇国との兼ね合いを考えて捜索隊を組み救助に向かうらし。ただし、人数が集まり次第なので期日は未定と。
意気消沈しているが、冒険者の活動は自己責任だ。
…ただ、ユウジの幼馴染だ。ちょっとユウジが心配だな。様子をみて来よう。
で、やってきました南のダンジョン。
ユウジが心配だから女勇者の様子をみて来ようと思い、ここまで来たんだ。
身元がバレないように既に変身している。
決して、イリアの落ち込んでいる顔を見たくないとか、そんな事ではない。
このダンジョンは大型しかいないので、とても不人気なダンジョンだ。
巨大な体格はそれだけでも力があると分かる。
それゆえ、このダンジョンはBランク以上が推奨されている。
女勇者たちは登録したばかりだが、すでにDランクだ。将来有望だ。
一緒に飛ばされた2人の実力次第ではすぐに帰れるかもしれないし、ダメかもしれない。
とりあえず急ぎますか。
ダンジョン内を駆け抜ける。
出会う魔物は一刀して倒していく。
倒した魔物は魔素になり魔石を残して消えていく。
普通の冒険者なら換金するために魔石を拾うが俺は違う。
人命優先で先に進む。
拾うのがメンドクサイとか、唸るほど金があるから小銭に興味ないとか、ぜんぜんそんなことではない。
しばらく進み、地下21階に付いた。
ここまでダンジョンにはいって10分くらいだ。
結構迷ったが、地上までのルートはばっちりだ。
変身しているからオートマッピング機能が付いている。
これで、ルートを間違えるほうが難しい。
そして、21階の半ばで戦闘音が聞こえた。
かなり近い。
角を曲がると3人がオーガ2体と戦っていた。
女勇者と聖皇国の騎士がそれぞれ戦っているが、2人とも一発食らったらお終いだ。回復魔法使いが2人に補助魔法をかけ続けているが、いつまでもつやら。
予想通りだな。Aランクの2人に依存して身の程以上のダンジョンに行った感じだな。
助けるか…。
誤字の指摘ありがとうございます。拙い文章ですが、見ている方がいるだけで励みになります。




