おっさんと決着の日々
亜流、ワイバーンが降りてくる。
ワイバーンは飼育ができるとは聞いていたが、初めて見たな。
さて、逃げられては面倒だ。
俺は館の瓦礫を持ち上げてワイバーンが着地しようとした場所へ投げ込んだ。
「ギャオオーン!!」
ワイバーンが再び上昇した。
「そこまでだっ!」
俺は炎に包まれる館を背に瓦礫の上から叫んだ。
「己の悪しき欲望のために無関係な者の命まで奪おうとする。たとえ、神が見ていなくても心ある者が神に代わって悪を倒す…。人、それを『天誅』と呼ぶ!」
「だ、誰だ!」
「貴様らに名乗る名は無い!」
俺は、瓦礫の上から飛び上がった。
そして、飛び上がった先で手に持っていたレンガを領主を拘束している暗殺者へ投げた。
狙い通り領主へ突き付けていた剣を持っていた腕に当たった。
威力から行って腕は折れただろう。暗殺者がひるんだ隙に領主は護衛の元へ逃げ出した。
そして、俺は空中にいるままミレーヌを担いでいる暗殺者へ向かってキックした。
威力よりも、吹き飛ばす意味合いが強い蹴りだ。
暗殺者は数メートル吹き飛び地面を何度かバウンドして地面に倒れた。
腕や足が曲がってはいけない方向へ曲がっているが気にしない。
投げ出されたミレーヌを空中でキャッチしてイルマの元へ連れて行く。
「彼女を頼んだ。俺はアレを倒す!」
アレ、すなわちワイバーンだ。
地上に着陸したワイバーンが俺に向かって火球を口からは放った。
「ワイバーンほどの火球であれば、並の防御魔法など効果がないわい!」
伯爵が勝ち誇った笑みで叫ぶ。うざい。
俺の後ろには領主やミレーヌ、イリマや護衛の人たちもいる。
俺が避けると彼らに甚大な被害がでるかもしれない。
ならば、気合でぶつかるのみ!
飛んできた火球にタイミングを合わせて気合を入れた拳を突き出す。
風船が割れるような甲高い音と共に拳圧に火球が掻き消された。
「な、なんだってー!」
ワイバーンも驚いていたので、ここがチャンス!
暗殺者が落とした剣を拾い、ワイバーンに向かって駆け抜けた。
「成敗!」
空を飛ぶワイバーンの首。
ワイバーンを切った剣はたった一撃で刀身の根本から折れていた。
「捕らえよ。あの者を逃すな!」
領主の声で伯爵は拘束された。
ここまで事が大きくなり、犯行の現場にいたんだ。言い逃れはできないだろう。
「シルバー卿、ごくろうさまでした」
顔色の悪いミレーヌがイリマに捕まりながら立ち上がった。
まだ毒が抜け切れていないのは一目瞭然だ。
「まだ、この都市には多くの悪がいます。この後も私たちと戦ってくれませんか?」
「申し訳ございません。私には成すべき事があります」
「そうですか。わかりました。それではこれを」
俺はミレーヌから貸し出していたネックレスを受け取った。
「ありがとうございました。シルバー卿。あなたは素晴らしい騎士でした。またいつか出会えることを…」
「心優しき者が穏やかに暮らせる世を望むなら再び出会えることもありましょう。それでは・・・」
俺は空高くに飛び上がり雲を突き抜けると街の外へ向かった。
街から少し離れた森に着地し、何食わぬ顔で街に戻った。
さて、ミレーヌも守り切ったし、騎士ごっこも終わりだな。
ノリノリで楽しかったけど、素顔でアレをやったら末代までの恥だな。
さて、明日から何をしようか?
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