二度目の会合
プロローグの誤字、人称などを変えました。
今後はこんな感じでやっていきます。
また、関西の台風、北海道の地震。一刻も早い復興をお祈りいたします。
2018.9.7.
私は学校帰り、昨日通った裏路地の入り口に、女の子を見つけた。
黒地に海老色の帯の組み合わせの着物で、一般的に幼稚園年長か、小学校一年生くらいの子供がそこにぼうっと立っている。どことなく、おかっぱの髪と相まってお化け屋敷にでも出てきそうだ。
……………少し不気味に感じて後ずさったその時、小石にコツン、と当たってしまった。その音でか、パチリと目が合った。
女の子は花の咲いたような笑顔を浮かべて来い来い、と手招きをする。
先ほどまで怖いくらいの無表情なので人形めいていて怖かったけど、笑顔だと人間味があふれ、安心できる。
着物を着ているということは、どこかいいところのお嬢さんなのかもしれない。迷子になって、怖がっているのかもしれない。
そう思うと少女を助けてあげなくちゃ、と女の子の元へ向かう。だけど、女の子の元へと着いた、と思った時にはもう女の子は元からいなかったように消えていた。
不思議に思って辺りを見回すと…
夕焼けの空、夕日に照らされた建物。揺れる柳の木に夕日に煌めく川の水。
何故だか、悪寒がした。
帰らないと。帰らないと、自分は嫌な目に合うと勘が告げている。
一歩、二歩、後ずさり、いざUターンをして帰ろうとしたその時。
「どこへ行くのかい? お嬢さん。」
「ここに入ったが最後、大人しく我らの餌食になっておくれよ。」
「僕は腕を。」 「私はアシヲ。」
帰ろうと振り返ったその先で、それぞれ腕と足を無理やり引きちぎったように、断面からポタポタと血を流しながらニタニタ笑う、目は真っ赤に充血し、髪も服もボロボロの、バケモノと言っても過言じゃない、むしろゾンビという言葉が当てはまる人たちが近づいてきた。
「ヒィッ! 」
逃げ出して町の中を駆け巡る。元の町に帰れる別の出口があるはず、そう思って行けども出口は見つからない。あの時代劇のセットのような町並みから逃げ出せない!!
おまけにずっと、ずっと後ろから、這っている音と足音が聞こえてくる。
あんなに明るかった夕暮れの空は夜の帳を下ろしてきていて、オレンジと藍のコントラストが美しい。段々と提灯の明かりもつきはじめ、赤いような、オレンジのような光が道を照らし始める。でもそんな美しい光景も今や不気味にしか思えない。
段々と息も切れてきた。運動部じゃない私にとって、ずっと走り続けること無理だ。だけど、足を動かさないとあいつらに食われてしまう。殺されてしまう。その一心で逃げていた。
「っ!! 」
とうとう、転んでしまった。
…漫画やアニメならここでヒーローが来るはずだけれど、生憎と私にはそんなものいない。
ぎゅっ、と目を瞑ったその時だった。
ザシュッ、という音が聴こえて片目をうっすらと開ける。
翻る丈が腰までの黒いマントに黒い軍帽。まるで軍人のような出で立ち。
「………一般人に、手を出すな。」
ヒーロー、いたああああああ!?
と心の中で思わず叫んだけど振り返ってちらりとこちらを見た顔を見て顔が死んだ。
何を隠そう、助けてくれた人は昨日あの女将の店で会った、私の顔を『うるさい』呼ばわりした男だからだ。
彼もこちらを振り返って見て「チッ」と嫌そうに顔を歪めて言った。
『チッ』って!?チッって言った!?ほんと感じ悪いこの男!!
「……稀人に、一般人に手を出したとし、処罰対象と認める。
よって、百鬼自警団縁、第2部隊隊長補佐官、赤海棗が執行する! 」
そこからはあっという間に終わった。
なにせ、かの男は帯刀していたらしく、鞘から刀を抜くと一閃。あの化け物たちはぐしゃっと嫌な音を立てて崩れ落ちた。
「……おい。」
ふ、と顔を上げると先程助けてくれた、男の顔。
「…お前を家に帰すためにも、行く必要のある場所がある。行くぞ。」
そう言うと棗と名乗った男は私を立たせ、歩き出した。……今となっては不気味にしか思えない、提灯が照らす道を。