働きたくないでござる②
多分、この島だと思う。
正確な場所は分からないが、この島だと思う。
砂浜を歩いていた俺と目の前にいる大量のオーク。
もちろん、それぞれが武器を構えている。
まぁ武器と言ってもこん棒や折れた木、石斧程度だが。
それぞれが敵意を持った目で見ている。
確かに怪しい存在だよな。
水しぶきの異変を嗅ぎつけて来てみれば、ローブの男。
警戒しない理由がない。
さて、オークの数はざっと、数えて・・・
多分、片手じゃ数えられないくらいだな。
冗談だ、おそらく30体前後。
普通のCランク、いやBランクでもソロでは厳しい数だろう。
そう、普通なら。
今の俺は強化鎧を着ていてる。
通常兵器では傷が付かないほど強固な頭まで覆われた鎧。
しかも、肉体は破壊せずにアストラル=魂を傷つけることができる武器もある。
最強の鉾と最強の盾を俺は持っている。
音速で動ける俺に追いつける者はいない。
そう、だからこんなオーク30体程度は瞬殺。
風が通り抜けるように俺が通り抜けるとオークがバタバタと倒れた。
魔物には魔石が体内にある。もちろんオークにも。
オークの心臓にある魔石を1体ずつ抉り取る。
普通なら剣やナイフで胸を裂き心臓にある魔石を取るが、俺は違う。
倒れているオークの胸に腕を押し込む。
それだけで溶けたバターにナイフを入れるように簡単に魔石まで手が届く。
ローブは汚れるので腕だけ巻くっている。
血の汚れって落ちないんだよね。
あっという間に魔石を回収し終えた。
この程度ならアストラルブレードを使わないでいけそうだ。
ここのオークはレベルが高くない。
俺は砂浜から隣接している森に入り、進んでいくと集落を見つけた。
もちろん、オークの集落だ。
規模は大きい。
倒木を立て草で屋根を作った粗末な家が無数にある。
それこそ100や200じゃない。オークの王国とでも言えるだろう。
叢に隠れながら移動すると他の家と違う建物があった。
船。
難破船だろうか、それとも捕獲された船だろうか。
船体が半分地面に埋まった状態で地面から生えているように見える。
船尾の舵のところに大きな穴が開いているので、そこから出入りしているのだろう。
しばらく様子を見ていると、その穴からオークキングが出てきた。
以前見たことがあるオークキングよりも巨大だ。
一般的なオークは2メートル前後、オークキングは頭一つ大きいくらいで大きくても2.5メートル。
だが、このオークキングは3メートルを超えている。
もしかすると4メートルあるんじゃないかというほどの巨体。
その巨体なオークがあくびをしながら叢に向かっていく。
俺がいない叢にむかって。
オークキングは叢に入ってしばらく歩くとしゃがみこみ力んだ。
なるほど、よく躾されているオークだ。
糞をする時は村の外でしているんだな。
俺はオークにそっと近寄るとオークの後ろからアストラルブレードで切り裂いた。
キングオークは声を上げる暇もなく息絶えた。
俺はうつぶせに倒れたオークを足で蹴りながら仰向けにすると、心臓にある魔石を抉り取った。
これで、任務完了。
って思っていたらオークの集落がざわめき始めた。
見てみると、5メートルはあろうオーガが数体、村を襲っていた。
縄張り争いか、迷い込んだか知らないが、オーガ1体にたいしてオークが10匹以上で当たっても勝てる見込みはない。
それこそオークキングが指揮して効果的な戦術を組まなければ負けてしまうほど知能は低い。
…この集落は終わりだな。すぐに崩壊する。
俺はローブのフードを深く被ると町の方向へ向けて走り出した。