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突然ステータスが見えるようになった世界で  作者: 朝丸
第1章 改良パッチは唐突に
5/21

5 勇気をふりしぼって、名乗り出る

「……ということで、先程の戦いを思い出してもらえれば分かると思いますが、私とあそこの二人には魔法のような力が働いているんです。理解しにくい点もあるでしょうが、SNSやラジオが機能していない現状では、私たち自身が自分の身を守らなければならないと、私は思っています」


「「「「「…………」」」」」


「彼らの戦いを見ていた人なら分かると思いますが、ゴブリン……先程の小さい人型の生物です、そのゴブリンであれば、突き落とすだけで倒す事が可能です。『安全地帯』で皆さんを守りながら、私と浅間くんでサポートしますので、次、敵が出てきた時、皆さんに倒してもらいたいんです」


 長い説明の最中、聴いていた人たちは終始無言だった。まあ、本当に訳の分からない状況だろうからな。生き物を殺すのに躊躇いを覚えている人もいるだろう。


 だが、ゲームみたいでゲームでない世界、これが現実だ。歩いている途中で人と出会う事はなかったが、そこかしこに()()()()()()()()()

 奮闘していた綾瀬さんも、何匹かには横を抜かれたらしいから、そいつらに襲われながらあの人たちは逃げたのだろう。


 まだ、人間とゴブリン、どちらの死体も見つかっていないため、恐慌状態にはなっていないが、次のスポーンでどうなるかはわからない。


「警察や自衛隊に助けてもらえればいいんですが、個人的にはそれが最善だとは思えません。あの不思議な声の言う通りなら、銃や兵器が効かない敵だって出てくるかもしれな……」


 そこまで綾瀬さんが喋っていた時だった。浅間と背中合わせで線路上を警戒していた俺の視界に、青い光がいくつか生じる。

 そこから出てきたのは、ゴブリン数匹と……一回り体が大きいゴブリンだった。そいつだけ、頭上に何も表示されていない。


「出たぞ! 『安全地帯』!! なんか体がでかいやつもいる!!」


「皆! 固まって壁まで移動するんだ!!」


 すばやくスキルを発動し、怯える女性陣を連れて移動する。走ってくるゴブリンたちに悲鳴が上がるが、ある程度まで近づくと見えない壁にぶつかったように進撃が止まった。


 やっぱり取っておいて良かったな、安全地帯。


「とりあえず、俺たち3人でパーティを組もう。経験値共有の実験も兼ねて、あのでかいやつだけは先に倒しておきたい」


「そうだね。僕の魔法で削れば安全に行けそうだ。相手が遠距離攻撃を持っていなければだけど」


「大川くんが動くのは危ないでしょうから、私が浅間くんを守る感じでいきましょう」


 綾瀬さんの口調が変わっていないが、そんな事にツッコミを入れられる状況ではない。ステータス画面からパーティ画面へとんで、二人のパーティ登録を済ませる。


 警棒を構える綾瀬さんの後ろで、浅間が右手を前につきだす。


「とりあえず、攻撃魔法はこれかな……『ファイアーボール』!!」


 手の平から火の玉が飛び出して、曲線を描きながらでかいゴブリンに向かっていく。ゴブリンは反応はしたものの避けきれず、胴体に当たった瞬間火の玉がはじけて爆発した。


 火傷を負ってフラフラしているが、まだ倒せていないようだ。


「倒せてないぞ、もう一発だ!」


「よし、それじゃあ……『ファイアーアロー』!!」


 今度は火の矢が出てきて、先程よりも速いスピードでまっすぐゴブリンへとんでいく。避ける間も無く頭に命中したそれは……ゴブリンの首から上を消し去った。


〈ホブゴブリンを倒しました。経験値を2P獲得しました〉

〈レベルが6になりました。ステータスが上昇しました。スキルポイントを2P獲得しました〉


「よし、倒し切ったみたいだな。経験値は俺に2P入って、レベルも上がったぞ」


「僕もですね。レベルは上がりませんでしたが」


「私もレベル4になりました。新しいスキルは……なさそうなのでまた『身体強化』ですね」


「俺は……『経験値増加』のカンスト優先にするか」


 5ポイント貯まるまでは我慢だな。


「はい、それでですね。今あそこで突進を繰り返してる小さいゴブリンを、皆さんに倒してもらいたいんです。一回倒すだけで十分な事が、今判明しました。どなたか、協力してくれる人はいませんか?」


 周りでゴブリンがギャアギャア言っている中で、再び説明を始める綾瀬さん。少し焦っているのか、説明がお試しを勧める販売員みたいになっている。


 案の定、尻込みを続ける空気になってしまったが……そんな中、一人の女の子が前に出てきた。


「あ、あの! 私、やろうと思います!」


 ガミちゃんである。声が裏返りながらも、その目はしっかりと綾瀬さんを見つめていた。


「大丈夫ですか? 無理を押し付けるつもりは無いんですよ?」


「まだちょっと怖いですけど……いつまでも先輩たちに任せてられませんから!」


 怯えているのが伝わってくるが、決然とした態度を貫こうとしている。と思ったら、ガミちゃんは振り返って皆の方を向いた。


「み、皆さんも、このままでいいんですか? 先輩たちに全部押し付けたままなんて、さ、さっきみたいに助けてもらえるのだって……いつまで続くかわ、分からないんですよ? 先輩があいつらに倒されちゃったらどうするんですか?」


「……わ、分かったわ。私も、そ、そいつらを倒せばいいんでしょ?」


「! ありがとうございます!!」


 俺と同じ車両で腰を抜かしていた婦人がガミちゃんに続き、それに呼応して次々に皆が声をあげる。震えながらも必死に訴えるガミちゃんのおかげで、ここにいる全員が覚悟を決めたのだった。


 小学生から、結構な大人まで、年齢層はバラバラだったが、全員、ガミちゃんの演説に心を動かされたらしい。

 皆、真剣な表情で綾瀬さんを見ている。


「では、皆さんはそこの大川くんのそばから離れないように。私が一匹ずつ吊り出すので、浅間くんがサポートしながら一人ずつ来てください。では、よろしくお願いします」


 結果、今回の襲撃と、駅までの移動途中で再びあった襲撃で、全員のレベル上げが完了したのだった。

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