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7/22

UnendlichMusik

全く続くとは思っていなかったのですが、こういう展開になってしまいました。

この回はSFテイストの加減が難しくて、当初頭の中にあったときよりかなりマイルドになってしまいました。毎回、あまり大幅な改変は行わないつもりで、誤字脱字に留まる様考えながら書いてはいるのですが、この回はもうちょっと腕を磨いてから書き直すかもしれません。


今日のレッスンはノイズが多く、ここ87日で最も消費カロリーが大きかった。

今回の消費量、65分で1574kcalを越えたのは、対テロ市街地戦のシミュレーションを組んだときで、

その後は脳神経の鈍痛と自律神経に失調を来たして19日間に渡って生産性が低下した。


非効率な時間消費をするわけには行かない。

現状で確実に確保できる残り日数は1125。その数字だって、悲観値とはいえ最低値ではない。

最低値で行けば、今日ここで死ぬ可能性だって、センサ類の故障率から逆算すれば、0.001%程度存在する。


このため、効率的任務遂行のために平常時のカロリーコントロールの枠を超えた食物摂取のチケットを追加した。


そして午前分の<音楽>が止む。


お腹すいたな。特に、脳神経が昨日の中華料理に刺激されてから、空腹を過度に検知している。

センサーやデータから感じることはできなかったけれど、効率がいいだけの定型メニューから新たな発見が私を引き寄せる。


エッグタルト。ザッハトルテ。ニューヨークチーズケーキ。ショートケーキ。イチゴタルト。

生クリームが動物性かどうかは、<音楽>を切っている以上は、生体センサに頼るしかない。

でも、豪華客船なのに植物性脂肪だったらガス漏れから爆発炎上なんていう事故も、起きるかもしれない。

テロって、衝動的なものだけは対処が間に合わない可能性があるから怖いな。


神は試練を遣わしたみたい。

目の前に、確実に植物性油脂で形作られた異形、背徳的、好奇心の吸引者。紛うことなき巨悪の権化が湧き出ている。

どう見てもエネルギーの無駄で天辺から底辺まで形成されたチョコファウンテンが私を見下ろす。

しかし、彼の塔を切り裂くエクスカリバーは私を選んでくれない。

このエリアのサービス品質に対して、切なる向上の努力を呼びかけなくてはいけない。

アジア圏のホスピタリティは一段劣っているという事前情報はあったけれど、食べ物を、

見える状態で生殺しというのは原始的かつ直接的で、人のストレスを呼び込むにはとても効率がいい。


不本意だけれど、身体能力を100%駆使することでかろうじて収穫可能だと推測した果実に対して、

5回目の接近を試みたところ、背後で4分間停止していた成人男性が脇から迅速な収穫を遂行した。

しかも不愉快なことにこちらを観察している。

ヒューマンデバイスの性能差を誇示して見下すとはやはり未開の原始人に分類せざるを得ない。

ラボの類人猿たちですら、調教を経た今では自主的に配膳行動を行うというのに。

人類を救う道のりは、まだ先が長い。


人類の宇宙開発はやはりまだ複雑なミッションを相互補助のもとに完遂するステージにはないのね。


意図が読み取りにくい表情で収穫を行った人物は、ゆっくりと、果実を取り分けた皿を私に献上した。

入力情報を見直す必要があった。

彼は眼球の表面が濁っており、軽度の結膜炎を発症している。

虹彩は明るいブラウンで、角度によってはかなり明るい。空腹を優しく包み込むチョコレートの色をしている。


両手が塞がっていて受け取ることが出来ないと言おうとして、

先ほどこの人物がまともにドイツ語を話せていなかったことを放置していたことを思い出す。

ネームプレートを確認すると、日本から来ていることが分かった。


妥当な言語は英語か。せっかくの休息にシステムの補助は受けたくないな。

そう思って視線を向けていると、ゆっくり彼は私を促し、広い机とソファのもとへと案内した。


どうもこの人物は、無能であるが故に代替策を検討する能力はあるらしかった。

だが、礼儀作法には疎いのか、退出の作法も守らず、私が腰かけた席から視線を離していく。


追いかけてまで投げかけるほどの感謝の言葉は可能な限りチョコフォンデュをベストに近い状態で食べることに比べて、

見送ってもよかった。謝辞を求めているような所作ではなかった気がするから、習慣的にそのように行っているのだろう。

しかし、国際政治の舞台で私が取る行動としてそれは相応しくない。

だから、不本意だけどネットワーク経由で彼の言葉を手繰り寄せて、<音楽>が辺りを包み込んだ直後、肉体へのコネクションに少し違和感が残ったまま、彼の国の言葉で労いの言葉をかけた。



「ありがとう」



伏線を回収しつつ置きつつ、けどくどくない程度に説明を止めようとしたままで理性的な言葉遣いで書こうとしたら、無機質というより没個性的になってしまった気がします。まあ、登場人物の個性なんていうのは、会話させておけば自然に出てくるはずなので、きっと彼らがこれからなんとかするでしょう。

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12/10 誤字脱字で2か所修正 ~を~をとなっていたところ。

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