13 制服組は制服のまま
投稿再開します。一日一本を連日で。
一週間くらいで一章が終わるのでそこらへんまでです。
会議が終了した後、鶴見さん以外の俺たち4人は、探索希望者が集まっているという改札前に向かった。
昨日外に出た人たちが顔色を悪くしながらも無事に帰ってきたという事で、居残りだった高校生組と大学生組からも志願者が出てきたのだ。
正確には利根ちゃんという中学二年生の子も外に行きたがっていたのだが、まだ流石に目に毒なのでお留守番だ。
逆に社会人組は昨日の疲れが取れていないようで、鶴見さん含めて残ってもらうことになっている。レベルのおかげか浅間は割と元気だったため、今日も外担当だ。
改札前にいたのは高校生組から吾妻ちゃん、広瀬さん、中津さん、大学生組から横瀬さんと蒔田さんだった。
ガミちゃんと同い年の吾妻ちゃん、そして広瀬さんは、昨日俺とパーティを組んでいたためオーク戦の経験値が入っているが、それ以外の面々はまだレベルが低い。見張りの時にゴブリンを倒したという大学生2人でもレベル4だ。
全員合わせて9人……1パーティに収まらない人数である。
「どうしようか、あや姉」
「そうね〜。『土魔法』で攻撃ができる由紀ちゃんは私たちと外に出て、他の皆はノブくんとショッピングモールに行くのはどうかしら〜?」
「いいと思うぞ。『安全地帯』で俺が魔法連射すれば、怪我しないでレベル上げできるだろうし」
「パーティの空きがもったいないけど、1人置いていっちゃうのもね〜」
ちなみに由紀ちゃんは吾妻ちゃんの下の名前で、ノブくんは俺のことだ。
「……ねえ、ガミちゃん。大川と綾瀬さん、いつの間にあんな仲良くなったの?」
「……あや姉さんが意外とグイグイいくんですよ。先輩は先輩で、あや姉さんが距離を縮めてくるの満更じゃなさそうですし。はあ……」
「……頑張れ、ガミちゃん」
後ろで二人が小声で何かを話していたが、特に異論があるわけじゃなさそうだ。
内訳を皆に話してから、一緒に行動する4人とパーティを組む。
カッパを着込んで出口へ向かうあや姉たちと別れて、俺たちはショッピングモールへの直通通路へ向かった。歩きながら簡単な確認をしていく。
「横瀬さんと蒔田さんは、もう『身体強化』だけに振ってるんですよね?」
「そうそう。あたし達、大学でバレーボールやっててさ。身体動かすのは出来るから、魔法よりそっちの方が良いと思って」
「一緒に見張りしてた子が魔法がいいって言うから、バランス的にもいいかなあって」
横瀬 千夏さんと、蒔田 冬子さん。
同じ大学に通っているらしい2人は、その言葉どおり引き締まった体つきをしている。俺たちの中では最も運動が得意そうなスポーツ系女子大生だ。
運動ができる女の人といえば、あや姉もその内の1人であるが、触ると弾力があるみずみずしい肌や、どことは言わないが運動に邪魔な脂肪など、パッと見て運動が出来る体つきではない。
対してこの二人は、半袖から覗く腕の筋肉など、長い間運動してきたのが分かるのだ。武器として、どこかから拾ったらしい鉄パイプを持っている。
彼女たちなら、ある程度の戦闘は任せて大丈夫だろう。
続いて、残りの女子高生組に顔を向ける。
「えっと、広瀬さんは『回復魔法』に振ったんだよな?」
「そう。あなたとあや姉さんを治すのに必要だったから」
「ああ、昨日は本当に助かったよ。ありがとな……そんで中津さ……」
「コスモって呼びなさい。中津とかダサいから呼ばれたくないのよね」
「……コスモ、はどうだ? 『鍛冶魔法』がどんなスキルなのか想像もつかないって話だったが、どっちかに決めたのか?」
「ふん。『鍛冶』も暑苦しいから嫌だけど、『身体強化』なんてもっと御免だわ。私戦わないから、あんたがしっかり守りなさいよ」
「……へいへい」
中津 コスモは典型的な金髪ギャルだ。
駅にいる高校二年生は俺と浅間、広瀬さんに彼女の4人だけであり、その中でも唯一の陽キャである。
同じ学校の同じクラスだという広瀬さんが、同学年の俺と浅間の3人で食べた朝食の席で話していたところによると、カースト上位の彼女は女子には優しく姉御肌で接するが、男子の扱いは下僕なんだそうだ。
おしゃれには人一倍うるさいようで、昨日薬局のシャンプー数点しか持って帰らなかった浅間に向けてきた目がやばかったらしい。同じく朝食の席で浅間が震えながら話した内容である。
