おっさんと勇者の日々
あの騒動から数日後、召喚された勇者が街に到着と聞いた。
そして、今日も俺は冒険者ギルドでギルド長から金を毟り取られて、
いや、冒険者ギルドの支援の為に融資をしていた。
もう、夕方の時間だ。
多くの冒険者が報告に来ている時間だろう。
ロビーに降りるとユウジが黒髪の女と話していた。
ユウジはDランクの冒険者だが、戦いだけを見ればCランクの冒険者並に戦えるだろう。
だが、戦い以外は全然ダメらしい。それを仲間がサポートしてうまくチームとして纏まっている。
そんな話をフェノから聞いたことがある。
ユウジのチームはユウジ以外全員が女性だ。
いろんな所から恨みを買うのも仕方ないと思う。
そんなことを思いながらユウジ達の話に聞き耳を立てる。
…なるほど。あの黒髪の女の子が召喚された勇者か。しかも、ユウジの幼馴染。
で、ユウジのパーティーがユウジ以外が女性だらけなので嫉妬していると。
…若いね。青春してるね。おじさん、そんな青春ドラマ好きだよ。
「ラ、ラグさん!助けて下さい!」
…ッチ!対岸の火事が飛び火しやがった。
ここは、舌先三寸でうまく丸め込めてやろう。
「黒髪のお嬢さん、話は聞かせてもらった。まず、最初は死んだか、行方不明になったかはわからないが、会えなくなっていた友との再会を喜ぶべきじゃないか?それに、彼はコチラにきて生活基盤がないんだ。野盗や魔物に襲われてい死んでいたかもしれない。それを、危険な冒険者になり仲間たちが助け合いながら常に死との隣りあわせの世界で生きているだ。ユウジを助けてくれている彼女たちに感謝すればこそ、非難するのは筋が違うんじゃないか?」
「…そ、そうね。」
「それとユウジ。君も男だろう?永遠に会えないと思っていた友に再び出会えたんだ。ハグしてキスするぐらいの男らしさを見せたらどうなんだ?」
「そ、そんな事、人前じゃ出来ませんよ!」
「ほう、人前じゃなければ出来るんだな」
ユウジも女勇者も顔が真っ赤だ。青春している者を冷かしができるのもおじさんの特権だ。
「とりあえず、2人ともよく話し合うんだ。この後、どうするか?ユウジがパーティーを解散して彼女についていくか、またはパーティー全員で彼女についていく。そして、別々の道を行く。そして、黒髪のお嬢さんも聖皇国で言われた事が全てではない。何が真実なのか自分の目で見極めるんだ」
実際に魔法王国の市民は飢えることもなく、平和に過ごしている。豊かな食生活を得るために魔法で環境を整えていると聞く。一方聖皇国は神の名の下に多くの税を取り立てていると聞く。どちらが幸せか見るまでもない。
「貴様!何を言うんだ!」
おお、女勇者のお供の若い騎士が怒った。自国に不利な事は聞かせたくないんだな。
「すまんな。年を取ると一言余計に思った事が出てくるんだ」
「おのれ!我が祖国を愚弄するか!」
若い騎士だから頭に血が昇りやすいのか、腰の剣に手をかけた。
「剣を抜いたら死ぬそ?」
俺は彼に忠告した。
野次馬をしていた冒険者たちが俺を護るために立ち上がっていた。
ボロボロだった冒険者ギルドを無償で改装し、職員を味方にすれば冒険者も味方になる。
冒険者は単純で義理堅いのが多いからな。
「…むぅ!」
騎士は囲まれているのに気が付くと剣から手を離した。
「おお、怖い怖い。武器を持たない一般市民を襲おうとする奴がいるから俺は帰らせてもらう。みんなありがとう。今食べている分は俺が払っておこう」
「「おおー!ありがとう!」」
助けてもらった対価に金を払うのは当たり前だ。むしろ、金で済むなら楽だ。
素晴らしきは金の力。
冒険者から礼を言われながらギルドに併設してある食堂で全員分の支払いをしてギルドから出た。
さて、そろそろ資金が減ってきたな。
明日は、また狩りにでも行くか?




