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おっさんとちょっと頑張っちゃう日々

フェノと飲みに行った数日後の夕方、俺は宿の裏庭で薪割りをしていた。


火の魔石を使った魔道具もあるが、一般的には薪の使用率が高いだろう。


値段も安いしな。


そんな時、突如としてサイレンが鳴った。


冒険者への緊急集合だ。


大人数の冒険者が即座に必要な場合のみ招集される。


俺は部屋に戻り、鉈を腰に差しローブを着ると冒険者ギルドへ向かった。




大氾濫




この街の周辺には3つのダンジョンがある。


そのうちの一つ。


北にあるダンジョン、ゴブリンの迷宮と言われている場所がある。


ゴブリン系しか出てこないので、低位の冒険者でも比較的安全に魔石を取りに行けるダンジョン。


そのおかげて魔物から得られる魔石の安定供給ができるようになり、街が商業都市と言われるまで巨大化した。


しかし、このダンジョンは氾濫がある。


数年に一度、ダンジョン内の魔素が飽和して大量のゴブリンを生み出しダンジョンから溢れさせる。


しかも、ゴブリンがダンジョンの壁や天井を壊して地上へ出てくるので、ダンジョン近くで戦うと後ろを取られて危険である。


よって、ダンジョンと街との間にある平原で大氾濫を抑えるのが常である。


今回もギルド長が指揮を執り対応に当たる。


そんな事を言っていたらしい。


らしいというのは、俺は混んでいるギルドが嫌なので、近くの食堂で飯を食いながら他の冒険者の話に聞き耳を立てていた。


ゴブリンには雑魚のゴブリンからゴブリンキングまで様々な強さがある。


と言っても、ゴブリンキングですらDランクであれば余裕で倒せる。


それに、大氾濫で出てきたゴブリンは武器を持っていない。


せいぜい、木の棒か落ちている石程度である。


正面から戦えば、傷を得るほうが難しい戦いである。





だから、俺は参加するつもりはない。


けっして、楽をしよう。とか、メンドクサイとか思っていない。


ゴブリンの氾濫は若手には良い経験値稼ぎになる。


若い芽を育てるのもおじさんの役目である。


だから俺は宿へ帰ってきた。



食堂で食事を食べているが、なぜか給仕の娘の態度が冷たい。


冒険者なら大氾濫の討伐に行けって目が語ってる。


他の宿泊客の大半は冒険者なので、今の食堂はガラガラだ。


ちょっと寂しいし、大氾濫の様子も気になるのでギルドへ向かおう。


ギルドでは職員が大氾濫の終了後に備えて、食事や回復薬の準備で忙しそうにしていた。


「あ、ごめんなさい。今は大氾濫で通常の依頼は翌日以降にお願いします」


ボケっと立っていた俺に職員の女性が声を掛けてきた。


たしかに、俺の恰好は普段着だ。武器(鉈)も持ってない。


フェノも見当たらないので、俺は戻ろうとした。


「大変だ!大氾濫だ!!」


突如やってきた衛兵が叫んだ。


「あら、それならみんなで対応中よ?」


近くの職員が微笑みながら答えた。


「違う!北じゃない!ゴブリンじゃなくて、南だ!南から()()()()できてるんだ!」


通常の魔物は違う種族は敵とみている。異種で群れることは殆どない。


それに、南のダンジョンは巨大種が多く、それだけ力も強い種族が多い。


そのダンジョンはBランク以上のパーティーで向かうのが一般的な強さだ。


今、街にいるのは対人戦特化の衛兵と怪我や不調でゴブリンの大氾濫に参加できなかった者ばかりだ。


彼らに南の大氾濫を抑えるなんて無理だな。


しかたない、おじさんがガンバルか。



俺は宿へ戻り準備をしようとしたが、遠くから魔物の叫び声が聞こえた。


もう、魔物は街の近くまで来ている。


俺は建物の影に行くと飛び上がり、強化鎧に変身すると屋根伝いに南へと向かった。


俺が南門に近づくと、魔物たちの咆哮が大きくなっていた。


道には逃げ惑う人々で半ば混乱していた。


門の上に衛兵が10人ほどいるが、右往左往している様が見える。


ゴブリンの大氾濫と違って、こちらは数が少ない。


せいぜい100体ほどだ。


俺は門の上から魔物の群れを睨んでいる隊長鎧を着こんだ人物の隣に着地した。


「っ!誰だ!」


「アレは俺が引き受けよう。万が一取り逃がした場合は教えてくれ」


「一人では無理だ!」


「問題ない。あとは頼んだ」