地上に4階、地下に1階あるショッピングモールで、服屋は3階に固まっているようだ。
昨日の探索では、地下のスーパーで食材の確保、2階の家電量販店で電子レンジや冷蔵庫の拝借が優先されて他には手が回らなかったらしい。どっかの誰かは書店にも立ち寄ったみたいだが。
衣食住全て揃った環境は一応整ってきているが、まだ完璧には程遠い。洗濯できるものはしてあるが、俺が着ている衣類は昨日と全く同じである。
ロッカールームにあった駅員さんのものらしい私服は、男物は俺が着るには小さく浅間が着るにはだいぶ大きい。女物はそもそも数が少なく、昨日あや姉が着ていたものしかなかった。
運び込んだ洗濯機フル稼働で清潔感こそ保っているが、おしゃれに気を使う女子高生がそんな状況を良しとするわけがない。
レベル上げが目的の皆とは違って、彼女は化粧品や洋服の確保のためにここに来ているのである。
立ち回りの相談をしながら歩いてると、連絡通路の入り口にたどり着いた。パイプ椅子に座っている見張りの2人組に挨拶して、屋根付きの階段を下りながら駅と外の境界をすり抜ける。
一階のフロアに入ると、目に見える範囲でも相当な数のゴブリン、そして昨日のよりひと回り小さいオークや未だ見た覚えのないモンスターが徘徊していた。
すでに『安全地帯』は発動済みで、数を減らすために『火魔法』を次々と放っていく。ちなみにMP表示こそないが、魔法を打ち続けると精神的に疲れが溜まってくるため注意が必要だ。
横瀬さん達の戦闘練習のために、ある程度の数を残しておく。
「よっ、ほっ、せい!」
「よ〜い〜しょっと!」
比較的身長が高く、体幹が安定している横瀬さんがタゲをもらって攻撃を受け続け、生じた隙に蒔田さんが強めの一撃をくわえていた。今のところ敵の武装は棍棒がいいところで、鉄パイプが折られることなく戦えている。
歳上の2人がこなす危なげない戦闘を、攻撃手段のない高校生2人は少し離れた所で俺と一緒に眺めていた。
「……人間って割と適応力あるのね。そういえば、あんたって殴り合いの喧嘩とかしたことあるの?」
「無いな。去年までは四六時中サッカーしてたし、部活辞めてからは家でゲーム三昧だったから、そんな事してる暇はなかった」
「ふーん。見た目オタクなのに動けるのはサッカーのおかげ、ね。あんたが足ばっか使うのもそのせいなの?」
「そうなんだよ。はあ……武器使った方がいいのは分かるんだが、癖みたいなもんで体が勝手に動いちまうんだ」
今のレベルならゴブリン程度は一撃で蹴り殺せるだろうが、警棒や鉄パイプに比べて明らかに攻撃力が低いのだ。その上、相手の攻撃を凌ぐ手段として受け流しができないのも難点である。
せめて革でできたトレーニングシューズや耐久性のある脛当てがあれば、破損や怪我を気にせず動き回れるのだが。
「『鍛冶魔法』で靴装備とか作れないのか?」
「たぶん、出来るんじゃないかしら。剣とかは金属素材が必要みたいだけど、革装備でいいんでしょう? あんたが倒した例のモンスターの素材を使えば全身装備が作れると思うわ。試してみないと分からないけど」
「……まああれだ。靴屋に良いのが無かったら、考えることにしよう」
その後、無傷で各フロアの敵を一掃しながら3階に上がった俺たちは、コスモの先導で服屋の制圧をしてまわった。
「これも、これも! 家電は襲わないのになんで服はぼろぼろなのよ!!」
「まあまあ、コスモちゃん。着れそうな服もあるんだからまだ良かったじゃん」
やはり1日経っていたのが痛かったのか、どの店の商品も表に出ていたものだけでなく店の奥にあった分まで荒らされた後だった。
無事そうな衣類や下着類を段ボールに詰め込む途中、黙々と作業を進める広瀬さんの横で騒ぐコスモを、横瀬さんが宥めようとしていた。
「横瀬さんは着れそうですけど! 私に合うサイズが一つもないんですよ!」
「あるじゃん。コレとか」
「パジャマじゃないですか! うう、このままだと昼間ずっと制服で過ごすことになっちゃう……」
「ミシンはある」
「作れと!? 生地の知識が多少あるだけの私が、人前で着れる服を作れるわけないでしょ、咲!」
ツッコミを入れるコスモの大声を聞きつけて4階から降りてきたモンスターを店先で処理しながら、俺との会話の時とはどこか違う彼女の話口調に、俺は苦笑いを浮かべたのだった。




