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突然ステータスが見えるようになった世界で  作者: 朝丸
第1章 改良パッチは唐突に
21/21

21 閑話 とある女性運転士が語る駅内恋愛事情

この話で、一旦投稿はストップです。

〈ゴブリンを倒しました。経験値を1P獲得しました〉

〈レベルが1になりました。ステータスが解放されます〉


 ステータスなるものを手に入れた時、私は必死に戦っていた。


 頭の中に響いた不思議な声に、混乱したままゴブリンの襲撃があったあの時。目にしたモンスターの気色悪さに思わず悲鳴をあげた私は、乗客が逃げる時間の確保のためにとにかく足止めに必死だった。


 幼い頃からお父さんに習っていた警棒術だけど、基本的に荒事とは無縁だった私には二十を超える数の敵との戦闘なんて経験がない。

 殲滅を目的とするなら一匹ずつ対処すべきだったけど、焦っていたあの時は、逃げる人を追おうとする個体を止めるのが精一杯でそんな事を考える暇もなかったのだ。


「加勢するぞ!」「よしきた!」


 その声が聞こえた時、思わず耳を疑った。

 動ける人は全員逃げ出して、残っているのはゴブリンに怯えてまともに動けない人だけなのだと。

 そう思っていたところに、突然若い男の子たちの声が聞こえたのだ。


 そこで初めて、私を無視して電車に張り付いていたゴブリンがいなくなっていることに気がついた。助けなきゃ、という一心で警棒を振るっていたら、いつのまにか視野狭窄に陥っていた事にも。


 彼らがいなかったら危なかったかもしれない。それだけ気を張っている状況では、ゴブリン相手でも不覚を取っていたかもしれないのだから。



 加勢してくれた彼ら二人の第一印象は、全く違うものだった。

 ノブくんが現実主義者(リアリスト)で、浅間くんは楽観主義者(オプティミスト)


 元はただの学生という点は共通しているのに、この世界改変を浅間くんが前向きに捉えているのに対して、ノブくんはとにかく冷静に考えていた。

 ゴブリンを投げ落とした件も、怪我人がいないにも関わらずノブくんは罪悪感を覚えていた。戦闘時に比べてどこか弱々しい姿を見せる彼の頭を、思わず撫でてしまったほどだ。


 だから、『最初の適応者』がノブくんであることには驚いた。そっち系の主人公に憧れた浅間くんが、ノブくんを戦闘の場に引きずり込んだのかと思っていたけど、どうやら実際は逆らしい。

 およそ年齢に似つかわしくない冷静さを持つノブくんの行動によって、私たちの命は救われたのだ。



 目の前でステータスについて話す彼らを見て若いと思った。私と違って戦闘技術がない彼らは、自分たちが前に立たなきゃいけない現実に不安を感じつつ、目に見えないその不思議な力を頼りにしていたから。


 結局、二人とも意地っ張りなのだろう。浅間くんは震えている自分を、ノブくんは自分の中にある行動力の源を、それが自らの弱点だと思って、他人に見せたがらない子供だったのだ。



 駅までの移動中、私は彼ら二人と一緒に皆を先導していた。護身の心得がある私と一緒にモンスターと戦う彼らの姿は、戦えなかった皆からはそれこそヒーローのように見えただろう。香澄ちゃんはその時点でノブくんしか眼中になかったみたいだけど。


 けれども、あのオーク戦でその違いは明確に現れる。自己犠牲精神の塊であるノブくんは進んで前に立ったし、浅間くんは逃げ腰になっていた。


 そう、あの戦いは世界改変と並んで、私たちに変化をもたらした出来事だった。

 あの戦いを経て、死を間近に感じて、あの場にいた皆はどう変化したのか。


 香澄ちゃんは自分の無力さを嘆いた。鶴見さんは年長者としての責任を再確認した。他の皆も、変わってしまった世界への順応を、ノブくんや浅間くんを軸に置くことでようやく始められるようになった。


 ノブくんはあまり変わっていないようだけど、それはおそらく彼が『適応者』だからだ。

 すでに世界改変の時点でこの世界に適応していたのだと私は勝手に思っている。それが元来のものなのか、瞬間的な変化の結果なのかは分からないけど。


 では、私に訪れた変化とは?

