おっさんとお祭りな日々
あの大氾濫の日から数日。
俺はいつも通り昼過ぎに起きた。
食事をしながら、今日の予定を考える。
よし、予定は未定だ。散歩にでも行こう。
街のメインストリートを歩いているんだが、何だろう。
銀色の装甲を着こんだ冒険者が多いな。
胸部だけとか、籠手だけとか、中には全身を銀色の鎧で覆っているのもいる。
光に反射して魔物の注意を引くし、音も出て隠れてやり過ごす時には不向きだな。
冒険者も多いが、一般の家族連れも多い。
ああ、そうか。今日は祝賀会の日か。
大氾濫を終え皆の無事を祝うために、領主が主催している。
広場にある屋台には多くの食事が格安で提供されている。
冒険者はもちろん、一般人も広場の食事ベースでそれぞれ楽しんでいる。
家族連れがいるということは、子供向けの屋台もある。
俺の目の前には沢山の子供が憧れた目で見ているお面がある。
銀色のお面だ。
どこかのイギリス生まれのアイドル超人のようなお面だ。
色が青なら完璧だが銀色だと正直微妙だ。
親に買ってもらって喜んでいる子供をみると、荒んだ心が穏やかになるな。
そして、その隣の屋台では武器屋の屋台か?
多くの冒険者が集まっている。
売っているものは…
緑色に塗った剣
なるほど、何か毒や特殊効果でもあるのか?
最近はそんな物が流行っているのか。
ああ、わかっている。
全ては俺がやらかした事だ。
今、この街では銀色の騎士がブームになっている。
ここに来る途中の劇場で銀色の騎士が上演していたし、子供たちに向かって屈強そうな冒険者が銀色の騎士がどれだけ強いかを語っていた。
俺は適当な屋台で料理を買い、空いている席を探していると…
「叔父さん、こっちこっち!」
可愛い姪のルインが手を振っていた。そこには姪っ子パーティーが揃っていた。
俺はそのまま彼女たちの席に座った。
彼女たちの話を聞きながら酒と食事をしたんだが、それにしてもよくしゃべる。
最初は高価な魔道具の感謝から始まり、ゴブリンを狩った話、オークを狩った話、戦闘中に他の冒険者が魔物を擦り付けしてとても危険だった話、そして俺が渡した魔法鞄のお陰でEランク冒険者ではありえない稼ぎで充実した装備や道具がある事、などなど。
おい、うら若き少女たちの浮いた話はないのか?まぁ、あったら対象者は去勢するけどな。
そんな話を聞いていると、ナンパな冒険者たちがやってきた。
若くて背が高くてイケメンの4人組だ。
楽しい雰囲気がぶち壊し。
一緒に飲みたかったり、依頼をしたいなら飾った言葉ではなくて、本音で話せばいいのに。
ってつい言葉に出しちゃったら、ナンパ失敗の怒りの矛先が俺にきた。
なんでも、最近Cランクに上がったパーティーらしい。
とりあえず、祭りの会場で争うのもなんなので、ギルドの訓練場へ行くとになった。
ルインたちは必至に俺を止めようとしているが、俺にとっては子犬がキャンキャン吠えている程度なんだよな。
それに、ルインに俺の良いところを見せる絶好に機会だからな。おじさんがんばちゃうよ。
と、思っていた時期もありました。
冒険者ギルドでナンパ冒険者が俺と模擬戦をするために申請したら、ギルド職員が目の前で申請書を破り捨てた。
見ていた全員ポカーンだ。
ギルド職員曰く、冒険者訓練所を作りギルドの建て替え費用まで出している出資者に向かって何事だと。
顔を真っ赤にして怒ってたよ。
確かに建て替え費用も出したが、そんなに大金だっか?
普段、冒険者の味方である職員が怒るなんて珍しいと、集まってきた冒険者の中に見知った顔があった。
イリマだ。
俺が片手をあげて挨拶すると、彼女がやってきた。
「どうしたんだ?」
「さぁ?俺が彼らと模擬戦しようとしたら、止められたんだ。ギルドにお金で貢献してるから危険な事するなって」
「なるほど、ラグに勝負を挑むとは、その心意気、私がくみ取ろう」
なぜか、やる気満々なイルマ。
職員もAランク冒険者なら大丈夫ということで、ナンパ冒険者たちから有無を言わさず書類作成して逃げ場を封じた。
後は、祭りだ。
数少ないAランクの戦いを目の前で見れるんだ。生贄は多い方がいい。
周りの冒険者はナンパ冒険者たちが逃げないように囲みながら訓練場へ向かった。
「叔父さん、イリア様とお知り合いだったんですか?」
「ああ、まぁな。それよりも、憧れの人の戦いが見れるぞ。皆、見に行こう」
「「「はい」」」
俺たちも訓練場に見に行った。
ナンパ冒険者たちが傷つき倒れても、無関係の回復魔法使いが彼らを癒し再び立ち上がらせる。
ナンパ冒険者も絶対に勝てない戦いなのに、心が折れておらず立ち向かう姿は彼らが、この戦いで何かを学ぼうと必死だからだろう。姪っ子パーティーをチラチラ見てアピールしているのが若干腹が立つ。
そして、一人、また一人と心が折れて倒れていく。そして、最後の一人も倒れた。
うむ、力の差が歴然の相手に対して果敢に挑んだんだ。
今回、去勢は見逃そう。
俺は心の中で彼らの健闘を称え、頷いていた。
「叔父さん、イリア様を紹介してください」
「ん?ああ、いいぞ。おーい、イリマ!」
「私の名前はイリアだ。何回言えばなおるんだ?」
そうだったけ?昔、入間に住んだことあるからついつい間違えちゃうんだよな?
言い間違いはおじさんあるあるだよな?
姪っ子パーティーにイリアとその仲間のナーガを紹介していたら、冒険者ギルド長に呼ばれた。
今度はなんだ?ギルドも立て直し中だし、冒険者訓練所も増築している。
他に何かあるのか?っていうか、俺を便利な財布として見てないか?
まぁ、可愛い姪や妹分のフェノが関係している施設だ。
金がある限り融通を利かせようか?




