おっさんと事後処理な日々
ミレーヌを護り切った日から2日後にイリマが帰ってきた。
ちょうど、俺は暇をしていたので俺の部屋で話を聞くことにした。
イリマが俺のベットに座ったので、俺が椅子に座った。
「ラグ、今回の助力感謝する。本当に助かった。」
「気にするな。俺たちの仲じゃないか」
「そ、そうか。ああ、それと領主の館は再建が始まり、完成するまでは別宅に住むそうだ。領主の座を狙った伯爵一族は王都で厳しい取り調べを受けるだろう。おそらく、この件に関わった者は処刑かそれに準ずる厳しい処罰になるだろう。これで、領主たちを狙う者はいなくなったそうだ。」
「なるほど、もうすべてが終わって安全な訳だな」
「それと、もう一つ。演劇の銀色の騎士で前口上が追加されて、好評らしい」
「…ゑ?」
「だから、あの戦いの前の正義の騎士みたいなセリフ。誰が劇団に言ったかわからないけど、すごい好評みたい。今度見に行ってみる?」
…オーケー、落ち着け。ラマーズ法で呼吸を整えるんだ。
公式に当てはめて考えてみよう
銀色の騎士=(ノリ+勢い)x(悪ふざけ+若気の至り)≒ 黒歴史
よし、封印確定だ。
山に埋めて10万年か100万年後に誰か掘り起こされるまで封印しておこう。
埋めた山は忘れないようにロストマウンテンと名付けよう。それがいい。
…なんて、現実逃避はこれくらいにして、おじさんになれば黒歴史の1つや2つ、10や20くらい普通にあるからな。気にしないぜ。
「ラグ?見に行くの?」
「ああ、見に行こうか。ちょっと面白そうだしな」
「本当?すぐに支度をしてくる」
イリマは部屋を飛び出し、隣の自室へ着替えに行った。
劇を見に行くのに剣や鎧は邪魔だかなら。
女性の準備は長いから、俺も少しはオメカシしていくかな?
それから一時間ほど経ち、イリマを迎えに行った。
ばっちりメイクを決め、冒険者らしからぬ貴族令嬢のようなドレスを着た彼女は美しかった。
たしか、イリマは貴族令嬢(家出中)だったな。
俺も、無精ひげをそり、髪をまとめ清潔感を出し服も上等な物に着替えていた。
多分、イリマに恥はかかない程度になっていると思いたい。
二人で劇場に向かう。もちろん、紳士としてエスコートさせてもらっている。
ただ、密着度が高い気がする。気のせいかもしれないから指摘はしない。
それがエロ紳士の嗜み。
で、劇を見たが完全なラブロマンスだ。
悪党に攫われた娘を助ける放浪の騎士。ありきたりな内容だが、娯楽の少ない世界には丁度良いのかもしれない。
あと、銀色の騎士役の男がばっちり顔出ししていて若い美形だったのが、現実との相違か?
そして、名乗りのシーンだ。
- 我こそは清らかな乙女を救う銀色の騎士なり!天から見守る神に代わり悪を倒す! -
うん、惜しい。なかなか良いセリフだが、アレはそこまで自己陶酔しているんじゃないんだな。第三者から見て立派で理想的な騎士を演じているに過ぎないんだ。それに、中身おじさんだし。
などなど、心の中で芸人並に突っ込みを入れながら鑑賞した。
次は食事だ。
ちょっとお高いレストランに来ている。まだピーク前の時間だったので、すんなりと通された。
イリマは貴族令嬢として作法が完璧だった。
凛とした姿がカッコいい。
そして、イリマから聞いた衝撃的な話。
召喚された勇者が近々やってくるらしい。
イリマとナーガの2人は召喚された勇者と一緒に魔王の討伐に向かうと。
これは、ギルドからの指名依頼であり、命の危険と判断した場合は自己の判断で勇者から離れて良いというので受けた。
そもそも、魔王は勇者を召喚した聖皇国と敵対している魔法王国の王であり普通の国だ。
ある程度同行したら、離れて良いとギルドの指名依頼の条件からウラを読み取った。
聖皇国に文句を言われない程度付き合って離脱するから安全だろう。
なるほど、政治的な取引が上層部であったに違いない。
メンドクサイ事山の如くだな。
食事を終え、宿に戻った。
イリマは俺の部屋に入りたがっていたが、面白い物なんて何もないぞ。
かなり飲んだイリマを抱えながら隣の部屋に行く。
ナーガが何か言いたそうな顔をしていたが、イリマを任せて部屋に戻った。
だって、トイレを我慢していたんだ。
まさか、今年に入って再び漏らすことになる危険な状況だったんだ。
さて、明日からいつもの日常だ。ゆっくり休もう。




