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働きたくないでござる①

ドンドンドンドン!


扉が激しく叩かれる音で目が覚めた


「もうお昼ですよ!いい加減起きて下さい!」


あー、()()()か。


「ほら、早く起きて下さい!外はいい天気ですよ!」


眠いが、そろそろ起きるか。


「あー…起きた。起きたから、もう大丈夫だ。」


「わかりました。でも、その言葉今日2回目ですからね。朝も起こしたんですから。」


そういえば、昨日は朝に起こしてくれって頼んだっけ?


前回冒険者として活動してからちょうど3カ月。


今日、冒険者ギルドで依頼を受けないと本人未確認で登録抹消されてしまう。


3カ月に一回働くだけで、その後の3カ月間で使い切れない報酬が貰えるんだ。


たまには頑張ろうと思う。


俺は町民がきるような一般的な普段着に着替え、腰に鉈を全身を覆うようなローブを来て冒険者ギルドへ向かった。



俺が冒険者ギルドに着くと昼直前の時間だったので、ギルド職員以外だれもいなかった。


普通の冒険者なら朝一でいなかった。依頼を見て選び、明るいうちに終わらせるってのが常識だ。


夜中に動くっていうと、カンテラやたいまつが必要で足元もくらい。


しかも、遠くから人間がいるって丸わかりだ。魔物に襲ってくださいって言っているようなものだ。


経費が増えて危険も増える。夜に仕事する冒険者は間抜けって思われる風潮がある。


そして、依頼ボードを見てみるが…


んー、護衛、護衛、採取、護衛…


護衛はソロで受けるモノでもないし、採取に至っては生えている場所は分かるが季節が違いすぎる。


仕方ない、受付に聞くか。


「すまないが、Cランクで討伐の依頼はないか?」


「Cランクの討伐ですね?ちょっとまってね。」


とてもフランクな対応だ。


それもそのはず、彼女は受付嬢の主任の立場だが新人時代から知っている。


フェノと名札されているが、実際はババ・バンバという残念な名前だ。


どこかの言葉で『()()()』に聞こえるらしく、それを知ってからフェノと名乗っている。


当時を知る冒険者なら懐かしいと思う話題だ。


フェノが奥の戸棚から大きなファイルを持ってきて、机の上でページをめくった。


「んー、そうですねー。んー。」


唸りながらもファイルを捲りながら探しているが、


「ボードに張り付けている以外になさそうですね。ごめんねー」


さて、困った。


「あ、これならどうですか?一応、Cランクでも受けられる依頼です。」


ファイルを覗くと、古い紙が貼ってあった。


「ランクフリーの討伐ですね。え?依頼受けたの30年前じゃない。まぁ書類に不備はないけど…」


オークキングの討伐だった


オークキング自体はそんなに強くない。Cランクの冒険者で一対一なら勝てる。


ただし、群れになると話は違う。


オークは同種でも異種でも子供を作ることができる。


数が爆発的に増えて規模にもよるが数十から場合によっては百を超える冒険者で制圧する場合もある。


通常ならその危険度からすぐに討伐隊が組まされるが、この依頼は違った。


商業都市は陸路も海路も発達した都市。


航海中の船がたまたま立ち寄った無人島でオークの集団に襲われた。


その報告を受けた冒険者ギルトが、調査。


そんなに急がなくてもいいやー、みたいな感じで処理したのかもしれない。


だからランクフリー。


たまたま立ち寄った高ランクの冒険者に押し付けようとして忘れられた依頼。


「よし、これを受けよう。」


「30年前の依頼よ?それに、すでに討伐されているかもしれないし、なによりもどうやって島に行くの?」


「フェノ、知ってるか?海の上で右足が沈む前に左足で水面を踏めば沈まないんだ。」


周りで聞き耳と立てていた他の職員は思った


(バカだ。バカの発言だ!)


じっと俺の目を見つめるフェノ。


「ラグがそういったなら、大丈夫ね。すぐ行くんでしょ?一応、確認のために見送るわ」


「すまんな。」


そういって、フェノは手続きをしてくれた。




手続きを終えた俺はフェノを引き連れて港が見える場所まで来ていた。


俺はフードを深く被り、誰かわからないようになっている。


「では行ってくる。あまり近づくと水が跳ねるからな。」


隣のフェノの返事を待たずに、俺は堤防に向かった。


堤防の上から海を覗くと水面まではおよそ3メートル。結構高い。


俺はそのまま垂直に海に落ちると強化鎧を装着した。


その瞬間、世界が全て止まったかのように感じた。


ゆっくり水面に落ちる。


水面の浮力を両足の裏に感じる。


そのまま一歩踏み出す。


歩ける。


そして、また一歩。


その連続。


俺は事前に聞いていた島の方向へ歩いて行った。






その日、港から水平線の彼方へ向かう一本の水しぶきが舞う現象が確認された。


魔物の襲撃かと思われたが、冒険者ギルドでは魔物ではないと相手にされなかったそうだ。










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