俺はその場から魔物の群れに向かって飛び込んだ。


俺の視界は強化鎧の機能により、昼間のように明るい。


正面にいるサイクロプスの顔面に向かって膝蹴りをする。


勢いあまって突き抜けてしまった。


その後ろにいたゴーレムに空中にいるまま回し蹴り。


頭部が吹き飛び、その破片が回りの魔物に被害を与える。


さらに、空中にいるまま体勢を整えて、空を蹴り踵落としをキメラに食らわす。


ちょっと力が入り過ぎたのか、キメラとその後ろの魔物数体を巻き込み大地まで衝撃で切り裂いてしまった。


ああ、出力が上がっているな。


()()()()()()と街にまで被害がでてしまうな。


俺は腰にある2本の柄を取り出し握った。


すると、緑色に光る刀身が現れた。


俺の知っている刀身はせいぜい1.5メートル。


だが、この刀身は5メートルもある。


平時では取り扱い注意だが、今なら有効活用できる。


俺は刀身の長さと音速のスピードを生かして、およそ100体の魔物を1()()で全滅させた。







南門衛兵部隊 隊長




いきなり現れた。空から落ちてきたとでも言うのだろうか?


銀色の全身鎧に身を包んだ騎士。華美な装飾もなく、シンプルなデザインだった。


一人では危険だと言ったが、それを無視して特攻したと思えば、緑に光る巨大な剣が無数に舞いあっという間に魔物が倒された。


万が一取り逃がしたら教えてくれって言ったが、魔物が逃げる隙もない。


Aランクの冒険者でも、あんなの無理だ。


まさかSランクか?







ラグ(主人公のおっさん)



超余裕。


視認はできるが、反応できないスピードで動き、一撃必殺の剣で攻撃。


100体ぐらい1分とか余裕すぎた。


過去の猛将が、戦いは数だとか言っていたが、あくまでも近いレベルの話であって、圧倒的な力の差では数なんて問題ないな。


さて、衛兵に終わりを伝えて帰ろう。


俺は門の上にいる隊長の隣に舞い降りた。


「どうだ?大氾濫の魔物はまだいるか?」


「…いや、動く物は何も見えない。」


「そうか。あとの事は任せた」


「ま、待ってくれ、冒険者なんだろ?せめて名前だけでも!」


俺は何も言わず高く飛び上がり、彼らの前から姿を消した。


名前聞かれても、答えるわけにはいかないし、偽名なんて考えてなかったからな。



俺は超上空で変身を解き、街の建物の影に着地すると何食わぬ顔で宿へ戻った。


宿から冒険者ギルドまで歩いて15分。


冒険者ギルドから出て南門で魔物倒して宿へくるまで15分。


アリバイは完璧である。





翌日、冒険者ギルドから呼び出された。


というか、今回もフェノからだ。


ふむ、今回はうまくやったと思ったんだが、解せん。


ぷりぷり怒る可愛いフェノに付いていった先は会議室だった。


誰もいない会議室に男と女。オフィスラブって感じで興奮しないか?


なんて、バカな事を考えていたら怒られた。


街では銀色の騎士の話題で持ちきりらしい。


颯爽と現れ、街の危機を救い、名も名乗らず立ち去る。


誰もが憧れる英雄の誕生。


フェノに何故バレたか聞いたら、


何日か前と状況が一緒だったし、ゴブリンの大氾濫に参加していなかったし、何よりも助けてくれた人の姿を忘れるわけがない。と。


そういえば、フェノが誘拐された時に俺の強化鎧姿を見ているんだよな。


まぁ、フェノならバレても問題ないし、誰かに言うようなタイプでもないだろう。


俺とフェノだけの秘密って事にしたら、なぜか喜んでくれた。わけわからん。


で、今回の北の大氾濫について結果を聞いてみた。


死者はいないが数名のけが人が出た程度。


南の大氾濫を聞き、Bランク以上の冒険者を向かわせたが空振りに終わり戻ってきた。


その分、討伐速度が遅くなり夕方から始まった戦いが深夜まで及んだ。


多くの冒険者は今日は休んでいるだろうということだ。


ちなみに、フェノは後方の指揮をするために冒険者ギルドの奥にいたらしい。


食事や回復薬の準備に報奨金の準備、領主への報告や衛兵との連携などなど。


しかも、ゴブリンの大氾濫が終わったら、南の大氾濫と銀色の騎士の調査と今でも忙しいようだ。


完全に俺が余計な仕事を増やしたな。


正直すまんかった。


今度、ギルド職員に何か差し入れしよう。





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