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テロリトロリ

本編続けなきゃ(使命感)

書き貯めたいと思いつつも、まだまだ直で放出してしまう、師走の黄昏。外はもう真っ暗だけど。なお、本編の時間帯はデザートが示す通りです。

「もう1ラウンド回る?」

「では、アールグレーとクッキーをいただけますか?」

さっきの三皿の山は完全な平らになっていた。アールグレーか。確かに、アールグレーって雰囲気だよね。少なくともほうじ茶やプーアル茶ではないかんじ。そして、この子姿勢がいいな。白銀の刺した金髪を見せびらかしているよう。


アールグレーを持っていくとき、砂糖とミルクをどうするか少し迷って、バイザーで検索結果を見ようとすると、ネットワーク再接続のインジケータが上がってくる。

接続サーバは会議運営委員会のものから変わっていないことを考慮すると、背後の船から周辺の島か衛星かのネットワークが瞬断したのかとあたりをつける。

うーむ。それってブラウザでは検出するけど、インジケータは上がらないんじゃないかな。少し引っ掛かるけど、現状、問題があるようには思えない。


「この辺はさすが香港ですね。」

言い回しが上から目線だけど丁寧で、なんだか可愛い。僕は英語じゃ全くニュアンスがコントロールできないから、完璧に負けてる。

「お皿の鳥さんが可愛いよね。」

どうやら見つけていなかったらしく、皿を近くに持って来て、くるくる回しながら眉を寄せて頑張って探している。かかかかわ・・・ケフンケフン


「見つかりにくいと、幸せの青い鳥みたいだね。ファイト~。」

「私は、身近に居る大切なものの価値を見落とす程愚かではないと信じます。」

表情が消え、声が凍った。え?これは何かが絶対にヤバイ。そして、周囲の目が、人間ではない観測者が突然こちらに敵意の視線を集中させている気がする。おかしい。周りに全然こっち向いてる人がいないのに。むしろ、このフロアーになぜか人が少ないことが怪しいくらいなのに。あ、いや他のミーティングが始まったのか。僕らがダラダラしてるだけで。


「貴方の知性が特別に秀でていることは、僕も自信を持って支持しますよ。」

あ、これはダメな返答だと思う。次の言葉を続けないと。

「僕は愚かだったのでなにも気づかぬ間にたくさん失ってしまった。だから取り戻す方法をずっと探しています。でも、心の中で身近、って言える何かを見つけ出すのはとても難しいですね。」

あの子は一度目を伏せ、ちょっと悲しそうな目元のまま、ソファー正面に向かって顔を上げ、それから表情をゆっくり消しながら僕の方に向き直って爪先からトサカまで観察した。


「その割には肉体が油断と堕落に浸かっている様に見受けられますが。」

ぐぬぬ。凄く穏やかそうな顔と声で若干余った腹肉と全く人を殴れなさそうな腕を見比べながら言われてしまうと、鍛えていないことの情けなさと、精神的未熟さまで見抜かれたようで結構本格的に弱っちゃうな。

「t,ttttttテテテロ対策の主役は、筋肉ではなく、適正な管理社会と国際協力なので。そのとき、筋骨粒々の偉丈夫よりは友好的に振る舞いやすいのでっっっ。」

あの子は少しだけ口角を釣り上げながらもう一度目を伏せた。

そして、今度こちらを向き治った時は理性の執行者であろう天使の顔に戻ってこう続けた。それにしても視線を合わせてくるよね西洋人。ドキドキが止まらない。いや、性的な意味ではなく、どちらかというと不安なニュアンスで緊張するなぁ。


「どうすれば、本当にテロを防げると思いますか?」

ん。ニュアンスが取れない。この流れだと諦めのニュアンスが混じりそうなのに、こちらを向いた瞳から強い決意の光が溢れている。国際社会がどうあるべきとか、そんな決まり文句を許さない、そう言っているように見える。


「社会から手頃に入手できる複数人を一方的に殺傷できる銃火器の類いを取り除いて、腐敗していない警察組織を常備して治安を確保して、その上で…」

「その上で、凶行に及ぶ前に、武装、挙動を事前に感知する監視テクノロジーと法制度、社会意識を築きます。」

それは理想論に過ぎるでしょうとは言わせない決意を感じる。いや、これは決意よりも揺るぎない。確信なのかな?


僕の表情をどう解釈したのか、あの子は僕の耳に口を寄せて手で覆った。

「画像で見てみませんか。」

まさか、この会場で配備されているのか。つまり、ここがテロのリスクに晒されている?いや、それは飛躍と推理小説の読み過ぎかな。死神は、そんなにはいない。

「勿論、はい。真摯に。」

それは技術屋としても、ささやかな復讐心からも、僕がした当然の返事だった。


僕はもう、この子を見た目通りの童女とは思わなく成り始めている。でもなんか悔しいから、ケーキとお茶のお代わりを取ってきて、あの小さいけれど良く回るお口に差し入れてしまおう。そんなことを思ってお皿とポットを手に立ち上がろうとした矢先、別室で実験中のジャッキーたちから邪魔が入る。

「迷子が日本側で無限増殖して経路が落ちる。」

一瞬、社会風刺乙で流しそうになってしまった。僕だって日本迷子の一人かもしれない。

詳しく聞いてみた。ダメだ。これはまあ、仕方ない。僕も現場へ行くしかないだろう。


「続きは、いつでもいいよ。」

そんな声を聞いて振り返ったつもりだったけど、数分ギークトークに意識が行っているの間にあの子はお皿とコップを綺麗にすっからかんにしたまま残し、消え去っていたのだった。

本当に大切なものからは、目を離しちゃいけないのです。天使な子も、監視が大事だって言っています。

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