思考加速。死の向こう。あるべきところ
珍しく本編が2話続きます。書いててちょっと嬉しい。
思考が加速する。立ち込める血の匂い。死の匂い。
いや違う、血は流れていない。
集中と興奮が交錯して、脳神経が血流に圧迫されて悲鳴を上げる。
洞察と閃きを妨げる怠惰と諦念が帳を下ろそうとする。
でも、そんなこと、初めてなんかじゃない。
何度も乗り越えて来たことだ。
僕はツイテル。これは全く不意打ちじゃない。何度も練習したシチュエーションだ。
FPSの中東で。
ゾンビ狩りの西部で。
雪に埋もれたフィンランドで。
刈り取るシミュレーションは十分に積んだはずだ。
初めてサバゲーに挑んだ日。
何が強さに繋がるか冷静になれないまま足掻いていた頃。
職場でいつまでも帰れず仕事とひたすら格闘した日々。
困難なんて、いつだってそうだ。
喘息で呼吸が止まった時。ヤクザに正面からぶつかったとき。交通事故寸前で踏みとどまった時。
家族が旅立ち、友が旅立ち、見知らぬ誰かが旅立ったとき。
そこには感動も絶望もなかった。彼らはただ去った。まだ手にするべきものが彼らにも私にもあったというのに。
だから、まだ負けてやるわけには行かない。
思い出せ。考えろ。戦え。負けるな。
冷静になれ。研ぎ澄ませ。貫くんだ。
一方的に狩られ続けた最初のころのサバゲー。
転換点はなんだった?
そう、待つことだ。
自然と一体になって待つことだった。
枯れ木や繁みと一体になって、テリトリーを侵すものを狩るんだ。
相手の来るべきところへ構えて、枝が風でさやぐようにわずかな角度だけ銃口を傾ける。それだけでいい。一人はきっと撃てる。
次は相手の道と視線を考えるんだ。人は同時に全方位を見ることはできない。索敵で視線を順番に向ける、その少しだけ後の方で待ち構えるんだ。正面から視線を右に切りたい地形なら、少し左。
人間の目がとらえにくい繁みの中。アイキャッチで目が留まるなら。それよりも旋回した先の方。
室内戦はどうだった?
室内なんて必中だ。
20m以内なら、外したってどこかのパーツに当たる。徹底して身を晒すことを避けるんだ。
的に当てるのに必要なのは目と手と銃だけだ。当てるのに必要なのは0.5秒だけだ。必要な角度は5度だけだ。
人間の目はどこだ?高さは1.5-2m付近だ。走っているときはその方向の円形が視界だ。
相手の視線を回避する。旋回を回り込む。行き過ぎた背中を切り裂くんだ。
思い出せ。狩るときはどうだった?一方的に狩ったときはどうだった?
必ず先に見つけていた。それも余裕をもって確実に、相手を看取るように、100%の確信を持って撃っていた。
そう。奴らは地に足を付けている。足音を立ててくる。
そうだ。所詮ナマモノなんだ。
ナマモノなら越えられる。音を消せ。影を消せ。視線を越え、思考を越えれば、相手はこちらを見ることはできない。
思い出した。私は軟弱な先進国の人質予備軍じゃない。
決して、平和のぬるま湯に使ってるだけの豚じゃない。
負け犬だって、飼い犬だって。
自分の運命を暴力なすがままになんてされない。
腐ったって最後にちっぽけな牙をむく狼だ。
今ならわかる。某有名戦闘漫画やスポーツ漫画の多い少年誌で戦闘中の思考加速から回想シーンに至る理由が。・・・話を進めるよりずっと楽だし、前後関係ぶっちぎってもいいんだもんw
時事問題と回想は連載継続の最強の助さん角さんですね。
※誤字修正:冷静に慣れない→冷静になれない