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遅くなりましたが、リハビリを兼ねて完成まで進めていきたいと思います。おつき合い頂けたら嬉しいです。

最初は雨の音だと思った。

次第に雷の音になったのかな、って思ったけど答えは違う。


ほんとに小さな音だったから、気づかなかった。



【…ガ…落 、チ 】

【 …カら…落ち 】


毎夜毎夜囁かれる。

何度も途切れては遠くで聞こえる音。

それが声だと気づく頃には遅かった。


すべてが遅かったのだ。










「最近リンの眠りが浅い。なにかに魘されて夜中に起きるのが気になる。俺が抱きしめればまたうとうとと眠るのが可愛い。愛しい」

「え、今なんの話だった?なんで最後惚気てんの!?俺もリンちゃんと一緒に眠りたいー!!」


長机の短辺、いわゆる誕生日席にクアラが座りその左右にリシルとミナラ、ナタシアとカルシアが座っていた。他にも村の先達であるクアラたちよりも年上者が複数席についていた。

ちなみにストッパー役のスマルは仔狼(こども)たちを預かっているので、クアラの秘書もとい部下のナタシアが進行役を務めていた。


「そんな話はどうでもいいですが魘されていたのは気がかりですね。先日スマルさんからも話がきていた通り、正式に頭領会議が5日後に開かれます。議題はもちろん“六眼(ロクガン)”についてです」


わかっていたけども、その言葉にざわりと場が凍りつく。


この森でその名は禁忌。

いつからいたのか、どこからきたのか、出現の秘密は明かされていない。


―――六ツ眼のバケモノ。

古からの口伝では元々はこの森の住人であったという。

ある時に天空から落ちてきた、【禁じられしモノ】を喰らいその呪いを魂に刻まれた。肉も骨もびっしりと内側に呪詛が埋められてどんな方法でも解呪できなかった。

そして今まで口にしていた食事をなにも取れなくなった。食べることが出来ず飢えだけが纏わり付く。

触れたものは腐り朽ちて、麻痺毒のように死なせない程度に苦しめる。一度口にした【禁じられしモノ】以外を身体も魂も受け付けてはくれなかった。そして狂いとてつもない飢餓感が絶えず付き纏い、強烈なまでの六ツの力を眼に宿す。―――文字通りの化け物。

歴史上、こちら側が勝てたことは一度もない。



「まだ発見こそはされていないが、森に不穏な空気があることは事実です。熊族はすでに警備を始めている。うちの方からもローテーションで見回りを始めます」

「うちにはまだ仔狼たちもいる。事が治るまでは警戒を怠るな!!」


ナタシアの冷静な言葉に皆が頷き、クアラの決定に皆が吠えた。

主要メンバーのみが残されたのは、リシルの報告を聞くためだった。

それは無論、リンのことだ。



「リンちゃんの身寄りだけど、やっぱり見つからない。それにあの愛らしい容姿であんなに幼さないのに、身の回りのことも頼らずにやってのけてしまうし礼儀作法も最初から出来ていた。……異常なことだよね」


(アシュフォード)の中、そして近辺にも範囲を広げているが一向に情報が見つからない。森でも一二を争う情報通なリシルでさえお手上げ状態だ。今は外に出ている仲間に連絡し依頼しているが、……難しいだろう。


「リンはいずれ俺の嫁にするからいいとして」

「異議あり!!リンちゃんにも選ぶ権利がある!」


今回ばかりはとばかりにリシルの異議に賛成の手があがるのを不服そうに睨むクアラ。


「嫁云々は別としてリンちゃんが魘されているのは気になるわね。まだあんなに小さいのに…、それにこれだけ探してなにも出てこないのはおかしい。そのうなされる原因が、リンちゃんの関係者を見つけられぬ理由かもしれないわ」


ミナラが眉根を寄せて考える。


「仔狼を捨てた、または殺すためという可能性もあるね。とにかく近隣のものでないことは確かだよ」

「どちらにせよリンが心配だ。こんな状況でさえなければもっと有益な情報が見つかるかもしれないが、今は目先の難から取り除いていくしかあるまい」


不安に駆られたか、クアラは真面目な顔をして決意を固めた。今は自分たちだけではなく、森全体の危機に瀕していた。

警戒を怠ってはならないと再度仲間に告げ、愛しい子を迎えに行くため会議を終わらせた。



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