 この世界への適応とは、言ってしまえば暴力に慣れることで、私は適応する必要がなかった。


 まあ、変わった事には変わっているんだけど。はっきり言えばノブくんに惚れてしまった。


 戦闘の間、お互いに息を合わせるために心を通じあわせていた彼を、身を挺して私を守ってくれた彼を、頭を撫でられて恥ずかしそうに笑うくせに、泣いた私の頭を撫でてくれた彼を、私が好きになるのは当然の事だった。


 彼を支えたいと思ったし、彼に甘えたいとも思った。それはあの場にいた全員がそうだと勝手に思っていたけど、どうやらその限りでもないらしい。


「ねえ、慎之介くん。『ストーンバレット』が当たらないんだけど、どうすればいいかな?」


「由紀ちゃんの魔法は狙いが分かりやすいんだよ。もっとこう、相手の動きを制限してからだね……ちょっと近くないかな、由紀ちゃん」


「そんな事ないよ! これくらい普通、普通!」


 私も初めての外の探索。この中で唯一、昨日外に出た浅間くんに、由紀ちゃんが積極的に話しかけている。

 最初は不安ゆえの距離の詰め方なのかと思っていたけど、よく見ると由紀ちゃんの彼を見る目は……女性特有の、あの獲物を狙う目だ。


「由紀ちゃんは浅間くんの方がいいのかしら〜」


「由紀ちゃんだけじゃないよ。どれくらいの人数かは分からないけど、浅間先輩を好きな人って結構いるんじゃないかな」


 少々、いやだいぶ意外だった。体を張って皆を助けたノブくんより浅間くんの方がモテているのは、客観的に見てもどこかおかしいような気がする。ノブくんにベタ惚れの私が言うのもなんだけど。


「……私は見てないんだけどさ」


「ん〜?」


「浅間先輩、泣いちゃったんだって。先輩を背負って運び込んだ時、自分が情けないって」


 それを聞いてどこか納得する。楽観的なのは相変わらずだけど、戦闘に対して貪欲になっている事に違和感を覚えていたから。力に溺れるのではなく、より力を求める者として。

 浅間くんも変わろうとしていた。震える足を押さえつけて、ノブくんの隣に並ぼうと必死に頑張っていた。


 今も雨に降られている死体は、どれだけ数を目にしても慣れる事はない。昨日外に出た人はそれを直に触って運んだ結果、今日ダウンしてしまっている程なのだ。


 そんな中、浅間くんは今日も探索に加わっている。レベルが高いから大丈夫と一概に言えるほど甘い作業ではなかったはずだけど、少しでも皆の役に立とうと努力しているのだ。


「男の子が泣いてるの、案外、心に来るって由紀ちゃんが言ってた。寄り添ってあげたいんだって」


 それは私にも分かる感情だ。お父さんみたいに責任感が強いノブくんだけど、最初の弱々しい姿をふと思い出して、どうしようもなく甘やかしたくなるのと同じだろう。


「私も分かるんだ、浅間先輩の気持ち。このままじゃダメだ、変わらないとダメなんだって、あの戦いで気づかされたの」


「……」


「皆もそう。あの時逃げ出した私たちにとって、あや姉さんたちは遠すぎる存在だから。先輩を異性として見たくても、あや姉さんと今の自分を重ねちゃって……でもね」


 香澄ちゃんの言葉一つ一つに彼女の心境が表れていた。


 私が黙っているのも相まって彼女のモノローグのようになっているその会話は、内容も含めてガールズトークとしては全く似つかわしくないものだけど。

 彼女の背中を押すために、聞いてあげないとダメだと思った。彼女が羽化のための自信を必要としていたから。


「私、諦めない。先輩が頼りにしてくれるくらいに強くなってみせるから。あや姉さんに言うの、卑怯かもしれないけど……」


「大丈夫よ。香澄ちゃんを嫌いになるなんて事はないから〜」


「……うん」


 彼を独り占めしたい。それが本音なのは女として仕方がない事で、でもそれを口にする事はしない。

 私は恋する乙女……年齢的に無理があるかもしれないけど……以前に、お姉さんでなければならないのだから。

この作品を読んでくださってる皆さんには申し訳ないんですが、ただ今迷走しております。なんとなくの話の流れは決まってるんですが……キャラが定まっていないのが問題というか、大問題というか。

プロットから書き直すことも考えてまして……日間、週間ランキングに載ったのは嬉しいですし、ここまで読んでくれた皆さんには申し訳ないんですが、一話からタイトルなどは同じくして、別作品として投稿するかもしれません。その際、この作品が皆さんの目に止まるよう、作者をお気に入りユーザーに登録しておいてほしいです。

またしばらく間を空けますが、投稿は再開しますので首を長くしてお待ちください。

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